安全第一を旨とすべき学校教育において、余りに杜撰です。右手親指の腱を損傷するとは大事故です。避けられなかったのでしょうか。

 神戸市立こうべ小学校(同市中央区)で2月中旬以降、彫刻刀や小刀を使う図工の授業で5年生10人が相次いで手などをけがしたことが分かった。うち1人は右手親指のけんを縫合する手術を受け、重大事故として市教育委員会に報告した。

 市教委などによると、ろうの立体を削る課題で2月15日に4人、同16日に2人、3月8日に4人がけがをした。手術を受けた児童は今後リハビリを始める予定といい、ほかにも1人が手を数針縫った。

 同小は、彫刻刀などを使う授業では安全のため図工の教員だけでなく、担任も補助で入ることにしていたが、手術を受けた児童がけがをしたときは不在だったという。保護者の一人は「学校として安全意識が足りないのでは」と憤った。

 市教委によると、過去に図工の授業中、彫刻刀などでけがをした児童数の集計データはないという。ただ、負傷件数が多いとして、原因究明と再発防止を徹底するよう同小に指導した。中田宗義校長は「けがをした児童の一日も早い回復を祈っている。指導方法を一から見直し、反省しなければならない」と話した。

https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202103/0014147137.shtml

図工の授業において事故が相次いだのは、神戸市立こうべ小学校です。神戸市中心部を学区としています。海岸沿いの地域まで学区とは、相当な広さですね。

以前に学校へ授業参観へ出掛けた際、各家庭での購入を求めている学用品コーナーに彫刻刀が置かれていました。サクラクレパス彫刻刀のOEM製品でした。派手な飾りがあったのを覚えています。

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私の子供時代と比べると、最近の彫刻刀は安全対策が進化していますね。スライド式の安全カバーや滑りにくいグリップが備えられていました。

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あくまで推測となりますが、神戸市立こうべ小学校で事故が多発した一因は「ろうの立体」を削る課題にあった様に感じています。

小学校で彫刻刀を利用する授業と言えば、真っ先に木版画を思い出しました。木の板を彫刻刀で削り、炭などを付けて紙に転写する物です。

彫刻刀を持たない手は手前側に置き、彫刻刀は手前から奥へと動かして木版を削り出します。刃先は身体や指がある方向へ向かないので、危険性は少ないでしょう。

しかし、立体のろうを削るのは別物です。そもそも立体を削るには、様々な場所へ手を置き、彫刻刀の向きも変えて削り出す必要があるでしょう。

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更に大きな問題は、素材たる「ろう」です。木版より遙かに滑りやすい素材です。刃先が滑ったり、滑らない様に力を入れた刃先が勢いよく滑る事は容易に想像できます。

インターネット上に掲載されている授業例や指導例は「木版画」ばかりです。

5年生は、「彫り進み木版画」に挑戦していました。
https://weblog.city.hamamatsu-szo.ed.jp/inui-e/2021/02/02057/

第5学年2組 図画工作学習導指案
子どもたちは低学年で紙版画(凸版)を経験し、紙をいろいろな形に切り、貼り合わせ刷ることで、表現する技法の範囲を広げている。4年生になり、単色刷りの木版画を経験し、版を彫り上げる活動の楽しさや、彫刻刀の使い方にも触れている。そして今回学習する木版画(凸版)の、一版多色刷りは白黒の木版画とは違い、色をつけることで絵の表現の幅を広げることができる。

http://www.keins.city.kawasaki.jp/9/ke9007/jugyou/e%20rittai/H27/5nen%20e%20hottesutte.pdf

どうして図工の授業で「ろうの立体」を削ろうとしたのでしょうか。木版画は教育目的に合致しなかったのでしょうか。