大阪で小中学生を育てている多くの家庭にとって、「高校授業料無償化」は気になる政策です。お世話になっている中学校で開催された進路説明会でも、これに関する説明や質疑に多くの時間が費やされたそうです。

一方で私学団体が反発を強めています。

【ニュース】2024~26年度に所得制限なしの高校授業料無償化を実施へ 大阪府

【ニュース】所得制限無しの授業料無償化に私立高校反発 キャップ制拡大が焦点 大阪府

大阪私立中学校高等学校連合会に加え、近畿私立中学高等学校連合会(近畿2府4県の私立高校・中学で構成)も反対を表明しました。

高校の授業料の「完全無償化」案 近畿の私立高校の団体が反対 「私学教育を踏みにじる考え方」
https://news.yahoo.co.jp/articles/7c46260ca497115c162d934bc7979a82d236cbde

各報道から反対する主な理由を引用します。

兵庫県の灘高校の和田孫博前校長は「例えば60万円を個別に各生徒に渡して、それをもって、どこの県の私学に通ってもそれは勝手だと思うんですけども、学校に対して、そういう形の“キャップ”をかけるというのは、私学教育を踏みにじる考え方だと思います」と話しました。

https://news.yahoo.co.jp/articles/3fcaa3b07716f09fdb02fe358817d3e505df71ba

(大阪私学連合会・辻本賢会長)
 「これは大阪だけではなく、日本全体の私学のありかた。近畿全体として賛成できかねる。(大阪府は)2府4県に対して説明には来るけど、協議ではない。授業料無償化にまっこうすべて反対しているわけではない。原理がゆがんでいるということを問題視しているということ。」

https://news.yahoo.co.jp/articles/2a540373d3f146a1566a305924c690868e558a09

 大阪私立中学校高等学校連合会・辻本賢会長
 「きっちりとした私学の方針に基づいての教育を提供することができなくなり、質の低下を呼ぶということが起きる」
https://news.yahoo.co.jp/articles/58eefda8c8419c17735de213aeb33b96a79e6617

【灘高校 和田孫博前校長】「(兵庫)県内の生徒が、ある意味で不公平で不利になるというようなことは、まず認められない」
https://news.yahoo.co.jp/articles/7c46260ca497115c162d934bc7979a82d236cbde

 現在、大阪連合会に加盟する97校のうち96校が参加。うち41校で上限を超え、負担額は計約9・5億円に上る。新制度に伴って対象は約4万人から約8万人に倍増し、負担は計約17億円に膨らむ見込みという。

https://news.yahoo.co.jp/articles/a5496504ab87dde9c4f596fe37b657f5b4ae4dfd

発言等を並べる事により、反対する理由が明確になります。主な理由は2点です。1点目は「授業料収入にキャップ(現行60万円)が課せられ、収入が減少する。」、2点目は「大阪府内と府外の生徒で授業料に差を設けざるを得ない事態が想定される。」です。

私学にとって1点目は大きな問題でしょう。授業料収入にキャップが課せられる事により、支出も見直さざるを得ません。なかには「私学の方針」「特色ある教育」に影響が生じる恐れもあります。

大阪府外の私学にとって大きな問題なのは2点目です。大阪府民の為に授業料を60万円に設定したら、他の府県から通学している生徒・保護者は白い目で見てしまうでしょう。他府県の保護者・生徒にメリットがあるならまだしも、全く見えていません。

分かりやすいのは、灘高校の和田先生が指摘する様に「各生徒へ60万円を補助し、授業料に充てる(実際には生徒の申請に基づいて大阪府が各校へ助成する)」という方法です。これならば私学が授業料を柔軟に設定でき、大阪府と他府県とのおかしな差も生じません。

ただ、保護者の支払余力が増す事により、授業料を引き上げる動きが強まるのは避けがたいです。出産育児一時金が引き下げられる度に医療機関へ支払い出産費用が値上げされたのと同じ構図です。

私学団体の発言をよく読むと、授業料無償化の拡大自体に反対しているわけではありません。私学の負担が増えず、大阪府以外の生徒に不利益が及ばない方法であれば合意できるとも示唆しています。

保護者目線としては、たとえ無償化が拡大されてもそれ以外の私費負担が重すぎます。入学金・諸会費・行事費・制服代・施設費・修学旅行代・部活動代等、公立高校の数倍の負担を求められます。そして子育て世帯は私立高校からの請求書を拒否できません。

私自身が私立学校で教育を受けた経験はありません。様々な項目に掲げられている金額の高さには溜息しか出ません。子供には何としてでも公立高校へ進学させます。