ここ10年ほどの間に、小学生や中学生の不登校率が急上昇しています。特に大阪市の中学生は「概ね11人に1人が不登校」という、俄に信じがたい水準に達しています。
不登校率(100人あたり) | ||||
年度 | 小学校 | 中学校 | ||
全国 | 大阪市 | 全国 | 大阪市 | |
R5 | ||||
R4 | 1.65 | 1.70 | 5.98 | 8.62 |
R3 | 1.30 | 1.47 | 5.00 | 7.59 |
R2 | 1.00 | 1.19 | 4.09 | 6.48 |
R1 | 0.83 | 0.90 | 3.94 | 6.11 |
H30 | 0.70 | 0.89 | 3.65 | 5.28 |
H29 | 0.54 | 0.72 | 3.25 | 5.14 |
H28 | 0.48 | 0.66 | 3.01 | 4.93 |
H27 | 0.42 | 0.54 | 2.83 | 4.55 |
(第15回こどもの貧困対策推進本部会議資料などより作成)
小学生の不登校率は10年で概ね3-4倍に、中学生は倍増しています。年々上昇傾向にあったところ、コロナ禍によって不登校率が急に跳ね上がりました。
特に注目して欲しいのは、小学校と中学校との違いです。小学生の不登校率は1%台後半ですが、中学生になると約6%~9%へと急上昇しています。小学校には登校できていたが、中学校には登校できない生徒が非常に多い事を物語っています。
当事者以外の保護者の視点では、不登校問題は全く見えません。いじめや校内暴力等が起こると、子供の話や校内の荒れ具合(壊れた物が放置されている等)から保護者は気づけます。
しかし、生徒が見えなくなってしまう不登校については子供は無関心、保護者はより姿が見えません。
子供から学校の様子を聞いたところ、「毎日3-4人は休んでいる。全く学校に来ていない。稀に保健室に来ているみたい。給食が余る。」と話していました。
各校の現状はは「運営に関する計画・自己評価」に記載
大阪市内の各小中学校の不登校率は、各学校のウェブサイトに掲載されている「運営に関する計画・自己評価」に記載されている事が多いです。
たとえば花乃井中学校(西区)の「運営に関する計画・自己評価」には、「令和3年度8.7%、令和4年度12.0%、令和5年度15.2%」と記載されています。大阪市内の平均値を大幅に上回っていると読み取れます。
https://swa.city-osaka.ed.jp/weblog/files/j562151/doc/247193/5479047.pdf
不登校には様々な理由や背景事情があります。ただ、本人は十分な学習機会を得られず、学校や先生が対応する負担は重く、保護者は思い悩みます。
通信制高校への進学者が激増
進路も制限されます。多くは通信制高校に進学していると聞きます。令和4年度大阪府公立中学校及び義務教育学校卒業者の進路状況(令和 5 年3月卒業者)によると、同年度末に大阪府内の公立中学校を卒業した67,171人の内、4,382人(約6.5%)が通信制高校へ進学しました。受け皿の多くを占めていると考えられます。また、フリースクールという選択肢もあるでしょう。
親世代の頃は全く話を聞かなかった通信制高校ですが、最近は存在感を増しています(近畿の通信制高校一覧)。毎日の様に学校経由で通信制高校の説明会やパンフレット等が配布されています。見た事も聞いた事もない学校が多いです。
「小1ギャップ」より深刻な「中1ギャップ」
一般的には保育園・幼稚園と小学校との違いに起因する「小1ギャップ」が問題視されていますが、これによって苦しむのは主に保護者です。
しかし、中学生と小学生の不登校率の違いを見る限り、小中学校の違いに順応できない生徒が非常に多いのが実情です。生徒の将来に直結する「中1ギャップ」こそが問題視されるべきです。
大阪市では小中一貫校や不登校特例校(心和中学校)を設置して取り組んでいますが、それだけに留まっている印象を受けます。
子供が小中学校の双方に登校している保護者の観点からは「小学校と中学校は別世界」に見えます。「先生が児童に寄り添っている小学校(幼稚園や保育所等も含む)と、先生の指導に生徒が着いていく中学校」という違いを感じます。
子供が乗り越えるべきハードルは、幼稚園・保育園・こども園→小学校より小学校→中学校の方が遙かに高くて険しいと感じます。どれだけ知られているでしょうか。
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