塾代助成事業のイメージ図)

大阪市が独自に実施している塾代助成事業の対象が、2023年4月から小5~小6にも拡大される見通しです。

大阪市の松井一郎市長は3日の市議会で、市内に住む中学生の習い事や塾代を月額1万円助成する制度の対象を、小学5、6年まで拡大する意向を表明した。令和5年度からの実施を目指す。「子供たちは小学生のときから夢の実現へ習い事をしたり、学習塾を利用したりしている」と述べた。

https://www.sankei.com/article/20220303-Z5VBVIULIZKPDMZN7EOS7H6MZ4/

塾代助成事業とは教育バウチャーの一種です。こうした事業を政令市程度の規模で実施している自治体は他に無いでしょう。対象となる事業者は3000件以上です。

塾代助成事業とは

子育て世帯の経済的負担を軽減するとともに、こどもたちの学力や学習意欲、個性や才能を伸ばす機会を提供するため、一定の所得要件を設け、市内在住中学生の約5割を対象として学習塾や家庭教師、文化・スポーツ教室など(オンライン学習塾などを含みます)の学校外教育にかかる費用を月額1万円を上限に助成する事業です。

https://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/page/0000212697.html

子育て世帯に対し、子供の教育に要する費用を助成するのは大きな意義があります。

習い事を通じて子供の居場所を広げる効果を促す意義は理解できます。松井市長の「体力や学力が追い付かず、『中1ギャップ』で学校がいやになるというケースも見受けられる中、そうしたリスクを抑えていく。」という発言にも通じます。学校がイヤになっても他の場所があれば、そこから再起する事ができます。

小中学生に幅広い経験を促す効果もあります。こうした学校外教育費の大小は世帯所得と強い相関関係を有します。助成対象を学校外教育費を掛けにくい中低所得世帯に絞ったのはその為でしょう。

仮に現金を支給したら、恐らくは生活費に消えてしまいます。

所得制限はやや厳しいです。扶養親族が1人(世帯人数3人)の場合の世帯所得制限限度額は360万円です。

https://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/page/0000212697.html

これは世帯人数5人・借家という条件における就学援助の世帯所得基準額たる358万円とほぼ同一です。対象となるのは就学援助に準ずる家庭です。

https://www.city.osaka.lg.jp/kyoiku/cmsfiles/contents/0000495/495254/R3oshiraseippan.pdf

大阪市は「市内在住中学生の約5割を対象」としていますが、実際の対象者はより少ないのではと感じています。本当に5割もいたら、大阪市の子育て世帯の経済状況は極めて深刻だと示しています。

課題もあります。

一つは優先順位です。子供が多くの時間を過ごすのは学校です。教育分野の予算を付けるのであれば、学校関係の予算を充実させて欲しいです。既に十分な予算が計上されているならまだしも、学校関係の予算は決して十分ではないと聞きます。古い備品、建て替えが進まない校舎、不足している教員等、数えだしたらキリがありません。

政策効果の検証が行われたとも聞きません。ただ、教育の効果が現れるのは数十年後です。今すぐに効果を数値化するのは難しいでしょう(最近の市教委は目先の点数や数字を追い求める傾向が強いですが)。

とは言え、仮にここで塾代助成事業が廃止された場合、その財源が子供と関係ない分野に充当される可能性は否定できません。広く子供や子育て世帯の為になる事業として受け止めています。