(7/31追記)
死亡したのは米沢市立第三中学校に所属する女子生徒でした。30日に記者会見及び臨時の保護者会が、31日には全校集会が開催されました。
7月28日、米沢市口田沢の国道121号で、部活動から帰宅途中の女子生徒が自転車の近くで倒れているのが見つかり、病院に運ばれたがその後死亡した。
女子生徒が通っていた市立第三中学校では、30日夕方、臨時の保護者会が開かれ、集まった約130人を前に、伊田吉春校長が女子生徒が亡くなった経緯について説明した。さらに、8月2日まで部活動を原則として自粛することや、今後より一層生徒の健康観察を徹底することなどが伝えられた。市の教育委員会によると、涙を流す人もいたという。また保護者からは、遠距離通学の生徒の「バス利用や携帯電話の所持を認めてほしい」との声があがったという。
https://news.yahoo.co.jp/articles/2bac9ee68bb5e67fbff13c4cba90f5801c9bda8e
保護者に動揺が走るのは当然です。亡くなった生徒が小さい頃から知っている保護者も少なくありません。
当日及びその前後の動きも明らかになりました。
日時 | 出来事 |
7月21日 | 夏休みが始まった |
7月25日~28日 | 女子生徒が所属する部活動は4日連続で活動した |
28日7時45分頃? | 女子生徒が自宅を自転車で出発した |
8時10分頃 | 女子生徒が登校した |
8時半 | 部活動を開始。20分~25分頃に10分ほど休憩し、水分も補給した。 |
部活動開始前に顧問は暑さ指数計測器を確認しなかった。が、気温の上昇が予想されたので、部活動を1時間早く打ち切ると判断した。 | |
9時55分頃 | 部活動を終えた(本来は11時までの予定だった) |
10時半頃 | 1人で自転車で帰路に就いた |
10時50分頃? | 米沢市口田沢の歩道で倒れた? |
11時5分頃 | 倒れているのを通行人が発見した |
11時7分 | 通行人が119番通報した |
21時49分 | 病院で死亡した。 |
30日 | 臨時保護者会が開催された |
31日 | 臨時全校集会が開催された |
米沢市教委の担当者は記者会見で「暑さ指数を測定していなかった。ガイドラインの周知徹底不足。」等と述べました。
会見で市教委の山口玲子教育指導部長は、生徒の特定につながるとして、部活動の具体的な内容は明らかにしなかったが、顧問や学校からの聞き取りで、部活動中は20~25分ごとに休憩を取り、生徒は水筒を持参して水分補給し、体調不良は見られなかったという。
一方で、市のガイドラインでは、体育館やエアコン未設置の教室などでは、熱中症の危険度を示す「暑さ指数」の計測器による状況把握が必要としている。山口部長は「今回は暑さ指数を測定する必要があったが、部活動の場所にはなかった。ガイドラインが周知徹底されていなかったのは教育委員会の責任で、指示も十分ではなかった」と述べた。
計測器は各校に配布され、同校には1台あったという。生徒が倒れた28日はほかの部活動もおこなわれており、市教委は数を増やすことも検討する。
市教委は30日、臨時の小中学校長会を開き、熱中症警戒アラートが発表されれば、生徒の体調が心配される活動はやめることなどを伝えた。同校では30日に保護者会を開催。31日は臨時の全校集会を開く。
同中学校も含め、暑さ指数を測定している部活動がどれだけあるのでしょうか。仮に暑さ指数で危険を示す値が表示されたら、部活動を中止にするのでしょうか。
恐らくは「熱中症警戒アラート」に注意を払っていたのでしょう。実は事故当日、米沢市に熱中症警戒アラートは出ていませんでした。山形県に熱中症警戒アラートが初めて発出されたのは29日でした。
山形県熱中症警戒アラート 第1号
2023年07月29日17時00分 環境省 気象庁発表
https://www.jma.go.jp/bosai/information/#area_type=offices&info_id=20230729073136_0_VPFT50_060000&format=text&area_code=060000
米沢市教委は「熱中症警戒アラートが発表されれば、生徒の体調が心配される活動はやめる」としました。が、女子生徒が倒れた当日は発表されていませんでした。仮に事故前にこうした方針が伝えられていても、事故は防げませんでした。
部活動の顧問が早めに切り上げたのは、どうやら顧問独自の判断でした。暑いからといって部活動を中止するという判断をしづらい中、思い切った判断を行ったと考えられます。
記者会見に関する様々な記事を読んで痛感したのは、「夏場の登下校時の体調管理が等閑にされている」という事実です。部活動に焦点が充てられていますが、女子生徒が倒れたのは帰宅途中でした。
学校から倒れた場所は約2.6キロ、標高は約46メートルも上っています。市街地は平坦であっても、山間部に差し掛かるときつい上り坂が続きます。日陰は殆どありません。激しい部活動を終え、ヘルメットやジャージを着用し、自転車を一生懸命漕いでいました。身体に負担が掛かるのは当然です。
部活動中の安全管理は原則として顧問の判断で行えます(中には他部や顧問団会議等での調整が必要な事項もありますが)。が、登下校時の対応は学校としての判断が必要となるのが専らでしょう。保護者会で指摘された携帯電話の所持やバスの利用は、顧問の一存では決定できません。
また、夏休みは大会が多い時期です。酷暑対策として部活動を休みやすくするには、大会の日程変更が不可欠です。
子供がお世話になっている中学校では、熱中症警戒アラートが発表された酷暑日でも当たり前の様に部活動を行っています。顧問の先生は「こうした暑さで運動をすべきではないが、大会が控えている以上、練習しないわけにはいかない。」と苦悩していました。
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恐れていた事態が起きてしまいました。山形県米沢市の中学1年生が部活動を終えて帰宅する途中に倒れ、亡くなりました。死因は熱中症でした。
山形県米沢市で28日、部活動後に自転車で帰宅途中に路上で倒れ、熱中症の疑いで意識不明の状態で搬送された市内の女子中学生(13)が死亡したことが29日、市への取材で分かった。
地元消防によると、28日午前11時5分頃、同市口田沢の路上で「人が倒れている」と付近の住民から119番があった。女子中学生は病院に搬送されたが、その後死亡が確認されたという。
山形地方気象台によると、28日の同市の最高気温は35・5度で、猛暑日となっていた。
https://news.yahoo.co.jp/articles/00610908885f75afafe86b4455a324bdc7a49041
消防などによりますと、きのう(28日)午前11時過ぎ、山形県米沢市の国道121号の歩道で、意識がない状態で倒れている女子中学生が見つかりました。女子中学生は熱中症の疑いで病院に運ばれましたが、きょう(29日)夕方までに死亡が確認されたということです。米沢市教育委員会によりますと、女子中学生はジャージ姿で、部活動の帰りだったということです。そばには自転車もありました。市教委では、あす(30日)午後に会見を開き、状況を説明するとしています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/801d2dde2b4b1d755f84c2c6c65dfe403bfc044f
地元消防などによると、28日午前11時ごろ、米沢市口田沢の歩道で「女子中学生が倒れている」と119番があった。倒れていたのは近くの中学校に通う生徒。熱中症のような症状で、意識不明の状態だった。部活動を終え帰宅途中とみられ、そばには自転車があったという。
https://news.yahoo.co.jp/articles/a1f89aaee5b48d4d7cb003eeee101ba9a58cc340
お悔やみ申し上げます。
報道映像等によると、女の子が倒れていたのは山形県米沢市口田沢104地先の国道121号の歩道でした。
近くにあるのは米沢市立第三中学校です。
両地点間の距離は約2.6キロ、道は上り坂です。自転車でしたら15分ほどで辿り着く場所です。
倒れた当日11時頃の気温は32.6度でした。その前後の時間帯は雲はなく、直射日光が降り注いでいました。また、熱中症警戒アラートは「厳重警戒」を示していました。
https://www.wbgt.env.go.jp/day_list.php?region=02&prefecture=35&point=35552&day=20230728
当日は部活動を何時から始めていたかは未だ報道されていません。なお、同中学校の「部活動の在り方に関する方針」には「長期休業日の活動時間は3時間程度」との旨が記載されています。
https://www.educ.yonezawa.yamagata.jp/3chu/keisaidata/10_r4bukatudounoarikata.pdf
発見されたのは11時頃でした。部活動は8時ないし8時半から始まり、10時もしくは10時半頃に終えた可能性が高いです。着替えることなく、ジャージ姿のままで自転車を漕いで帰宅しようとしました。
今夏は非常に暑いです。酷暑の下、部活動を行うのは決して適切ではないと感じています。中には炎天下で休む事も無く、長時間の活動を行っている部活動もあるでしょう。生徒が体調を崩し、病院で治療を受けたという話は無数にあります。
ただ、学校での部活動では原則として顧問が立ち会っています(会議等で抜ける事も少なくありませんが)。適切な休息を取る、水分や塩分を摂取する、気持ち悪くなったら早めに休むと言った指導が行えています(これも顧問によって差がありますが)。
もしも異変が起きても、顧問や周囲の生徒等がすぐに気づきます。適切な処置等を行えます。子供には「熱中症で倒れた生徒には、とにかく水を掛け続けなさい。同時に先生に連絡をする。」と伝えています。
しかし、帰宅途中は盲点です。日陰は少なく、水分補給に気が回らず、気持ち悪くなったと気付いた時には既に遅く、地域によっては周囲に誰もいません。倒れても誰も救護してくれません。
登下校中の熱中症対策に対し、学校は極めて後ろ向きです。お世話になっている中学校は帽子もダメ、ネッククーラーもダメ、日傘もダメ、自動車送迎もダメ、うちわもダメです。シャツを少し捲って風を送ると注意されます。事実上、登下校中の熱中症対策は封じられています。
帰り道は炎天下の上り坂です。しかも厚手のジャージ姿です。部活動を終えて帰宅する最中でも運動している様なものです。負荷が掛かります。
女の子が倒れていた国道は全く日陰がありません。帰宅した方向には小さな集落と福島県境を越える峠があります。真夏の農村部の国道なので、歩行者や自転車は殆ど行き交わないでしょう。自動車すらまばらです。倒れてから発見されるまでに一定の時間が掛かったでしょう。
学校における熱中症対策は「学校内」に限った話ではありません。「登下校中」も必要です。学校内における熱中症対策すら非常に甘く、登下校中は全く手つかずだと感じています。
今夏の暑さは異常です。このままでは次の犠牲者が出ます。「こどもまんなか社会」はどこにあるのでしょうか。