(亡くなった真渚己(まさき)ちゃん(朝日新聞より))
2023年12月13日に悲しい事件が起きてしまいました。
認可外保育施設「託児ルームバンビーノ」(東京都世田谷区)に預けられていた4カ月男児が死亡する事故が起きました。園長やスタッフは「うつぶせだった」と話しています。
https://www.youtube.com/watch?v=-_sGwlsxuno
東京都世田谷区の認可外保育施設で亡くなった真渚己ちゃん=遺族提供
東京都世田谷区の認可外保育施設「託児ルームバンビーノ」で昨年12月、預けられた生後4カ月の男児が睡眠時間帯に意識不明となり、死亡する事故があったことが7日分かった。児童福祉法などに基づき立ち入り調査した区は、危険性の高い時間帯に保育士資格のない職員が世話をするなど安全配慮意識が極めて低かったとして改善指導した。警視庁は業務上過失致死容疑も視野に調べている。
同庁などによると、12月13日午後3時20分ごろ、園から119番通報があり、男児が搬送され、同4時50分ごろに死亡が確認された。司法解剖の結果、目立った外傷はなく、死因は特定されていない。
区によると、授乳後に男児が寝付かず、その後、施設長が所用で外出中に臨時職員が布団に寝かせた。約25分後に異変に気付いた施設長が通報した。当時いた職員3人のうち、施設長以外は保育士や看護師の資格がなかったという。
施設長である野崎悦生園長(58)は7日、取材に応じ「申し訳ございません。スタッフは私が外出している間『仰向けにせず寝かせてしまった』と話している。戻った時にはうつぶせでした」と述べた。同日会見した遺族は、男児の名前を「真渚己(まさき)ちゃん」と明かした。うつぶせ寝による不適切な保育で窒息死したと訴え、「経緯を明らかにして事故が二度と起こらないように、保育を取り巻く環境が少しでも良くなれば、真渚己も少しは浮かばれるかなと思う」と話した。
お悔やみ申し上げます。
託児ルームバンビーノは世田谷区梅丘1-20-9(梅ヶ丘プラザ 2階)にあります。小田急梅ヶ丘駅前という非常に立地が良い場所です。ストリートビューでは縦に4枚並んだテナント看板の最上段に「託児ルームバンビーノ」と記されています。
同園は12月14日から休止しており、ウェブページは閉鎖されています。園長が挨拶する動画がYoutubeに残っていました。
事故に至った最大の原因は「うつ伏せ寝」である事に疑いはありません。うつ伏せ寝を避けるのは今や常識です。厚労省は「あおむけに寝かせましょう」と推奨しています。
1歳になるまでは、寝かせる時はあおむけに寝かせましょう
SIDS は、うつぶせ、あおむけのどちらでも発症しますが、寝かせる時にうつぶせに寝かせたときの方が SIDS の発症率が高いということが研究者の調査から分かっています。医学上の理由でうつぶせ寝を勧められている場合以外は、赤ちゃんの顔が見えるあおむけに寝かせましょう。この取組は、睡眠中の窒息事故を防ぐ上でも有効です。
しかし、同園ではうつ伏せ寝が常態化していた疑いがあります。男児の母親が入園申込を行った際、他の園児達がうつ伏せで昼寝していました。
真渚己ちゃんの母親
「私が入園の申し込みに行った際、1歳に満たない他の園児たちが、うつぶせで昼寝をしている状況があり、(園長に)1歳になるまでは、常に仰向けで寝かせるように強く要望しました。入園時のこの要望は、実際は守られていなかった。悔やんでも悔やみきれない思いがあります。保育を必要とする誰もが、安全な保育を受けられることを、行政に対して強く望みます」https://news.yahoo.co.jp/articles/d32bfa17b1e5fdca2ef914c1745bbd2c7e690b8c?page=2
母親は「仰向けで寝かせて欲しい」と強く要望していましたが、事実上無視されていました。
また、事故当時は唯一の保育士資格を有する園長が外出しており、園内には20代男性(園長の息子)と20代アルバイトしかいませんでした。
園長によると当時、施設には真渚己ちゃんを含めた0歳児が5人、1歳児が3人、2歳児が1人の合わせて9人の乳幼児がいて、園長と、園長の20代の息子、20代のアルバイトの3人で見守る体制でした。
https://news.yahoo.co.jp/articles/d32bfa17b1e5fdca2ef914c1745bbd2c7e690b8c
20代2人で0-2歳児9人の保育を行えるはずがありません。異常な状態ですが、恐らくは常態化していたのでしょう。
保育事故が発生した認可外保育施設では「保育士不足」が頻繁に指摘されています。今回も同様です。
ただ、世田谷区による立入調査では、こうした問題が指摘されていません。過去に指摘されたのは、健康診断の未実施や救命講習の未受講でした。
そもそも論として、どうしてこの認可外保育施設を利用したのでしょうか。キーワードは「世田谷区」「11月」「生後4カ月」です。
世田谷区は日本で最も保育所等へ入所しにくい自治体だと言われています。様々な数字やニュース報道等を見る限り、大阪市北区や天王寺区以上に入所しにくいと感じています。保育を必要とする共働き世帯が多く、保育所等が足りないと聞きます。
また、11月は保育所等へ入所するのが極めて困難な時期です。毎年4月に行われる一斉入所で定員の大半を充足し、その後は転出入や転所等に伴う若干の出入りがある程度です。認可外保育施設も同様です。
家庭では様々な保育施設を探したそうですが、見つからなかったそうです。この時期は仕方ありません。そこで空きがあったのが「託児ルームバンビーノ」でした。
両親によると、息子の真渚己(まさき)ちゃんは2023年7月生まれ。2023年11月から仕事に復帰するために、真渚己ちゃんを預けようと世田谷区の複数の認可保育所に申し込んだが、全て落選したという。
そこで認可外施設も含めて保育所を探したが、どこも枠がいっぱいだったという。ただ、区の認証を受けている認可外保育施設「託児ルームバンビーノ」で空きがあったため、11月末に申し込みをし、利用を開始したという。
https://news.yahoo.co.jp/articles/386e3052be6d361312932daac0aff7d16766295f
見つからなかった理由の一つには男児の年齢がありました。入所した11月は未だ生後4カ月でした。
生後3カ月の乳児を保育する保育施設は極めて限られています。保育所等での保育は原則として6カ月以降です。「3カ月の乳児は預かれません」と断られ、更に「満員です」と断られ続けたのでしょう。
3カ月児は本当に気を遣います。軽々と抱っこが出来ますが、オムツ交換やミルクに追われます。睡眠も細切れです。私自身も本当に消耗しました。
これ以上無いほどに厳しい制約条件の下、最後に辿り着いたのが「託児ルームバンビーノ」でした。