つい先日、中学校での三者懇談が行われました。中学校では1学期末と2学期末に担任・保護者・生徒の三者で懇談を行い、通知表の内示・中学校や自宅での様子・今後の学習方針等をゆったりと話します。
持ち時間は1人あたり1家庭あたり15分となっていますが、時間を超過する家庭が少なくありません。私も教室前で20分ほど待ちました。中には予め「懇談時間を多めにご準備下さい」と伝えている家庭もあるそうです。
三者懇談では真っ先に通知表が内示されました。定期テストの結果をベースに、小テスト・提出物・授業中の態度・実技(副教科)によって決定されています。想定していたより良かった科目もあれば、上がると思っても上がらなかった科目もありました。
担任を通じて各教科担任のコメントも聞けました。「○○をがんばった」というコメントもあれば、「授業に集中せずに遊んでいた」という辛辣なコメントもありました。結果のみならず、それに至ったプロセスや理由が聞けるのはありがたいです。
通知表を見ていて改めて感じたのは、昨今の評定の甘さです。親世代が「5」を取るにはトップクラスの成績が必要でした。当時は上位7%が「5」、次ぐ24%が「4」でした。
が、最近は容易に「5」や「4」が付いてしまいます。
実は大阪府全体の主要5教科(英国数理社)の評定平均は「3.5」です。地域や学校によって差はありますが、概ね「5」が24%、「4」が26%、「3」が32%、「2」が12%、「1」が6%とされています(中学2年政治の府全体の評定分布実績より)。
上位1/4が「5」、それに次ぐ1/4が「4」です。分かりやすく言うと、定期テストで平均点を上回れば「4」が付く公算です。1学年200人の学年ならば、上位50人に「5」が付きます。
親世代の感覚では「通知表インフレ」です。親世代の「4」であっても最近は「5」が付いてしまいます。相対評価から絶対評価へ移行すると同時に、そもそもの評定基準自体が激甘となっています。
なので、私は子供の通知表の数値をあまり信用していません。むしろ各点数帯毎の人数が記載された定期テストの結果表を重視しています。
各科目の点数帯毎の人数から大まかな順位は推計できます。上位7%(1学年200人ならば14位)に入っていたら親世代としての「5」、62位までならば「4」だと再計算しています。
困りかねないのは生徒本人です。とある教科で同じ「5」だとしても、1学年200人の学校ならば1位~48位までが「5」です。10位以内と40位台では学力・理解度・学習時間に大きな差があるでしょう。同じ「5」でも中身は全く違います。
矛盾が生じるのは大阪府立高校入試です。府立高校入試では3年間の内申を得点化し、当日の筆記試験の点数と合算して合否を判定しています。
親世代の頃に「オール5」であれば、殆どの出願先は地域1番の進学校でした。が、公立中学校で「5」が乱発されている大阪府では、同じ内申でも出願先はバラついています。
ベネッセが毎年公開している「大阪府の高校入試情報」には、合格者の各学年の内申及び入試当日点が掲載されています。
例えば大阪府トップの文理学科たる北野高校(令和5年度の京大合格者81人)の合格者は、内申43~45(オール5)でした。1-2年生時は43や44も多いのですが、3年生ではほぼ45に揃えています。
https://czemi.benesse.ne.jp/open/nyushi/exam/27/naishin/index_ka.html
一方、大阪市南部の普通科進学校たる夕陽丘高校(令和5年度の京大合格者1人)の合格者は、内申35~45です。内申が40を割っていても合格した生徒もいる一方、ベネッセデータに掲載されている6人中4人の中3時内申は45です。北野高校合格者と重なります。
https://czemi.benesse.ne.jp/open/nyushi/exam/27/naishin/index_ya.html
五ツ木模試追跡データによると北野高校の合格者平均偏差値は72、夕陽丘高校は56です。全く異なるレンジです。重なり合う中学校の通知表だけでは高校受験校を決められません。
実際には中学校は定期テストや実力テストの点数や過去の進学者のデータ等を照らし合わせながら、受験校を絞り込んでいくのでしょう。が、通知表の数字の良さを素直に受け止めた保護者は、高望みしかねません。
三者懇談で内示された通知表の中には、「4」だと思っていたのに「5」が付いた科目がありました。確かにテストの点数は上位24%に入っており、提出物もしっかり提出していた様です。されど、親は「3に近い4」という感覚です。
相対評価から絶対評価への移行は時代の流れでしょうが、「絶対評価の基準が甘すぎる」というのが本音です。困るのは生徒本人です。