6月16日に「7月以降のファイザーワクチンは供給半減の見通し」とお伝えしました。
この話を重大視する方は極めて限られていました。しかし、やはり懸念は現実化しました。
大阪市は各医療機関での個別接種に利用するファイザー製ワクチンの供給につき、7月5日以降は全ての要求に応じられないと公表しました。
新型コロナウイルスのワクチン接種をめぐり、大阪市は30日、診療所などの医療機関で行っている個別接種向けワクチンの配送を一部制限すると発表した。医療機関からの要求量の増加と、国からの十分な供給が見通せないことが理由だという。
市によると、個別接種で使っている米ファイザー社製ワクチンの7月5日以降の配送分について、医療機関の要求量に応じて制限をかける。5日の週の要求量は約25万2千回分だが、配送量は6月28日の週の約19万2千回分程度に抑えるという。
国から同市への供給量については、6月下旬~7月上旬の2週間分は約37万回分だったが、7月上旬~同月中旬は約18万回分に減るという。
プレスリリースも掲載されています(細かい数字等は記者ブリーフィングのみで説明しているのでしょう)。
報道発表資料 新型コロナワクチン(ファイザー社製)の供給量について
https://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/kenko/0000539409.html
朝日新聞が指摘する「6月下旬~7月上旬」とは厚労省スケジュールでは第8クール、「7月上旬~同月中旬」は第9クールに相当します。
住民への接種に向けた供給見通し(配送時期)
【第8クール】 6/21の週・6/28の週 16,000 箱
【第9クール】 7/5の週・7/12の週 8,000 箱 + 調整枠
【第10クール】7/19の週・7/26の週 8,000 箱 + 調整枠https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_supply.html
これは全国合計での供給量です。既に2週間前に発表されているスケジュールでした。これを把握していたら、第9クール以降の供給は難しいと認識できました。
大阪市を含めた多くの自治体は、「供給が絞られるスケジュールだけど、大臣も「どんどん打て」と言ってるから大丈夫だろう」と楽観視していたのでしょう。
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(追記)
第11クール・第12クールは第10クールと概ね同量が配布されるそうです。ワクチン不足はまだまだ続きそうですね。
【主に自治体の皆様へ】
ファイザー社製ワクチンの配分の詳細について、資料のとおりご説明します。 pic.twitter.com/4dIcw3m86p— 首相官邸(新型コロナワクチン情報) (@kantei_vaccine) July 2, 2021
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医療機関は板挟みです。キャンセルされたら、患者は怒ります。当然です。
大阪市都島区のごとう内科クリニックの後藤院長は「通知を受け取った、どの医師も憤りを感じている。国はこれまで毎日毎日、接種を宣伝していて我々も接種を進めてきたのに、非常に残念に思う。今になって供給量が足りないというのは行政側のミス。クリニックのなかには、直近で高齢者の2回目の接種を控えているところもある。2回目の接種は死守しなければならないので、どのように対応すべきか非常に悩んでいるようだ」。
また別のクリニックの医師は「ワクチンが足りなくなった分は、医療機関からキャンセルの連絡をいれてくださいと保健所から言われた。誰をキャンセルにするか簡単には選べないし、患者との信頼関係が崩れかねない事態になっている」と困惑した様子で話しました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/93e72339f2f73c7f5c140c4945383b3e463b3bde
国や大阪市の供給スケジュールを時系列に並べたところ、より深刻な事態が浮かび上がってきました。7月12日からの週の供給が全く見通せません。
クール | 週 | 大阪府への供給量 | 大阪市への供給量 | 大阪市内医療機関への供給量 |
第8クール | 6/21~ | 1,097箱 | 約37万回 | ? |
6/28~ | 約19万2千回分 | |||
第9クール | 7/5~ | 724箱 | 約18万回分 | 約19万2千回分(25万回要求) |
7/12~ | ? | |||
第10クール(7/2追記) | 7/19~8/1 | 528箱 | ? |
大阪市が国から配送されたワクチンの手元在庫をどれだけ積み上げているかは分かりません。
ただ、国からの供給量が一時的にも半減される見通しなので、大阪市から各医療機関へ供給するワクチンも半減されると考えるのが自然です。
7月5日からの週は要求量の7割(約19万2千回分)を配送するとされていますが、7月12日からの週は更に減少する可能性が強いです。
モデルナワクチンを使用する職域接種の新規受付も終了する見通しですね。契約した全てのモデルナワクチンを供給するメドが早々に立ってしまい、これ以上の職域接種に対応できないそうです。
また、モデルナを使用する予定だった一部の大規模接種会場でファイザーワクチンを使用するという話も出ています。仮にその通りであれば、自治体の個別接種用に供給されるファイザーワクチンは更に減少します。
これによって大きな影響を受けるのが、現役世代の接種です。供給が不安定であれば、現役世代から多くの接種予約を受け付けるのは困難でしょう。先延ばし先延ばしされ、1回目の接種が9月以降になりかねません。
特に高齢者と現役世代が違うのは、接種日時の制約です。多くの高齢者はいつでも接種できるでしょうが、現役世代は仕事や家事・育児の合間を見て接種する事になります。
また、接種後に副反応が発生する恐れもあるので、接種翌日の予定はできる限り空けておきたいです。
となると、接種予約は金曜日や土曜日に集中しかねません。こうした曜日に予約が取れず、ずるずると先送りする人が続出してしまうでしょう。
ここが遅れてしまうと、12歳以上の子供の接種に影響が出ます。夏休み中は到底無理となり、10月や11月のどこかで接種する事になってしまいそうです。
11歳以下の接種は更に遅れます。学校や保育所等が正常化するのは来年度以降ですね。確定的です。
こうした動きは大阪市に留まらず、全国各地で発生します。一時的には接種スケジュールを楽観視できましたが、やっぱり年末まで掛かりそうです。
(追記)
ファイザーワクチンが底をつきそうです。7月12日の週を待たずに新規予約を中止すると名言しました。
松井市長は、1日の記者会見で、「国から示されている供給量が現状の接種体制に追いついていない状況だ。ワクチンは2度接種しないと効果が薄まるので、2度目の接種を受ける人の分を確保するため、近く、集団、個別ともに新たな予約を1度止めたい」と述べ、新規の予約の受け付けを、近く停止する考えを示しました。
また、同じく、ファイザーのワクチンを使用している、中央区の「城見ホール」の接種会場についても、近く、受け付けを停止するとしています。松井市長は、「国から来月の供給量が示されたところで、確実な量にあわせて接種体制を見直したい」と述べました。
一方、大阪市が、住之江区の「インテックス大阪」に設置している大規模接種会場については、モデルナのワクチンを使用しているため、供給に問題はないとして、これまでどおり予約を受け付けることにしています。
毎日新聞はより踏み込んでいます。「既に受け付けた1回目の接種予約をも中止する可能性がある」としています。
大阪市の松井一郎市長は1日、予約が済んでいる1回目の接種を近く停止する可能性があると表明した。対象は、かかりつけ医で実施する個別接種と、各区の施設などで実施する集団接種。新規の予約受け付けも停止する方針で、国から供給計画が示されるまで再開時期を示せないという。
国からの十分な供給が見通せない中、1回接種した市民の2回目分を確保するため。停止されるのは、1回目の接種希望者の予約で、2回目接種の予約は引き続き受け付ける。
松井市長は記者会見で、「8月の見通しが立たない。供給される量に応じた形で接種態勢を見直したい」と話した。予約をいつ停止するかについては、2日の会議で決める。
大阪市内の接種状況は、希望する高齢者が概ね1回目の接種を終えた段階です。2回目の接種を待っているのは殆どが高齢者でしょう。
となると、大阪市が最優先とするのは「高齢者の2回目接種」です。これ以外は集団も個別も一時的に中止する可能性が濃厚です。
やはり現役世代の接種は先延ばしにされますね。再開されるのは、国からファイザーワクチンの供給が明らかになる頃でしょう。
7月5日からは60歳から64歳以下の接種受付が開始される予定でした。しかし、明日あたりにこれを無期延期する発表が行われる見通しです。
それにしても、高齢者の2回目接種だけはしっかり終えられるタイミングでワクチンを供給停止するとは、色々と邪推してしまいます。
(7/2追記)
第10クール(7/19以降)の供給スケジュールを上記表に追加しました。概ね希望量が供給されていた第8クールと比べ、供給量は半減する見通しです。
国の自治体へのワクチン分配量が急激に減る。なぜ、もっと事前に予告しないのか。
7月いっぱいで高齢者の接種をと音頭をとっておいて、この仕打ちはひどすぎる。 pic.twitter.com/DmszJDx9ji— 尾辻かな子 (@otsujikanako) July 1, 2021
一方、接種会場・医療機関や接種対象者は増加の一途を辿っています。
このままでは多くの接種会場・医療機関で十分なワクチンが供給されず、方や接種希望者がどこにも予約できずに右往左往するのは避けられないでしょう。
短期的には十分なワクチンが入手できないのは明らかです。自治体は供給スケジュールを公表すると共に、「希望者の殆どはすぐに予約できない」という旨を発表すべきでしょう。
接種券が手元に届いても、予約できないのはメンタルに堪えます。政府が(実質的に)接種券の発送前倒しを求めた矢先にこの始末、お粗末としか言い様がありません。
(7/2更に追記)
集団接種は12日以降の予約を休止します。
大阪・松井市長 ワクチン集団接種 12日以降の予約休止を発表
https://news.yahoo.co.jp/articles/152d3a437a6ef0540f5b7705f39343c3dc1579e3
12日以降に新たに接種可能だったのは60歳から64歳でした。やはりここを先延ばしとし、65歳以上の接種に万全を記す事となりました。
(7/2更に更に追記)
接種を中止する範囲がようやく明らかになりました。
これについて、松井市長は2日、記者団に対し、1回目の接種を今月12日から一時的に停止することを発表しました。
各医療機関が、今月12日以降で受け付けた1回目の接種の予約については、来月以降にずらすよう求めることにしています。
また、同じくファイザーのワクチンを使用している中央区の「城見ホール」の接種会場では、今月17日から1回目の接種を停止します。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210702/k10013115301000.html
こういう内容ですね。
・区毎の集団接種は12日以降の1回目接種を停止(強制キャンセル?)
・医療機関での個別接種は12日以降の1回目接種を来月以降へ変更を要請(医療機関の判断で強制キャンセルも?)
・大阪城ホールでの集団接種は17日以降の1回目接種を停止
・モデルナを利用するインテックス大阪は変更なし
希望する高齢者の殆どは既に1回目接種を終えています。この影響を被るのは64歳以下ですね。7月中の接種は難しくなりました。
(7/2 22時追記)
大阪市のプレスリリースが掲載されていました。
https://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/kenko/0000539588.html
一部の例外を除いて、12日以降は1回目の接種が全面的に中止となります。
また、明日からは60歳以上・高齢者施設等の従事者・基礎疾患がある方の予約や接種が急遽可能となりました。時間が書いてありませんが、他の予約と合わせると午前9時からでしょうか。
本来は12日からの予定でしたが、一部の集団接種会場等では3日の以降の枠が空いていました。勿体無いので、60歳以上等に開放したのでしょう。
ただ、空いている枠は一部です。ここに数十万人が殺到します。枠は一瞬で蒸発し、予約できなかった方の怨嗟の声が上がるのは避けられません。