東日本大震災や様々な自然災害の事例集に共通しているのは、「園児や児童生徒の保護者への引き渡しの難しさ」でした。
平日日中に大規模な自然災害が発生すると、真っ先に「学校や保育所はこれで休業だなあ。電話が無くても迎えに行かないと。」との考えが頭を過ぎります。
しかし、東日本大震災ではお迎えに行ったが為の悲劇が発生しました。代表例は大槌保育園ですね。
津波襲来直前に保護者へ引き渡した園児が被災し、9人が死亡・行方不明となりました。
園児を親元へ、「その後」は誰も考えていなかった…引き渡し直後に津波[記憶]
https://www.yomiuri.co.jp/shinsai311/feature/20210226-OYT1T50274/
反対のケースもあります。引き渡した児童の大半が助かった反面、学校から集団で避難しようとした児童や教職員多数が死亡した石巻市立大川小学校です。
宮城県石巻市立大川小学校の児童らは、地震の発生から約50分後まで校庭で待機しました。そして学校側の指示で、近くの「三角地帯」と呼ばれる橋のたもとに避難に向かいましたが、その間に、津波に巻き込まれたとみられています。
すぐに迎えに行くか行かないか、非常に難しい判断となります。
多くの保護者が五月雨式に迎えに行くと、児童の引き渡しに時間が取られてしまうという問題もあります。全体の行動の遅れに繋がり、時期に適した避難行動が難しくなります。
また、「そもそもすぐに迎えにいけない」という問題もあります。
2018年6月に発生した大阪北部地震では、大阪を中心とした交通網が悉く遮断されました。帰宅したくても帰宅できない人が続出しました。
地下鉄や私鉄の多くは夜遅くまで再開しませんでした。夜遅くに新淀川大橋を歩いて越えて、北摂方面へ向かう人の波が何度も放送されていました。
東日本大震災でも都内から帰宅できず、学校等で1泊した児童が相次ぎました。
これらの影響で,浦安,市川,船橋市等では保護者が帰宅困難者となったため,小学校等で児童の引き渡しができず,学校で宿泊を余儀なくされた児童が公立小学校41校で約100名出た。
https://www.pref.chiba.lg.jp/kyouiku/anzen/kodomo-anzen/documents/04-2kitakukonnan.pdf
子供が大阪市立学校へ通っている保護者の多くの勤務地は、大阪市や近隣自治体でしょう。もしも公共交通機関が壊滅的な影響を受けたとしても、徒歩で帰宅・お迎えできる方が専らでしょう。
しかし大阪から離れた場所で働いていたり、遠方から大阪市内へ通勤していると、その日の間に迎えに行くのが難しいケースも発生します。
更には大きな地震で淀川や大和川に架かる橋梁や生駒山を貫くトンネルが被害を受けた場合、大阪市が陸の孤島と化す危険性もあります。
となると、むしろ「保護者が迎えに行くまでの間、学校等で過ごせる準備があるか」が重要となるでしょう。
教職員や児童生徒が数日を過ごせるだけの飲食物・布団・生活用品等は学校に備えられているでしょうか。
お世話になっている学校では備蓄物資が山積みされていますが、保育所では見聞きしません。オムツ・着替え・布団はありますが、食料(特に乳児用)が心配ですね。
子供が学校等で安心して過ごしていると分かれば、親が最優先で迎えに行く必要がなくなります。自分の身の安全を確保した上で行動できます。助かります。
保護者がどう行動するのが望ましいかは、学校等の立地・発災の種類や時間帯によっても異なるでしょう。
ただ、学校等がケースバイケースで判断してしまうと、その判断に親が振り回されます。非常時に判断を待っている余裕はありません。
保護者目線としては「発災時は学校等が責任を持って児童を保護するので、保護者は安全を確保してから迎えに来て下さい。夜を越しても預かります。準備は万端です。」と言い切って頂くのが一番ですね。