2022年4月に広島市立小河内保育園から園児(当時5歳)から抜け出し、近隣を流れる太田川にて溺死した痛ましい事件が起きました。
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同事故につき、両親が同園を運営する広島市に対して約8800万円の損害賠償を求める訴えを起こしました。
保育園で男児(当時5歳)が行方不明に 川で見つかり死亡を確認 両親は保育園が注意義務を怠ったとして広島市に約8800万円の損害賠償を求めて提訴
https://news.yahoo.co.jp/articles/a72ab202850367b4efdf9657343712347aa0f62e
上記記事によると、両親は広島市と交渉を行っていましたが、同市は両親の請求等を拒否したそうです。
当時の報道及び検証報告書等によると、園児は生け垣から園外へ抜け出した可能性が強いと指摘されています。
原則として保育園内や園の管理下において園児が死亡する事故が発生した場合、日本スポーツ振興センター(JSC)から災害共済給付が行われます。死亡見舞金は3000万円とされています。
しかし、たとえば交通事故で子供が死亡した場合、慰謝料や逸失利益としてより多くの金額が裁判等で認められるのが一般的です(具体的な金額は年齢等によって異なる)。
事故後に遺族は広島市と賠償額等について交渉を行いましたが決裂し、裁判の場で争う事になりました。
報道等を見る限り、事故に関する事実関係については争いが見つかりません。園の管理下において、園や広島市の過失において発生した事故です。園児が植え込みを覗き込む事があった、園外と隔てるフェンスの高さが不十分だった、施設安全点検では園児の視点からの項目を設定していなかった、園児が外に出られる箇所が複数あった等とされており、事故の予見及び対策は可能でした。
報告書を読んだ所、事故当時に報じられた記憶がない箇所に気づきました。園児は療育手帳を取得していました。一般的な児童とは異なる特性があり、十分な見守りが必要でした。
あくまで推測となりますが、こうした特性が遺族と広島市との交渉に影響したのかもしれません。
2018年2月に大阪府立生野聴覚支援学校に通っていた小学5年生が交通事故に遭い、死亡する事故が起きました。
訴訟で争点の一つとなったのは「障害者の逸失利益」でした。原告は障害の有無を逸失利益に反映させない様に求めた一方、被告は聴覚障害者の平均賃金で算出すべきと主張しました。一審大阪地裁は「逸失利益を全労働者の85%」と判断し、被告に約3700万円の支払を命じました。原告は「差別を認める判決」とし、大阪高裁に控訴しました(現在も継続中)。
広島市の保育園での事故と重なる部分があります。2つの裁判がどの様な経過を辿るか、注意深く見ていきます。