新型コロナウイルス感染症に対し、大阪府は6月21日に緊急事態宣言からまん延防止等重点措置へ移行する方向で検討を進めています。
大きな焦点となっているのは、大型商業施設への休業要請や飲食店への時短営業・酒類提供自粛要請(禁酒令)です。
具体的な原案が判明しました。ワクチン接種率と病床利用率を組み合わせた指標を基準として、様々な要請を行うそうです。
ここで最も重要なのは「少なくとも7月末までは休業や時短要請、禁酒令を継続する可能性がある」という部分です。
ワクチン接種状況に応じ時短・休業を緩和 大阪府が原案
大阪府がまとめた新型コロナウイルス対策の緩和基準の原案が11日、判明した。65歳以上の府民へのワクチン接種完了前でも、重症病床使用率が20%以下になれば飲食店などへの時短営業の要請は午後9時までにするか解除する。規制をなくすのは接種率が40%を超え、病床使用率が20%以下になった段階とする。専門家の意見も聞き、検討を進めた上で決定する。
原案では、ワクチン接種の進捗(しんちょく)と重症病床使用率に応じて、第1~4フェーズを設定し、フェーズごとの対策内容を定めている。65歳以上への接種が終わる予定の7月末までは、病床使用率が50%程度を上回る場合を「第1フェーズ」とし、飲食店などには酒類提供を自粛した上で午後8時までの時短営業を求める。百貨店などの大規模施設にも休業・時短営業の要請を続ける。
病床使用率が20%程度~50%以下の「第2フェーズ」では、大規模施設は時短営業か解除。病床使用率が20%以下の「第3フェーズ」で、飲食店は午後9時までの時短営業か解除とし、状況によって酒類提供の自粛を求める。
8月以降は府民へのワクチン接種率が40%に達するまで、病床使用率に応じて第2、3フェーズなどの対策をとる。接種率が40%となるのは9月となる可能性があると想定。接種率が40%超、病床使用率が20%以下になった「第4フェーズ」で、マスク着用や換気徹底など基本的な感染防止対策をとってもらった上で通常営業を再開する。
府民への呼びかけ、大学などの授業や部活動、テレワーク、イベントについても、フェーズごとの対策を設定。対策の段階的な緩和・解除にあたっては、ワクチン接種の効果や病床の逼迫(ひっぱく)状況、変異株の影響などについて専門家から意見を聞くことを条件とする。
接種率(=時期)と重症病床使用率を組み合わせた基準です。文章だと少し掴みにくいので、表形式に落とし込んでみました。
基準 | 大規模施設 | 飲食店 | |
第1フェーズ | 高齢者接種中&病床利用率50%以上 | 休業&時短 | 禁酒&20時まで |
第2フェーズ | 高齢者接種中&病床使用率20%~50% | 時短or解除 | 禁酒&20時まで |
第3フェーズ | ①接種率40%以下&病床使用率20%以下 ②接種率40%以上&病床使用率20%以上 | 時短or解除 | 21時までor解除、禁酒? |
第4フェーズ | 接種率40%以上&病床使用率20%以下 | 通常営業 | 通常営業(マスク会食) |
高齢者の接種は概ね7月末までに完了する見通しです。また、6月12日時点での重症病床使用率は63.8%です。一時期より劇的に低下しましたが、依然として高い水準です。
これまでの様々な経緯や知見等に照らすと、6月21日に重症病床利用率が20%を下回るのは極めて困難でしょう。50%を切るのが精一杯だと感じています。
となると、6月21日からは「第2フェーズ」に該当する可能性が濃厚です。
大規模施設は時短もしくは時短解除、そして飲食店は20時までの営業時短かつ禁酒令が継続します。
緊急事態宣言が解除されても禁酒令が継続するのは、酒類を提供する飲食店にとっては死活問題でしょう。
私の身の回りでも、禁酒令が始まった4月25日から臨時休業を行っている飲食店が少なくありません。
知人の飲食店経営者は「禁酒令はきっと5月末まで延びると思う」と話していましたが、まさか6月下旬以降も延長されるとは誰も考えていなかったでしょう。
一方、飲食店(特に酒類や接待を伴う店舗)が主な感染源であるのは明白です。家庭や高齢者施設が感染源となるケースの方が多いと指摘する方もいますが、これらは生活の場です。
実は吉村知事は5月下旬の時点でこうした措置を示唆していました。
大阪の飲食店時短解除は7月末!?吉村知事が目安「高齢者ワクチン接種が終わるまで」
記者団から、府内の飲食店への時短要請の期限を問われ「高齢者へのワクチン接種が終わるのが、ひとつの時期の目安になると思っている」と述べ、緊急事態宣言が解除されても時短要請を継続する考えを明らかにした。
https://news.yahoo.co.jp/articles/bc3e21e5dd0fb553a1a7d7df4038a98955658b6a
この基準には問題点もあります。
たとえば飲食店での感染者の大半は20代~50代であるのに対し、規制基準を高齢者接種としている点です。両者に直接の関連はありません。
規制基準は端的に現役世代の接種率(及び病床使用率)とするのが分かりやすいのではないでしょうか。市中で感染を伝播しているのは現役世代が中心です。これを指標と用いるべきです。
現役世代の接種が行われていない時期は強い要請を、接種が進むにつれて要請を緩和するとした考え方ですね。ストレートに理解できます。
となると、現役世代の接種が進むまでは飲食店の営業に何らかの要請が行われるのは避けられないでしょう。厳しい内容ですが、大阪における第4波の惨状を目の当たりにした経験からはやむを得ないと感じます。
要請が効果を挙げるには、十分な協力金を迅速に支給するのが不可欠です。しかしながら大阪では支給が大幅に遅延していると聞きます。自粛破りが行われるのも仕方ないでしょう(気持ちは分かります)。
大阪の飲食店が自由に営業できるのは、9月~10月以降になりそうです。まだまだ先ですが、もう3か月の辛抱です。