千葉市の認可外保育施設(市からの助成金有り)において、2歳女児に対して保育士が食事を無理矢理詰め込んだ強要の疑いで逮捕されました。
また、同僚の証言から余罪も浮かび上がっています。
問題の背後には保育士不足・認可保育所の新設に伴う認可外保育施設の経営問題も見え隠れしています。

8月20日 17時04分
無理に食事詰め込んだ疑い 保育士を逮捕

千葉市にある認可外の保育施設で、31歳の保育士が2歳の女の子に対し、頭をたたいて食事を無理やり口の中に詰め込んだなどとして、強要の疑いで逮捕され、警察は同じような虐待を繰り返していた疑いもあるとみて調べています。
保育士は調べに対し、容疑を一部否認しているということです。

逮捕されたのは、千葉市中央区にある認可外の保育施設「わんぱくキッズ」の保育士、松丸知美容疑者(31)です。
警察の調べによりますと、松丸保育士は先月、預かっている2歳の女の子に対し、頭をたたいたうえ、おかずをスプーンで無理やり口の中に詰め込み、「食べろっていってんだよ」と脅したなどとして、強要の疑いが持たれています。
女の子にけがはありませんでしたが、別の保育士から連絡を受けた女の子の祖母が警察に通報して明らかになったということです。
調べに対して、「夕食を食べようとせず、無理やり口に詰め込んだのは間違いないが、たたいたのは覚えていない」などと、容疑を一部否認しているということです。警察は、当時の同僚らの証言などから、松丸保育士が施設の中で同じような虐待を繰り返していた疑いもあるとみて調べています。

「保育ルーム」認定取り消し

事件を受けて千葉市は、逮捕された保育士が勤めていた認可外の保育施設について、市が独自に助成金を出す「保育ルーム」としての認定を取り消しました。
千葉市は、保育所の空きを待つ待機児童対策の一環として、保育士の数など一定の基準を満たしている認可外の保育施設を「保育ルーム」と認定し、助成金を出す独自の制度を設けていて、事件が起きた千葉市中央区の保育施設、「わんぱくキッズ」もこの認定を受けていました。
市の調査によりますと、保育施設の施設長も女の子に対する虐待を認識していたということです。
市の聞き取りに対して、施設長は「保育士が不足するなか、辞められたら困ると思い、強く注意できなかった」などと話しているということです。
事件を受けて千葉市は、この施設に対する「保育ルーム」の認定を20日付けで取り消しました。
千葉市こども未来部の片桐康之部長は「市民の信頼を裏切ってしまい非常に残念だ。再発防止を徹底していきたい」と話しています。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140820/k10013944481000.html

<保育士逮捕>退職恐れ虐待注意できず 背景に人手不足 千葉市の認可外施設

2014年08月21日 12:33

 保育士が、子どもの口に無理やり夕食を詰め込むなどした強要事件。施設の女性施設長が、千葉市の聞き取りに対し、保育士の虐待行為に気付きながら、退職を懸念して注意できなかったとの趣旨の説明をしていたことが、市への取材で分かった。事件の背景に、保育業界が抱える慢性的な人手不足という問題があったと言えそうだ。

→【本記】女児の口に夕食詰め込む 容疑の保育士逮捕 千葉市の認可外施設

 市こども未来部によると、7月17日に女児の保護者の通報を受け、同23日と8月1日に同施設へ立ち入り調査し、施設長と保育士の聞き取りを実施。2人とも通報内容を認めた上、施設長は注意しなかった理由を「保育士が不足しているので、辞められると困ると思った」などと説明したという。

 虐待発覚前の同施設の職員数は施設長含めて5人で、うち保育士の有資格者は3人。事態を受けて、7月末に施設長と容疑者以外の3人は退職していた。

 同施設は、近隣施設との競争激化による児童数減少にも悩まされていた。月平均の入所児童数は2011年度に14・4人だったが、本年度(4~7月)は6人と、定員(27人)の約2割にまで急減。本年度になって、近隣に認可保育所が3施設開所した影響だった。こうした中、保育士が減れば利用者にさらに敬遠されるとの懸念があったとみられる。

 市は4月に「待機児童ゼロ」達成を発表。今後は、保育の質の向上にも取り組む姿勢を打ち出していた矢先の事件に、こども未来部の片桐康之部長は「市民の信頼を損ねてしまい、非常に残念。全保育施設に虐待防止について注意喚起を行う。虐待の通報システムの構築も図りたい」と述べた。

http://www.chibanippo.co.jp/news/national/209909

本施設は認可外保育施設ですが、一定の基準を満たした「千葉市保育ルーム」として認定されており、千葉市からの助成を受けています(詳細はこちら)。
助成内容及びその金額は児童1人あたり月額44,000円(3歳未満)・14,000円(3歳以上)・健康診断費・賠償責任保険料・研修事業費等となっています。

確かに小さな子供に食事を食べさせるのは難しいです。
本人の好物や機嫌が良い場合は何も言わずに食べてくれるので助かるのですが、嫌がって食べなかったり食事で遊び始めたりすると厄介です。
報道されている様な保育士による虐待行為は論外ですが、子供に腹を立てる気持ちも理解出来ます(こうした行為を正当化する意図はありません)。

一方、こうした虐待を保育施設の施設長は認識していながらも、強く注意できなかったと報道されています。
ここには構造的な問題が隠れています。

1.保育士不足

児童を預かるには十分な数の保育士が必要不可欠です。
認可保育所・小規模保育施設・認可外保育施設等では保育士の配置基準が定められ、児童1人あたりに配置する保育士の最低人数が定められています。
これを下回った場合、基準を満たす保育士を配置する様に行政による指導等が行われ、それでも満たされなけれ何らかの制裁措置が行われている様子です。

ここ数年の間、都心部を中心に認可保育所の新設が相次いでいます。
となれば、保育士の獲得競争が激化していると容易に予想され、実際に保育士の有効求人倍率は非常に高くなっています(詳細はこちら)。
であれば、保育士が欠けた場合、欠員を補充するのは容易ではありません。
大規模な施設であれば魅力的な給与を提示する方法も考えられますが、小規模な施設、特に行政からの補助が手薄い認可外保育施設では難しい方法でしょう。

また、保育士の求人難という事態は採用する保育士の質の低下を招きかねません。
以前までは面接等によって十分な母数から選抜できていた一方、現在は応募数が減少してしまい、以前であれば不採用としていた応募者であっても採用せざるを得ないケースが生じていると推測されます。

どこの業界でも同じですが、採用人数の増加にはこうした問題が常につきまといます。

2.認可保育所の新設による競争激化

本施設は利用者の急減に悩まされていたそうです。
2011年度は定員の5割程度の利用者でしたが、今年度(4-7月)は2割程度にまで落ち込んでいました。
既に以前から厳しい経営環境にあったのではないでしょうか。

千葉日報の記事によると、大きな要因の一つとして認可保育所の新設が指摘されています。
指摘している認可保育所とは、中央区内で平成26年4月に新設された3保育所でしょう。
ただ、1つは東千葉駅の近く、2つは千葉駅の南方に設置されており、本施設は所在した千葉駅北側とは異なるエリアだと考えられます。
あくまで推測ですが、本施設と3つの新設保育所は競合関係ではなかったのではないでしょうか。

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直接的な影響が生じたと考えられるのが、本施設と同じ町内において平成21年4月に新設された認可保育所の存在です。
本施設は平成14年10月に開設されたので、そこから6年半後に新設された形になります。
以前からこの地域には市立保育所も開設されていました。
であれば、市立保育所・新設保育所へ入所できなかった場合や認可保育所と利用時間等が合わなかった場合に、当該認可外保育施設を検討する形になると推測されます。
制度上、認可保育所に対して認可外保育施設は競争劣位の関係に立ちます。
平成21年から利用者が減少し、平成23年(2011年)には定員の5割、平成26年(今年)には2割まで減少したのでしょう。

虐待を受けた女の子に怪我がなかったのが不幸中の幸いです。
再発を防止するにはどうしたら良いのでしょうか。