大阪市では保育料算定ミスが相次いで発生しています。その多くは「多子軽減措置」に関するものです。
今回は2件が北区で判明しました。
1 概要と事実経過
令和5年7月14日(金曜日)、西区役所保健福祉課から北区役所福祉課に対し、北区から転居され、現在、西区内の保育施設を利用する児童(以下、「児童A」という。)の保育料算定にあたり疑義があるため、北区内の保育施設を利用していた際の保育料の決定状況を確認したいとの問い合わせがありました。直ちに当区福祉課の担当職員が確認したところ、令和4年3月16日(水曜日)に児童Aの保育料を算定した際は、児童Aは第2子であることから、多子軽減措置の対象となり、保育料を半額負担として決定していましたが、令和4年3月22日(火曜日)に児童Aの保護者から、第1子が認可外保育施設に転園するための手続きが行われた際、児童Aが多子軽減措置の対象外となることから、保育料を再算定すべきでしたが失念し、保育料を半額負担のまま徴収していたことが判明しました。
また、この事案を受けて、令和5年7月14日(金曜日)から令和5年7月19日(水曜日)の間に、他に同様の事案がないかの確認を行った結果、本件以外に1件、区内の保育施設を利用する児童(以下、「児童B」という。)に対して、保育料を誤って半額負担として決定し、徴収していたことが判明しました。
2 影響額
合計2件 478,000円内訳
児童Aの保育料 447,150円(令和4年4月分~令和5年4月分)
児童Bの保育料 30,850円(令和5年4月分)https://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/kita/0000605510.html
児童Aが本来支払うべき保育料は、13か月で894,300円でした。本来の月額保育料は令和4年4月分から8月分が月額65,900円、9月分から令和5年4月分が月額70,600円でした。大阪市の0-2歳児保育料では最も高い階層に属します。
令和5年度 保育施設等の保育料のお知らせ
https://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/page/0000501253.html
これが半額として計算されていました。
1件目のミスが発覚したのは、大阪市北区から西区へ転居したのが切っ掛けでした。
転居先の西区で世帯所得等から保育料を算定したところ、これまで支払っていた保育料とは全く違う金額が現れました。北区に従前の保育料算定の根拠等を照会したところ、多子軽減措置を解除するのを忘れていたと判明しました。
第1子が保育所等を卒園する事によって第2子が多子軽減措置の対象から外れてしまうケースはままあるでしょう。自動的に除外する仕組みも導入されているかと思います。
しかし、今回は第1子が保育所等から認可外保育施設へ転所し、第2子はそのまま保育所等を利用するという珍しいケースでした。第1子の転所手続を行った際に、第2子が保育所等に継続在園するのを見落としていたのでしょう。
ただ、こうした事例は珍しいながら皆無ではありません。例えば3歳以降に英語教育を重視したプリスクール(認可外保育施設)へ転所する話を聞きます。
他にミスが無いか再確認したところ、案の定と言うべきか、もう1件が判明しました。他区でも同様のミスが起こっているでしょう。
問題は第1子の転所手続を行った際に、第2子の保育料再算定が自動的に行われなかったシステムにあります。人間が確認するのには限界があり、それ為に労力等を費やすのは不合理です。
判明後の対応にも懸念があります。
3 判明後の対応
事案発生判明後から令和5年7月19日(水曜日)にかけて、決定誤りをしていた当該児童A及び児童Bの保護者に電話により事実経過を説明のうえ、謝罪を行いました。引き続き事実経過について丁寧に説明を行うとともに、具体的な納付方法等につきまして調整を進めてまいります。4 発生原因
児童Aの事案については、児童Aのきょうだいが保育園の転園手続きを行った際、児童Aが引き続き多子軽減措置の対象に該当するかの確認が不十分だったこと、児童Bの事案については、児童Bの保育施設への入所が決定した際、児童Bのきょうだいが多子軽減対象施設に在籍しているかどうかの確認が不十分であったこと、またそれぞれの事案について、複数人でのチェックが不十分であったことが原因です。5 再発防止策
今回の事態を厳粛に受け止め、保育料を算定する際や保育園を転園、退園の手続きを行った際に、多子減免措置適用の有無を確認できるようにチェックシートを作成し、再発防止に努めるとともに、複数人でのチェックも徹底してまいります。https://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/kita/0000605510.html
未収分の保育料の納付方法は未だ定まっていません。それも当然です。全面的に北区役所に責任があるにも関わらず、唐突に約45万円の納付を求めているのです。たとえ一括で納付できる預貯金があっても、担当者の説明・謝罪及び合理的な支払方法を求めるでしょう。
再発防止措置は全く不十分です。「確認が不十分」「複数人でのチェックが不十分」「チェックシートを作成」という文言を読んで、頭が痛くなりました。同様のヒューマンエラーが発生するのは確実です。
必要なのは多子軽減措置を自動的に適用/解除するシステム改修です。1万人前後に達する多子軽減措置適用者を目視で適用/解除するのは無謀であり、ミスが生じるのは当然です。
このままだと、大阪市で実施が予定されている「第2子保育料無償化」も人間が目視して適用する事になりかねません。令和の悪夢です。