昨年にお知らせした通り、大阪市は2024年9月から第1子の年齢を問わない第2子保育料無償化を実施する見通しです。

【重要】第1子の年齢を問わない第2子保育料無償化を2024/9より実施(確定) 大阪市

これに加え、2026年度から第1子保育料無償化を実現したい方針を明らかにしています。仮に実施した場合、多くの入所希望者が申込み、待機児童問題が悪化する懸念があります。

昨日の会見にて、大阪市の横山市長が第1子保育料無償化に向けた詳細なロードマップ等を発表しました。

保育料 2歳以下も完全無償化へ行程表 大阪市「26年度中」目標

 大阪市の横山英幸市長は15日、0~2歳児の保育料について、2026年度中の完全無償化を目指すと発表した。実現に向けたロードマップ(行程表)も公表し、財源の見通しや保育環境の状況を踏まえ、25年度に判断する。完全無償化が実現すれば政令市では初という。

 保育料の完全無償化は、横山氏が23年4月の市長選で公約に掲げた目玉政策の一つ。国の制度で既に3歳以上が無償化され、0~2歳児は住民税の非課税世帯や、第3子以降が無償となっている。

 市はまず、24年9月から所得制限を設けずに第2子を対象に含める。24年度の見込みで、市内の0~2歳児約5万8000人のうち、約2万8000人が保育施設を利用すると想定。現行制度で無償化の対象は約4000人だが、9月からは約1万5000人に拡大するとみている。

 これを踏まえた市の試算では、第2子の無償化には年間約36億円、第1子を含めた完全無償化には年間で約94億円かかる。こうした財源のほか、保育ニーズの増加に向けた保育士の確保や保育環境の整備、在宅で子育てをする家庭への支援状況を基に、26年度中の実施を判断する。

 横山氏は記者会見で「0~2歳児の子育ては保護者の負担が大きいが、支援が比較的手薄になっているのが現状だ。課題はあるが、無償化に挑戦していく」と述べた。

https://mainichi.jp/articles/20240215/k00/00m/100/196000c

ロードマップはこちらです。

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こうしたフリップの多くは、作成者が「○○局」となっています。しかし、このフリップは「大阪市長 横山英幸」と記名されています。市長が選挙戦で掲げた、肝いりの方針です。

大阪市・大阪府は既に多くの子育て支援策を実施しています。しかし、0-2歳児への支援は手薄という認識です。

保育所等を利用している0-2歳児は約42%(0歳児は約20%、1-2歳児は50%前後だったと記憶)です。また、在宅で育児を行っている世帯への支援は不十分です。

「財源・待機児童対策・在宅育児支援」が要件

そこで2024-2025年度に掛けて待機児童対策及び在宅育児支援の強化を行い、その過程や結果を見た上で2026年度からの第1子保育料無償化を判断・実施する意向です。

2026年度から実施する上で、市長は「保育を必要とする人が入所できる環境の確保(待機児童対策)」「在宅児等が必要な時に利用できるサービスの確保(在宅育児支援)」「財源の見通しが立つこと」という3要件を定めています。

あくまで2026年度からの実施を前提としながら、それに向けた着実なロードマップが計画されています。「非常に手堅い」と感じました。

3要件の内、財源は難なくクリアできるでしょう。2026年度は万博が終了しています。また、企業景気の回復や賃上げ等により、住民税収が大幅に上振れすると予想されます。

1歳児保育ニーズが1.5倍?

問題は待機児童対策です。数多くの保育所等を新設したことにより、大阪市では徐々に保育所等へ入所しやすくなっています。

しかし、コロナ禍以降は停滞気味です。事業者が来る少子化に警戒感を示し、園児が集まりにくい地域型保育事業は新設どころか撤退する動きが生じ始めています。

保育料無償化により、申込率がどれだけ上昇するでしょうか。リーディングケースは平成31年度より0-5歳児保育料無償化を実施した守口市です。同市は保育ニーズ(認定こども園等(保育枠)への通園児童数+未利用児童数) を明示しています。

https://www.city.moriguchi.osaka.jp/material/files/group/4/taikijidoukaisyounimuketakinnkyuutaisakunituite.pdf

分かりやすいのは1歳児保育ニーズです。令和5年4月1日時点では「855人」とされています。1歳児クラスに該当するのは、令和3年度(令和3年4月~令和4年3月)に産まれた児童です。

令和5年3月31日時点での1歳児人口は1142人です。つまり、守口市では1歳児の約75%が保育所等の利用を希望しています。

単純に大阪市に当てはめると、現在の1.5倍に相当する1歳児定員が必要となります。保育施設が全く足りません。

また、地域格差も深刻です。保育所等を集中的に新設した都心部は大幅に入所しやすくなりました。が、その周囲に広がる地域では入所するのが徐々に難しくなっているのが実情です。港区・旭区・西淀川区・住吉区が代表例です。2024年度一斉入所では1歳児の入所が困難な事例が多発しました。

そうした地域では多くのファミリー向けマンションが新設され、子育て世帯が転入しています。こうした世帯の多くは共働きをしており、保育所等を利用するのが前提です。

しかしながら大阪市は都心部や隣接する地域への新設に注力するあまり、ここ数年は周囲に広がる地域での保育ニーズに十分に対応できていませんでした。

深刻化する人材不足

新設された保育所等には保育士や関連職種(栄養士・調理師・看護師等)が欠かせません。が、保護者目線でも求人が難しくなっているのを実感しています。

我が家がお世話になっている保育所等でも職員が不足気味です。数人の新卒保育士を採用する見通しですが、早朝や夕方以降に勤務できる保育士が足りないそうです。園長先生が保育に入っている姿も見かけるぐらいです。

調理師も足りていません。「給食を外注しようか」という計画も浮上しているそうです(園の良さをスポイルしてしまうので、反対意見も多い)。

在宅育児支援は更に難しいかもしれません。大阪市は「子育て応援ヘルパー派遣事業」や「こども誰でも通園制度(仮称)の試行的事業」を予定しています。が、十分なサービル量を提供するのは困難でしょう。人が足りません。

「誰でも通園制度」はお世話になっている保育所等の先生が「無理だと思う」と断言しています。保育士も保育室も不足しています。在園している園児の保育で精一杯です。

「子育て応援ヘルパー派遣事業」も難しいでしょう。大阪市には子育てを援助する「ファミリーサポートセンター事業(ファミサポ)」という制度があります。

数年~10年ほど前は周囲で利用しているという話を聞いていましたが、最近は全く聞かなくなりました。援助できる人間が減っていたのに加え、コロナ禍が追い打ちを掛けた様です。

大阪市長の心意気は素直に評価します。しかし、財源問題はクリアできたとしても、人材問題をクリアするのは容易ではありません。更に、0-2歳児の保育ニーズが現在の1.5倍へと爆発的に増加する懸念があります。

こうした課題等を着実に検証・克服・解決できれば、2026年度からの実現が近づくでしょう。

育児支援は少子化対策に非ず、見捨てられた団塊ジュニア

コロナ禍以降の育児支援策は信じられないほど充実しています。中学生になった第1子が保育所等へ登園していた頃は、こうした支援策は殆どありませんでした。

保育所等では0歳から卒園するまで保育料を払い続け、小学校では毎月4000円以上の給食費を徴収され、塾代助成もありませんでした。今後は私立高校授業料が無償化され、多子世帯が大学授業料も助成されます。最近の恵まれ具合が信じられません。

これから子育てをする方にとっては良い時代です。一方、既に子育てを終えたり折り返し点を迎えた方が「ずるい」と感じるのも理解できます。私自身も「第1子はあれだけ高い保育料を払ったのに・・・・」と思う事もあります。

あまり世代云々は言いたくないのですが、団塊ジュニア世代は受験・就職・子育てという全ての面で政府から軽視されました。ロスジェネどころか「見捨てられた世代」です。

また、これらの支援策は全て「育児支援」です。出生すると密接に関連する「婚姻支援」ではありません。自力で結婚・出産にこぎ着けた子育て世帯を強力に支援しますが、辿り付けない単身者等に手は差し伸べられていません。

少子化対策としての効果は限定的でしょう。むしろ子育て世帯の家計が好転し、関連業界(特に学習塾)に資金が流れ込む現象が想定されます。塾代は本当に高いです。