令和5年末に「大阪市こども・子育て支援に関するニーズ調査」が実施されました。
この度、令和7年度から始まる次期「(仮称)大阪市こども計画」を策定するにあたって、市民のみなさんが必要とされているこども・子育て支援などに関する施策のニーズ量や施策に対する意向を把握することを目的にアンケート調査を実施します。
令和5年度 第2回こども・子育て支援会議教育・保育・子育て支援部会にて速報値が公表されています。
平成30年に実施した前回調査が併記されており、ここ数年の変化が捉えやすくなっています。以下、気になった部分を取り上げていきます。父親がアンケートに答えた割合が1.5倍増
前回調査で父親がアンケートに答えた割合は7.1%でしたが、今回調査では11.6%へと増加しています。
日頃から育児に主体的に関わっていないと、こうしたアンケートに回答するのは難しいです。子育てに於いて父親が担う部分が増えた事実を表しています。
2人きょうだい減少、一人っ子・多子世帯が増加
前回調査と比べて2人きょうだいが大きく減少し、代わりに子供1人という世帯が増加しています。大阪市の様な都市部で複数の子供を育てるには、様々なコスト(特に家の広さと食費と教育費と時間!)が掛かります。子供1人という回答が増加したのは、子育て世帯の経済的苦境を表していると考えられます。
一方で子供が3人以上と世帯は若干ながら増加しています。経済的に一定の余裕があり、3人以上の子供を育てている家庭が増えているのかもしれません。
あくまで肌感覚となりますが、数年前よりお世話になっている保育園で3人きょうだい(同時在園ではない)を見聞きする機会が増えた様に感じています。
フルタイム就労する母親が9%増
前回調査でフルタイム就労(育休中等を含む)している母親は36.7%でした。しかし、今回調査では46.0%へ9.3%も急増しています。
ここ数年の間に育児休業や時短勤務等が更に取得・利用しやすくなったのに加え、離職した場合の経済的デメリットを重視する方が増えたのでしょう。
但し、フルタイム就労(育休等を含む)している割合は子供が成長するに従って減少していきます。子供が0歳の場合は56.1%なのに対し、2歳では46.6%となっています。
0-2歳児を育てながらフルタイムで就労するのは本当に大変です。特に長時間労働に従事している母親はどうやって育児や家事を回しているのでしょうか。
保育サービスの利用率が1歳児54.9%、2歳児80/7%
保育サービスの利用率の上昇が止まりません。特に1-2歳児の伸びが顕著です。1歳児は65.7%、2歳児は80.7%まで増加しました。前回調査より10%以上も増加しています。何も利用していない児童は少数派です。
保育サービス等が更に充実し、こうしたサービスを積極的に利用する様になった為でしょう。
10時間以上の保育利用率は約24%
少し気になったデータです。保育所等を利用している0-2歳児の内、約半数は8-10時間を園で過ごしています。我が家もその一つです。
一方で約24%の園児が10時間以上を保育園で過ごしています。たとえば8時~18時、長ければ7時~19時という利用時間となります。
両親の就労等によるので致し方ありませんが、これだけ長い時間を保育園で過ごすと子供に負担が掛かります。また、長時間保育に対応する保育園も人員の遣り繰りに苦労しています。
更に心配なのは小学校入学後です。大阪市立小学校で実施しているいきいき(預かり保育の一種)は原則として午後6時までです。朝の早い時間や18時以降は閉じています。
未就学児の間は保育所等が長時間保育を担っていましたが、入学後の居場所を探すのは容易ではありません。民間学童が候補の一つですが、費用や保育内容等に不満の声も聞きます。
また、保育園児とは異なり、小学生は帰宅してからも宿題や翌日の準備等をしなければなりません。いわゆる「小1の壁」です。
非利用者の半数以上「保育料無償なら利用希望」
平日に幼稚園・保育園・こども園等を利用していない世帯に「保育料が無料になった場合の利用希望」を質問したところ、半数以上が「こどもを保育所等に預けて働きたい」と回答しました。
この回答結果を基にして各区・地域の保育ニーズを再計算し、大阪市長が主張する「保育料の全面無償化」の可否を検討していくのでしょう。
既に保育所等の利用率が高い区より、むしろ利用率が決して高くない区での影響が心配です。特に天王寺区や阿倍野区等では無償化によって希望者が急増しても、殆どが保育所等へ入所できないという結果が見えています。
激減する幼稚園希望者
前回調査と比べ、幼稚園の利用希望者が大幅に減少しています。主たる利用層たる3歳以上では、前回調査より約10%も減少しています。共働き世帯の増加や保育所等の充実により、幼稚園という施設が時代にそぐわなくなっているのでしょう。
今後も幼稚園から認定こども園に転換し、保育も行う施設が増加すると考えられます。幼稚園単独として生き残っていくのは年々困難となっています。
24%もの母親が子供の体調不良で仕事を年20日以上休む(父親は4%)
病気等で幼稚園や保育所等を利用出来ず、父親や母親が仕事を休んだ日数です。
父親の中央値は4日(全体)でした。前回調査では3日でした。1年間で1日しか仕事を休まなかった父親は半数以下へと激減した一方、10日~19日も休んだ父親は倍以上に増加しています。
とは言っても、今回調査でも約7割の父親が仕事を休んだ日数は5日以下でした。
子供が体調を崩した場合の負担は母親に著しく偏っています。中央値は父親より3倍以上も多い概ね13日(グラフより目測)です。
更には約24%もの母親が1年間で20日以上も仕事を休んでいます。勤務年数や前年度の使用状況によっては、付与された有給日数を超過します。
より気掛かりなのは前回調査との比較です。仕事を休む父親が増えたので母親が休む日数が減ったと思いきや、20日以上も仕事を休んだ母親が倍以上に増加しています。子供に年齢による偏りはありません。
思い当たる理由の一つは「新型コロナ」です。未就学児がいる家庭でコロナ感染者が生じた場合、そのケアは多くは母親にのし掛かります。感染者がいる限りは保育所等へ登園するのも難しく、母親が仕事を休み続けざるを得なかった現実が垣間見えます。
それにしても子供が保育所等を利用出来ない場合の負担は不合理な程に母親に偏っています。男女の性差が影響する育児休業は仕方ないとしても、子供が体調を崩した際の看病等に男女の性差はありません。ここは問題提起したいです。
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