未だ子供が未就学児でも、あっという間に小学生・中学生となります。その先には高校入試が控えています。
2月10日に大阪・京都・兵庫にある私立高校で入学試験が一斉に行われました。
大阪、京都、兵庫3府県の私立高校で10日、2024年度入試が一斉に始まり、計172校で約11万8000人が試験に臨んだ。大阪では私立を第1志望とする「専願」の割合が過去20年で初めて3割を超え、私学志向が強まっている。24年度から所得制限が撤廃される大阪府の高校授業料無償化制度が要因の一つとみられる。
近畿の私学団体などが7日までに公表した集計では、平均倍率は大阪2・65倍、京都3・10倍、兵庫3・58倍、奈良4・03倍、滋賀3・70倍でいずれも前年から微減した(和歌山は集計なし)。
大阪府では、無償化制度に参加する全日制私立高94校中、専願を実施する91校の専願割合が前年を約3ポイント上回る31・64%と03年度以降最も高くなった。
常翔学園高(大阪市)は定員480人に対し、前年度比80人増の1214人が出願。この日は午前8時50分から国語の試験が始まり、受験生が緊張した面持ちで臨んでいた。
同高の専願は63人増えて434人だった。入試部は「入試説明会の参加者は例年より2割近く多かった」とする。
大阪や兵庫などで学習塾「第一ゼミナール」を展開するウィザス(大阪市)の高沢隆一・教育情報室長は「少子化で受験生が減る一方、募集人員はあまり変わらず、倍率は減少傾向」と分析。専願割合が増えている理由について「無償化で家計負担が抑えられ、公立との学費の差が縮まっている。学習支援が手厚く、設備が充実する私学の評価は高く、手堅く進学先を決めたいと考える生徒が増えているのではないか」と説明する。
https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/news/20240210-OYO1T50025/
首都圏等とは異なり、上記3府県では原則として同一日程で入試が行われます。その為、受験できるのは原則として「1校のみ」です(例外あり)。その為か、大阪では入試前に事実上の「合格」を決定している高校が大半を占めているそうです(いわゆる事前相談)。
大阪府では2026年度から高等学校授業料完全無償化が全面実施されます。それを受けてか、2024年度入試で私立高校への入学を希望する中学3年生(いわゆる専願)は過去最高の31.64%となりました。
反対に落ち込んだのが府立高校への入学希望者です。まだ最終的な志願者は確定していませんが、2月1日に行われた進路希望調査の結果が公表されています。
<令和6年2月10日>令和6年度入学者選抜 進路希望調査(2月)について
https://www.pref.osaka.lg.jp/kotogakko/gakuji-g3/r06_kokosenbatsu.html
昨年の同調査と比較すると、大半の府立高校で入学希望者が減少している傾向が明確に現れています。旧第1学区の倍率は2023年度の1.23倍から2024年度は1.11倍へ、旧第2学区は1.13倍から1.00倍、旧第3学区は1.11倍から1.01倍、そして旧第4学区は1.16倍から1.04倍へと急落しています。
少子化に加え、私立高校の専願受験に流れたと捉えるのが自然です。
特に大きな影響を受けたと考えられるのは、普通科中位~上位校です。大半はB問題出題校です。気になった学校をまとめてピックアップしました。
旧学区 | 学校名 | 男子合格者平均偏差値(五ツ木模試より) | 2023年第2回調査倍率 | 2024年第2回調査倍率 | 差 |
旧第1学区 | 池田 | 60 | 1.19 | 1.05 | -0.14 |
春日丘 | 64 | 2.31 | 1.87 | -0.44 | |
桜 塚 | 55 | 1.34 | 1.11 | -0.23 | |
吹田東 | 50 | 1.43 | 1.10 | -0.32 | |
北千里 | 57 | 1.12 | 0.97 | -0.15 | |
山 田 | 54 | 1.79 | 1.68 | -0.12 | |
高槻北 | 51 | 1.16 | 0.91 | -0.24 | |
旧第2学区 | 東 | 58 | 1.77 | 1.60 | -0.17 |
港 | 45 | 1.45 | 1.18 | -0.27 | |
寝屋川 | 60 | 1.38 | 0.97 | -0.42 | |
香里丘 | 48 | 1.06 | 0.82 | -0.24 | |
旧第3学区 | 夕陽丘 | 56 | 1.40 | 1.29 | -0.12 |
阿倍野 | 50 | 1.33 | 1.00 | -0.32 | |
阪 南 | 48 | 1.57 | 1.02 | -0.55 | |
布 施 | 54 | 1.30 | 1.04 | -0.26 | |
山 本 | 49 | 1.47 | 1.19 | -0.28 | |
八 尾 | 59 | 1.39 | 1.06 | -0.33 | |
河 南 | 50 | 1.02 | 0.85 | -0.17 | |
富田林 | 59 | 1.23 | 0.96 | -0.27 | |
旧第4学区 | 登美丘 | 53 | 1.41 | 1.01 | -0.40 |
和泉 | 58 | 1.41 | 1.14 | -0.27 | |
久米田 | 51 | 1.60 | 1.33 | -0.27 |
ざっとした感想となりますが、(文理学科等の専門学科を除いた)地域1-3番手クラスの普通科高校の倍率が大幅に低下しています。中には1倍を割っている学校も目立ちます。
影響が大きいと感じたのは池田高校、桜塚高校、北千里高校、寝屋川高校、布施高校、八尾高校、富田林高校、和泉高校です。主として地域の公立中学校の成績上位層が進学する高校です。
特に「これより上なら文理学科」という存在たる、寝屋川高校・八尾高校・和泉高校(いずれも偏差値60弱)の倍率急落は深刻だと感じました。倍率が1倍前後まで下がってしまうと、入試が機能しなくなります。
この学力層ならば選びうる私立高校は数多くあります。設備等が優れた私立高校を専願した中学生が例年より大きく増加したと推測できます。
これだけ倍率が急落すると、合格するのに必要な学力水準が読みづらくなります。各中学校は中3時に受験する実力テストや内申点を基に、「この成績ならば○○高校は合格できそうだ/難しい」といった判断を行っています。昨年までの基準が揺らぎます。
なお、文理学科の希望者は昨年から僅かに減少した程度に留まっています。私立高校の授業料が完全無償化されても、公立中学校の最優秀層が公立最上位校を希望する傾向に(現時点では)変化はありません。大阪府内に学力面で見合う私立高校が殆ど無いのも一因でしょう。
大阪の高校入試は学区廃止以来の激しい変化を迎えています。親としては情報収集が大切ですね。
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