概略化した記事とは言え、これほど簡単に「中学受験」を決めてしまって良いものなのでしょうか。

子供の教育方針について、夫婦の意見が合いません
https://news.yahoo.co.jp/articles/8c5c72043ceb3bd3ff0a094e73c160a8429a8957

 今回のテーマは、「夫婦間の意見の不一致」。相談者は、通信系企業で働くみどりさん。9歳(小学3年生)と5歳(保育園)の息子を育てています。

子供の教育方針について、夫と意見が分かれてしまいました。みどりさんは、長男を私立中学に進学させたいと考えています。みどりさんが育った家庭は決して裕福ではなかったけれど、両親は教育に対してしっかりお金をかけてくれました。東京で生まれ育ち、小学4年生から塾に通って受験をし、エスカレーター式の私立中学に進学。受験勉強は大変だったけれど、入学後は非常に恵まれた環境で勉強に打ち込み、楽しい学校生活を送ることができたと言います。

自身の経験を踏まえ、自分の子供にもできる限り良い環境で勉強してほしいとみどりさんは考えています。今住んでいる学区の公立中学は、いじめや学級崩壊のうわさも耳に入ってきます。優しく内気な長男がいじめられないか、みどりさんは心配なのです。息子に合った校風の私立中学に通わせたい。そのためには、そろそろ受験対策の学習塾を検討する必要があると思っています。

しかし、そのことを夫に相談すると、「公立の中学でいいじゃないか」と取り合ってくれません。

「小学生から塾に行って勉強させるなんてかわいそうだ。それに、塾に通わせるお金があるなら、みんなで家族旅行でもしたほうがいいんじゃない?」

そんな夫をみどりさんは「のんきだ」と思わずにいられません。「地方出身の夫は、小さい頃から頭脳明晰(めいせき)で、苦労せずとも勉強ができ、地元の公立中学・高校を卒業、国立大学にストレートで入学しました。周囲に私立中学に通う友人がほとんどいなかったこともあり、子供を私立に通わせることがイメージできないのです」とみどりさんは言います。(以下省略)

我が家は共に地方の公立高校出身だったので、中学受験は当初から消極的でした。そもそも私立中学校の良さが肌感覚で分からないのです。そうこうしている間に月日が過ぎ、コロナ禍でそれどころではなくなってしまいました。

実体験を踏まえ、最も引っかかったのはこの部分です。

今住んでいる学区の公立中学は、いじめや学級崩壊のうわさも耳に入ってきます。優しく内気な長男がいじめられないか、みどりさんは心配なのです。

いじめや学級崩壊のうわさに基づいて中学受験を決断するのは余りに拙速です。噂の是非が気になるのでしたら、まずは地元の中学校を見学するのをお勧めします。

学校によって違いがあるかもしれませんが、基本的に中学校の見学は「ウェルカム」です。コロナが2類だった当時は難しかったのですが、現在は支障はありません(もしもコロナを理由に断られたら、著しく不適切な対応です)。

安全対策として事前の連絡や申込みは必須ですが、全面的に断られる事はないでしょう。ただ、小学校と比べて中学校は忙しい(様々な予定が詰め込まれている)ので、見学する日時は学校と要調整です。

我が家がお世話になっている中学校も様々な噂がありました。しかし実際に進学すると、そうした噂の大半は「ただの噂話」だと判明しました(中には本当の話もありましたが)。

大阪市立小中学校の事例となりますが、各校は「運営に関する計画・自己評価」にていじめの認知件数を公表しています。この資料には様々な記述があり、学校の大凡の様子が掴めます。

例えばとある大阪市立中学校は「令和4年度後期の校内調査において、認知したいじめは1件あった。すぐに指導し、現在も継続指導中である」と記載しています。

http://swa.city-osaka.ed.jp/weblog/files/j552120/doc/235483/4852889.pdf

東京の公立中学校の実情については、東京高校受験主義(ツイッター)が詳しいです。大阪市との余りの落差に気落ちしています。

余談となりますが、公立中学校は小学生やその保護者に対して「アピール・広報」を行う感覚が全くないのが衝撃的でした。黙っていても地域の新入生が進学し、中学校の方針に基づいて一方的に教育や指導等を行えば良いという意識が露骨に伝わってきました。

が、こうした中学校は既に避けられています。私立中や国立中に進学したり、大阪市等の一部自治体では学区外の公立中学校にも進学できます。

この意識のギャップは簡単には埋まらないと感じています。特に学校管理職や年配の先生(概ね40代以上)は「お上意識」を強く感じます。

これでも最近は大阪市政が変化し、以前より住民や保護者の声を聞く様になったと聞きます。だとしたら、それ以前は保護者の声はかき消されていたのでしょう。

また、資金計画についても触れられていません。中学受験では中学校3年間の学費や塾代(3年で300万円以上とも聞きます)に加え、学校生活に要する諸費や私立高校3年間の学費等も必要となります(私立中学→公立高校はレアケース)。更に大学附属中学であれば、そのまま私立大学へ進学した際の学費も準備しなければなりません。

しかもこちらの家庭では5歳の保育園児もいます。上の子は中学受験させたが、下の子はさせないという選択肢は取り得ません。中学受験やそれに関連する費用は2人分も必要となります。相当の出費となります。裕福な家庭でなければ出費に耐えられません。

家庭生活で様々な意見が一致しないのはよくある話です。ただ、中学受験はその後の長きに渡って子供本人や家計に大きな影響を及ぼします。子供本人の意向を確認するのも去る事ながら、それに先だって適切な情報収集に努めるのが大切です。