小学校とは異なり、中学校では通塾する生徒が急増しています。小学校の時に通塾している児童はクラスに数名程度でしたが、中学校では3割前後(受験学年だともっと多い)と聞いています(いずれも個人懇談の席で)。子供と同じ小学校から中学校へ進学した子供でも、中学校入学と同時に通塾を始めたという話を幾度となく耳にしました。
当たり前の話かもしれませんが、どうして中学校で通塾率が急上昇するのでしょうか。中学生の子供の成績表や学校での様子を見聞きしていると、一般的な理由と共に「大阪市特有の事情」が浮かび上がってきました。
真っ先に指摘すべきなのは、中学校での学習内容の難しさです。小学校と中学校とのギャップに加え、親世代(40代~50代)が中学生だった頃と比べても、格段に難しくなっています。典型的なのは英語です。語彙数が倍増しています。
小学校の学習内容は多くの児童が授業のみで理解できていました。躓いた箇所があっても、先生が個別に丁寧に指導してフォローしていました。
が、中学校では授業のみでは難しいです。自宅での学習を前提とした形で授業が進みます。先生は部活動や校内所掌等で忙しく、個別に丁寧にフォローできる環境ではありません。
通塾している生徒の学力は区々です。学力別に通塾理由を検討します。
学力下位・中下位層は授業に付いていくのが難しく、ボリュームも厚いのが実情です。定期テストで50点未満しか取れていない生徒が約半数に及んでいます。
授業はこの層を意識して行っているそうですが、テストで全然点が取れてないと先生が嘆いていました。個人懇談の席で先生が「せめて基本問題はもう少し出来て欲しい」と呟いていました。
多くは家庭で自学自習するのが難しく、授業のフォローアップの為に通塾しているとうかがえます。
次は学力中上位層です。平均点以上は取れるが、80点台にはなかなか手が届かない層です。授業は概ね理解できているが、「理解できたつもりになっている」とも言えます。少し捻ると途端に分からなくなるそうです。
反対に「授業が簡単で不安だ」という声も耳にします。お世話になっている中学校での授業は学習がやや不得手な中下位層をターゲットとしている為、一定の理解度がある生徒にとってはやや物足りなくなります。
特に中学生は数年後に高校受験が控えています。入試問題と授業水準との差を不安視する意見もあります。決して十分ではない授業を補う為に通塾するケースが多そうです。
最後は上位層です。授業はほぼ完全に理解し、定期テストでは概ね90点以上を得点している層です。通塾目的は明確です。入試対策です。
いわゆる「進学校」「文理学科設置校」と呼ばれる大阪府立公立高校では、発展的内容を取り扱った「C問題」が出題されます。センター試験や共通テストを彷彿とされる問題文や水準です。これに解答するのは親でも難しいです(特に時間が足らない)。
令和4年度一般入学者選抜 学力検査問題及び採点資料等
https://www.pref.osaka.lg.jp/kotogakko/gakuji-g3/r04_ippan_mondai.html
中学校でこうした問題に対する対策を行うのは難しいそうです。受験者は決して多くなく、多くの生徒が受験するB問題(標準的な内容)への対策を重視したい意向が伝わってきました。中には「通塾して下さい」と弁解した先生もいます。
家庭での対策も困難です。中学生が自学自主で理解するのは難しいです。過去にこうした問題を解答するトレーニングを受けていない限り、親も教えられません。
もしも(高学力層にとって)入試問題が簡単かつ内申点を重視する入試制度ならば(例:過去の大阪府)、週4日~5日も通塾する必要性は乏しくなります。
各学力層に対して共通しているのは、「多種多様な学力層に対して丁寧に指導できるだけのマンパワーが中学校にない」という事実です。
中学校のマンパワー不足は大半の先生が口にしています。授業・行事・部活動・不登校対策・生徒指導・その他校内所掌等、小学校とは比べものにならない程の忙しさです。
大阪府の学校外教育費の高さは、公立学校の苦しさの裏返しです。そして、家庭の資力による教育格差の拡大を引き起こしています。
ここ数年、大阪府立高校は様々な改革(善悪は別として)を行っています。しかし、そうした変化に中学校が追いついていないのではないかと感じています。中学受験が盛んになるのも道理です。