(5/9追記)
当時14歳だった女子中学生と15歳だった男子高校生(事件当時は中学生)で判断が割れました。女子中学生は少年院に送致されましたが、男子高校生は不処分とされました。

美人局(つつもたせ)の手口で誘い出した男子大学生(22)をビルから転落死させたとして、監禁致死の非行内容で家裁送致された高校生の少年(15)について、大阪家裁(野口卓志裁判長)は8日、「監禁の故意は認められない」として刑事裁判の無罪に当たる不処分とした。

この事件ではすでに中学3年の女子生徒(14)が初等・中等(第1種)少年院送致となっている。少年らは、ビルの外階段6階踊り場に男子大学生を誘い込んだ上、踊り場やエレベーターに立ちふさがり、上に逃げた男子大学生を追いかけていた。

野口裁判長はこうした行為が客観的には監禁に当たるとしつつ、「少年はもともとビルに入ったことがなく、6階より上に逃げ場がないと認識していたとはいえない」として、故意の立証が不十分と判断した。

https://news.yahoo.co.jp/articles/11546ea627055843e99e3861e08a5f71f0055bdb

異なる裁判官が異なる判断を行ったと思いきや、女子中学生の保護処分を決定したのと同じ裁判官でした。

 大阪市中央区のビルで2月、男子大学生を転落死させたとして、大阪家裁(野口卓志裁判長)は22日、監禁致死と恐喝の疑いで家裁送致された中3女子(14)を初等・中等(第1種)少年院送致とする保護処分を決定した。

https://news.yahoo.co.jp/articles/7ce038239c11657c3786a429816e5815040df6fe

2人の罪名は同一ではありません。女子中学生は「監禁致死と恐喝の疑い」で送致されましたが、男子高校生は「監禁致死」のみです。送致される前の段階で恐喝の犯意は無かったと判断されたのでしょう。

そもそも本事件は女子中学生と交際関係にあった男子中学生(当時13歳)が主犯でした。不処分とされた男子高校生は共通の知人を介して誘われたとされています。

また、家裁での事実認定によると、この男子中学生は同ビルに入った事がありませんでした。同ビルには過去に男子中学生が入居しており、構造を熟知していました。女子中学生と共に何度も美人局行為を行っていました。

とは言え、男子高校生は逃げようとする大学生の行く手を遮り、追いかけ回した事実は認められました。「少年に非行はない」という判断は疑問です。

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(4/17追記)
少なくとも2件の余罪が明らかになりました。

府警によると、生徒2人は1月6日、大阪市中央区のビルにSNSで知り合った大阪市の男性会社員(28)を誘い出し、「俺の彼女になに手を出そうとしてんねん」と脅迫。殴る蹴るの暴行を加えて現金4千円を奪ったほか、1月20~22日、大阪府の男子大学生(19)を脅し、現金4万8千円を奪ったとしている。

府警は、会社員への事件で男子生徒に現場に呼び出され、一緒に脅迫したとして同級生の中学3年の男子生徒(14)も強盗未遂容疑で書類送検した。

女子生徒のスマートフォンには会社員が暴行される様子が写った動画が残っており、女子生徒は調べに「友達に見せて自慢したかった」と話したという。

https://news.yahoo.co.jp/articles/6a5529445c58d927ffd5314e7befe737c27f0047

凶悪な少年犯罪です。大人と同一の基準で処罰してもらいたいぐらいです。

一連の報道では学校の存在感が全くありませんでした。こうした犯罪等は本人が自慢しがちです。そうした話は生徒の間を駆け巡り、先生の耳にも飛び込んできます。

恐喝や強盗等の疑いがある行為を耳にしたら、先生は本人を呼び出して事情を聞くでしょう。が、そういった形跡は全く報じられていません。学校が知らぬ間に事件を繰り返し、大学生を死なせてしまっています。

確かに学校の先生方は非常に忙しいです。学校外の非行事実まで確認しきれません。しかし本当に全く気づいていなかったのでしょうか。それとも見てみぬふりをしていたのでしょうか。

(3/28追記)
強盗致死ではなく、監禁致死として大阪家庭裁判所へ送致されました。

 「美人局(つつもたせ)」の手口で脅した大学生をビルから転落死させたとして、中学生3人が強盗致死容疑で逮捕や児童相談所通告された事件で、大阪地検は28日、中学2年の少女(14)と中学3年の少年(15)を監禁致死の非行内容で大阪家裁に送致し、発表した。地検は適用罪名の変更について「証拠の内容を検討した」としている。認否は明らかにしていない。

https://digital.asahi.com/articles/ASS3X3303S3XPTIL00BM.html

本事件も含め、全国各地で中学生による美人局事件が相次いで発覚しています。手口が広がったプロセスが気になります。

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(3/13更に追記)
このビルに目を付けた理由が明らかになりました。事件を主導した中学2年生男子は、約2年前までこのビルの5階に住んでいました。

約2年前までこのビルの5階に住んでいた“主犯”の少年は、引っ越した後も屋上をたまり場としていたようだ。
https://news.yahoo.co.jp/articles/34ab5e3915b964c84da94dcbcb82c43335fc05f2

賃貸情報サイトには同ビルの3階及び4階の賃貸情報が掲載されています(現在は賃借人が居住中)。ただ、5階の賃貸情報は見つかりませんでした。

男子中学生に関しては喫煙や異性交遊に関する噂も囁かれていました。

「男子の友だちとの間で彼女を交換して遊んでいたようです。それで“あいつヤバい”“あかんよな”とささやかれていました。隠れてたばこを吸っていると聞いたこともあります」

異性交遊・喫煙・繁華街への出入り・恐喝、昔風に言うと「不良」のオンパレードです。

生徒の問題行動には学校も気づき、家庭も交えた指導等を行います。しかし、学校と家庭とのコミュニケーションには障壁がありました。「言葉」です。母親は東南アジア系だと言われています。

「彼には年の離れた弟が2人いました。約2年前の時点で一番下は赤ちゃんで、その上はやっと小学校に入ったくらいの年齢でした。お母さんは東南アジア系だと思うのですが、きれいな方で、いつも夜7時ごろに派手な化粧をしスーツを着て出かけていくのを見かけました。お父さんは目にしたことがなく、よくおじいちゃんとおばあちゃんが出入りしていた」

大阪市教委から各家庭へ配布される文書には、ルビが振ってあったり外国語への翻訳文を案内するQRコードが印刷されている物が増えています。ルビの多さに読みづらくて困っています。

来日した保護者の日本語能力にはバラツキがあり、漢字が全く読めない方もいます。英語すら通じなかったらお手上げです。

大阪市内では海外にルーツがある子供達が急増しています。区内に事件現場及び繁華街(島之内)がある大阪市中央区内の小中学校の運営計画や学校協議会議事録には、細かい現状が記されています。

本校は通常学級が5学級、特別支援学級が6学級(生徒総数160名)という小規模校である。校区に大阪ミナミの繁華街があり、外国籍の生徒や保護者の母語が日本語ではない生徒は全体の4割を超え、さらに特別支援学級の生徒が急増している。全体の6割近くの生徒が、日本語指導、特別支援など個別の支援を要するという他校にはない特別な実情がある。支援を要する生徒の課題は様々で、個に応じた指導の充実を図っていかなければならない。さらに日本語の支援が必要な保護者も多い。

 学校全体の状況は、本校ならではの様々な取組みの成果もあり、生活指導面では落ち着いている。しかし家庭においては、食事もとれていない、長時間一人で過ごすなど、とても生徒の健全育成が見込めない状況があり、虐待や家出などで緊急保護されるケースが増えている。また家庭の教育力が弱いため、学校教育において培っていかなければならないことも多い。ヤングケアラー問題にもさらなる対応が求められている。

大阪市立南中学校 令和5年度 運営に関する計画・自己評価

ただ、主犯たる男子中学生には、女性を装って大学生を呼び出すほどの日本語能力がありました。仮に学校と家庭とのコミュニケーションに齟齬があったとしても、学校と本人とのやり取りに「言葉の壁」はありません。

(3/13追記)
手口が手慣れていたのは当然です。過去に同様の手口で金銭を巻き上げた余罪がありました。

SNSで男性を募っていたのは、女子中学生ではありませんでした。「17歳 さき」を装った男子中学生でした。

「美人局(つつもたせ)」の手口で脅した大学生をビルから転落死させたとして、中学生3人が強盗致死の疑いで逮捕や児童相談所通告された事件で、当時13歳だった中学2年の少年(14)が大阪府警に「被害者が逃げられない場所に誘い込んだ」という趣旨の説明をしていることが、捜査関係者への取材でわかった。府警は大学生がビルから飛び降りざるを得ない状況だったとみている。

 捜査関係者によると、少年と中学2年の少女(14)は2月、SNSで17歳の「さき」という架空の女性になりすましたアカウントで男子大学生(22)と接触。少年が「会いたい。ホテル代だけ持ってきて」などとメッセージを送信したとみられるという。

 事件当日の2月12日は、少女が大学生と大阪市中央区の駅のそばで待ち合わせ、「ビルに住んでいる母親に呼ばれた」とうそをつき、近くのビルの6階と7階の間の階段踊り場に誘導。大学生は6階から踊り場に来た3人と対面後、ビルの6~7階付近から隣の4階建てビルの屋上に飛び降り、さらに逃げようとして転落死した。ビルのエレベーターは6階までしかなく、上階には物置と屋上しかなかったという。

 捜査関係者によると、少年のスマートフォンには複数のアカウントで他の複数の男性とやり取りした形跡があった。少年と少女は同様の手口で他にも金を奪ったことを認めているという。

https://digital.asahi.com/articles/ASS3D53DBS3DPTIL001.html

同様の手口が中学生の間で流行しているのかもしれません。ほぼ同じ手口で男性から車と5万円を恐喝した疑いで、熊本県に住む10代4人が逮捕されたばかりです。

恐喝の疑いで逮捕されたのは、いずれも熊本市に住む15歳の女子中学生2人です。2人は2月28日、熊本市中央区新大江の路上で、すでに逮捕されている16歳の少年と15歳の男子中学生と共謀し、玉名市の男性会社員(28)に因縁をつけ、現金約5万円と男性の車を脅し取った疑いがもたれています。

熊本東警察署によりますと、男性会社員がマッチングアプリで知り合った「成人女性」と待ち合わせしていたところに女子中学生2人が現れました。男性が年齢を確認したところ、2人は20歳と答えたということです。

男性が2人と歩いていたところ、少年2人が現れ、「さらうぞ」、「金を出せ」などと脅され、コンビニのATMで引き出した約5万円と車を奪われたということです。

この事件をめぐっては3日、16歳の少年と15歳の男子中学生の2人が逮捕されていて、少年の供述や被害にあった男性の話などから、警察は女子中学生2人が事件に関わったとして逮捕しました。

https://news.yahoo.co.jp/articles/f6fc231b63898cd5fabceebc70d448e7e63532fa

少なくとも「出会い」に必要な金銭を持っている、女性を誘い出した後ろめたさ、児童との出会いによる逮捕より数万円を支払う方が被害が軽い等、恐喝が成立かつ露呈しにくい要素が盛り込まれています。

大阪市の少年がこのビルに連れ込んだのにも理由がありました。雑居ビル6-7階の踊り場に誘導すると、被害者が逃げ場がありません。ビルの踊り場は薄暗く、狭いです。周囲を複数の中学生に囲まれ、金銭を差し出すしかなかったのでしょう。

加害者は「グリ下」に出入り?

事件を主導した中学2年男子(児相に通告)と逮捕された中学2年女子は交際関係にあったそうです。学校内で2人で一緒に過ごす時間が長い一方、スマホを校内に持ち込んで指導を受ける事もありました。

男子生徒は暴力的で怖い印象があり、不特定の少年少女が出入りする「グリ下(道頓堀のグリコ看板の下)」に出入りしていたとの噂がありました。東京・歌舞伎町「トー横」と類似する位置づけの場所です。

同級生によると、小学6年までおとなしい印象だった少女は、中学で男子生徒と交際を始めると「雰囲気が変わった」。互いにスマートフォンを学校内に持ち込んだことで、2人で別室で指導を受けることもあったという。「2人で一緒に教室にいることが多く、他の同級生を寄せ付けない雰囲気だった。とても仲が良さそうだった」

ただ男子生徒については、けんか自慢をするなど「暴力的で怖い印象があった」と語る。居場所を求める若者らがたむろする大阪・道頓堀のグリコ看板下の遊歩道「グリ下」に出入りしているという噂を耳にしたこともある。同級生は「なぜタイプの違う2人が付き合うことになったのか。ずっと疑問だった」と振り返る。

美人局に手を染めるほど金が必要だったのはどうしてなのか。同級生は「友人から2人が事件に関わったと聞いたときは人を死ぬまで追いやったということに驚いた。学校から説明はなく、よく分からない」と、いまだ困惑が収まらない様子だった。

https://news.yahoo.co.jp/articles/efe7d8d92b7da9f7c2bc085cc96cab8994fef12d

「グリ下」から犯罪現場までは道なりで約1.4キロ、自転車なら10分も掛からずに辿り付けます。中学生にとっては至近距離です。

スマホの持ち込みや他生徒からの情報提供・噂等により、学校も問題行動等を掴んでいたと考えるのが自然です。少なくとも「指導が必要な生徒」という認識はありました。

とは言え、学校外での行動を監督するのは難しいです。学校外で何をしているか分からず、指導等を行うマンパワーも不足しています。

「グリ下」についてはになる報道がありました。1年ほど前に複数の防犯カメラ(実質的には監視カメラ)を設置しましたが、分散した若者が「違う闇に潜り込む」のを危惧する声がありました。

トラブル多発していた「グリ下」防犯カメラ設置2カ月…“映らない場所”で今もトラブル 必要なのは“若者の自立”【大阪発】
https://www.fnn.jp/articles/-/529247

事件が起きたビルは、いわば心斎橋エリアの「場末」と呼べる場所にありました。まさしく「違う闇」です。

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中学生3人が大学生から「美人局(つつもたせ)」の手口で金品を奪おうとしたところ、逃げようとした大学生が大阪市中央区のビルから転落死する事件が発生しました。

強盗致死容疑で大阪市中央区の中学2年生女子(14歳)と堺市北区の中学3年生男子(15歳)が逮捕、事件を主導した疑いがある大阪市中央区の中学2年生男子(14歳、事件当時は13歳)も児童相談所へ通告されました。

 SNSで知り合った20代の男性から金を奪おうとし、逃げようとした男性をビル4階から転落させ、死亡させたとして、大阪府警は7日、大阪市中央区の中学2年の少女(14)と堺市北区の中学3年の少年(15)を強盗致死の疑いで逮捕したと発表した。事件当時13歳だった大阪市中央区の中学2年の少年(14)も強盗致死の非行内容で児童相談所に通告した。

 府警は「美人局(つつもたせ)」の手口とみている。府警によると、少女と14歳の少年は容疑を認め、15歳の少年は「逮捕されるようなことはしていない」と否認しているという。

 発表では、3人は2月12日午後3時ごろ、SNSで知り合った滋賀県草津市の大学生の男性(22)から金品を奪おうと考え、大阪市中央区瓦屋町1丁目の雑居ビルに呼び出し、脅迫。ビル7階から西隣の4階建てビルに飛び移って逃げようとした男性を転落させて死亡させた疑いがある。司法解剖の結果、死因は多発性外傷による出血性ショックだった。

 府警によると、防犯カメラの捜査などから3人が浮上。少女と14歳の少年は同じ中学で共通の知人を通じ、15歳の少年と知り合ったという。

 現場は、大阪メトロ松屋町駅から南に約200メートル。雑居ビルやマンションが立ち並ぶ。

https://digital.asahi.com/articles/ASS373RH6S37PTIL001.html

大学生転落死 強盗致死容疑で中学生の男女2人を逮捕…“美人局”の可能性も 大阪市

男子大学生から金を奪おうとしたうえ、ビルから転落させて死亡させたとして、中学生の男女2人が逮捕されました。金品強奪を目的とした、「美人局(つつもたせ)」の可能性も出ています。何があったのでしょうか?

大阪市中央区のビルとビルの隙間には花束が手向けられていました。現場に倒れていたのは、滋賀県草津市の大学生、太田岳さん(22)。帰らぬ人となった太田さんの死因は「出血性ショック」でした。

先月12日に起きたビルからの“転落死事件”。3週間以上がたち、急展開をみせました。

14歳の女子中学生と15歳の男子中学生の2人が7日までに、大阪府警に逮捕されたのです。その容疑は「強盗致死」。さらに、当時13歳だった男子中学生が児童相談所に通告されました。

太田さんと3人の中学生の間で一体何があったのでしょうか?

記者
「22歳の被害男性は、少年らにこのビルの6階部分、このあたり(階段)まで誘導させられ、隣のビルに逃げ移ったということです」

現場は大阪市中央区。警察によると、逮捕された14歳の女子中学生は先月12日、太田さんとコンビニで待ち合わせしたといいます。そして、太田さんに近くの7階建てビルの6階で待つように伝えた女子中学生。

そこで男子中学生2人とともに太田さんに対し金品を強要したということです。太田さんは階段を上って逃げ、その後、隣の4階建てビルの屋上に飛び降りたといいます。

7階建てのビルから見ると、隣のビルの屋上部分まで高さがあることが分かります。ビルのふちにはエアコンの室外機が並んでいます。4階建てビルの屋上に着地したという太田さんですが、そのあと、地上へ転落したとみられています。(中略)

警察によると、先月上旬、SNSを通じて知り合ったという太田さんと女子中学生。女子中学生と当時13歳の男子中学生は交際関係にあり、知人である15歳の男子中学生を誘ったといいます。

警察の調べに対し女子中学生は「金をとるつもりだった。ビルの下に降りると、被害者が血を流して倒れていた」と容疑を認める一方、逮捕された15歳の男子中学生は、一部容疑を否認しているということです。

警察は事件の経緯を慎重に調べています。

https://news.yahoo.co.jp/articles/e7f30e5d31f2df072211de43e916c26eb1825fe6

事件現場付近に所用があったので、赴いて手を合わせました。

場所は中央区瓦屋町1丁目の北西角、地下鉄松屋町駅から徒歩5分程度です。

地下鉄駅で交わる長堀通や松屋町筋にはタワーマンションや多くの商店等が建ち並んでいます。

一方で一本だけ裏道に入った現場周辺はワンルームマンションや雑居ビルが建ち並び、表通りとは全く異なる雰囲気を感じました。どちらかと言えば東横堀川を挟んだ西岸にある、島之内地区に似ています。現場のすぐ西には橋があり、島之内地区へ一直線です。

大学生が転落死したのは何の変わりもない雑居ビルでした。1階の喫茶店は営業している様子がなく、2階には明かりが灯っていました。


雑居ビルには新しいマンションを建築する旨の計画が張られている事から、近日中に取り壊される予定とされています。

そもそも大学生がこのビル(キー眸ビル)に飛び移ったのは、隣接する別のテナントビルに呼び出されたのが切っ掛けでした。こちらのビルにはワイン卸売業者や美容室がテナントとして入居、そして上層階は賃貸マンションとなっています。

ビル1階には子供を乗せられる2人乗り自転車が複数台駐輪され、玄関ドアは開け放たれていました。オートロック式ではないので、誰でもがマンション内へ入れます。

では、どうして3人の中学生はこのビルに大学生を呼び出したのでしょうか。報道によると、ビル屋上は中学生達の「たまり場」の様な場所になっていたと考えられます。屋上にはタバコの吸い殻や食べ物の空き容器等が散乱していたそうです。

ミナミの道頓堀や心斎橋に近い立地だが、もっともにぎやかな通りからは距離があり、観光客が頻繁に行き交うエリアではない。このビルの屋上には、たばこの吸い殻や食べ物の容器、スマートフォンの充電器、避妊具などが雑然と置かれていたといい、若者の「たまり場」のような場所になっていたとみられる。

近くで働く30代男性は「中学生くらいの子がビルの目の前の駐車場にいたり、自転車に2人乗りしたりしている姿をよく見かけた」と話す。

https://news.yahoo.co.jp/articles/f070b8fffe56e39af30e232d07ac2f31708aed72

一昔前の言葉だと「不良のたまり場」ですね。学校や家庭等に居場所が無い中学生等が集まり、夜な夜な時間を過ごしていたのでしょう。

大阪市中央区には東中学校上町中学校南中学校の3中学校があります。ざっくり言うと、大阪城や官庁街等がある旧東区の北部が東中学校、商工業者や住宅が混在している旧東区の南部が上町中学校、心斎橋や島之内という大繁華街がある旧南区が南中学校の学区です。

事件現場は上町中学校の学区内です。但し、東横堀川を超えた目と鼻の先は南中学校の学区です。両学区が接する場所にあります。

こうした場所へ大学生を誘い込み、複数人の中学生が脅して金品を奪い取ろうとした事件でした。

SNSでのアポイントメント、現場近くのコンビニで待ち伏せ、ビル屋上への誘い込み等がスムーズに進みました。今回が初めての犯行では無く、過去に幾度となく繰り返したのではないかと感じました。非常に手慣れています。

では、どうして犯行が発覚しなかったのでしょうか。真っ先に考えたのは「中学生と思しき若者に恐喝されたのは恥ずかしい」という感情です。

しかもSNS等で若い女の子に呼び出された後の被害です。身分証明書を取り上げられて撮影され、更に「中学生女子のわいせつな行為をしようとした」「警察に通報したらこちらも訴える」「中学生は名前が出ないけど、成人は名前が出る。」と脅迫されたら、黙ってしまうのもやむを得ません。

小学生とは異なり、学校や家庭の外で中学生が何をしているかは本当に見えません。携帯電話を持たせても、位置情報をオフにされたら居場所が分かりません。本人を信じるしかない反面、不安等があるのも事実です。

お世話になっている中学校からは、この事件に関する保護者会等のお知らせはありません。同じ中学校の生徒が犯人だとしたら、教職員や生徒に激しい動揺が広がります。

また、多くの先生方から「学校外でのトラブル等を学校に持ち込んで欲しくない」という話を何度も聞きました。学校に対処できるマンパワーがなく、詳しい調査等を行う権能もありません。「110番に通報して欲しい」とまで言われました。反対に学校内で発生した「いじめ」は隠そうとするのは不思議な現象です。

今後は詳しい手口や余罪の有無等に関する捜査が進むのでしょう。

事件を主導したと考えられている中学2年生男子(大阪市)が児童相談所に通告(当時13歳だった)されましたが、従属的役割を担ったとされる中学2年生女子(大阪市)やSNSで知り合った中学3年生男子(堺市)は強盗致死容疑で逮捕されました。同じ犯罪を共同して犯しても、年齢によって問われる責任の雲泥の差が生じます。

大阪市には約7万人の中学生がいます。こうした手口が広がらないのを祈るばかりです。