大阪市では2021年保育所等一斉入所が概ね終了しました。先週金曜日の2月26日に発送され、多くの地域では翌27日に到着しています(一部地域を除く)。

入所調整はシステムへ入力された数字を基にして客観的に行われます。

しかし、このシステムに不具合があったらどうなるのでしょうか。入所できた筈の児童が入所できず、玉突き状に誤った調整が行われる危険があります。

こうした大問題が生じてしまったのが千葉県浦安市です。東京ディズニーリゾートがある、人口16.4万人の自治体です。

浦安市における保育園の2021年4月入園選考で誤りが発生した。選考作業を自動化するシステムの不具合が原因だ。新機能を追加した際のテスト漏れで見つけられなかった。調査の結果、19人の点数に誤りがあり、35人の判定が間違っていたことが発覚。改修の時間的余裕はなく、人手ですべて計算し直して対処した。

子育て世代にとって、子どもを保育園に入れるための活動、いわゆる「保活」の重要度は高い。保育園に入れるかどうかで生活に大きな影響を及ぼすからだ。子どもが保育園に入れず待機児童となれば、親が育児休暇から職場に復帰したり、新たに職を得たりといったことができず、家庭の経済状況は悪化する。厚生労働省の発表によると、全国の待機児童数は2020年4月1日時点で1万2439人に上る。

各自治体は定員に空きがあれば月ごとに入園の募集を実施しているが、募集人数が最も多い4月入園については前年11月ごろに受け付けを始める。「調整」と呼ばれる選考を経て1月ごろに結果を発表することが多い。

千葉県浦安市も同様のスケジュールで進めていたが、2021年4月入園の選考で誤りが発生した。選考作業を自動化するシステムの不具合が原因だ。浦安市は2021年1月15日、保育園やこども園への入園を希望する920人の保護者に選考結果(調整結果)を通知していたが、人手で選考のやり直しを余儀なくされた。35人の結果が変わり、中には内定から一転、落選したケースもあった。(以下省略)

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01157/022500029/

保育園入所調整に誤り システム不具合、入園先変更の可能性も 千葉・浦安市

 千葉県浦安市は20日、4月からの市内保育園への入園者を調整するシステムに不具合があり、一度通知した決定結果を再調整すると明らかにした。入園を申請した保護者は920人で、25日をめどに再度結果を通知する。一部入園先が変更になる可能性があるという。

 市によると、保育園などの入園先は入園を希望する保育園を基に、家庭状況などをシステムで数値化して割り当てている。今回、このシステムに不具合があり、正常に割り振られていなかった。

 希望する園の空き状況を市のホームページで確認した保護者からの問い合わせで発覚。現在、市で確認作業を進めているが、今月15日に通知した入園先が一部変更になる可能性がある。市は「心よりおわび申し上げる。入所受け付け事務の体制強化と事務の執行の厳格化に努める」としている。

https://www.chibanippo.co.jp/news/national/757937

一連の出来事を時系列に並べました。

日付項目
1月15日浦安市が2021年度一斉入所の結果を920人へ発送
1月16日多くの家庭に結果が到着
1月18日希望する保育所の空き状況を確認した保護者から「結果が間違っているのではないか」と問い合わせ
1月18日~20日入所調整用のシステムに誤りがあったと判明
1月20日少なくとも19人の点数が誤っており、調整を再実施すると発表
1月25日再調整した結果を発送

実は浦安市は2021年4月(令和3年)の一斉入所調整において、利用調整基準を大きく変更しています。

令和3年度保育園・認定こども園のご案内
http://www.city.urayasu.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/030/310/03goannai2.pdf

令和2年度保育園・認定こども園のご案内
http://www.city.urayasu.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/027/448/0130.pdf

例えば令和2年度の入所調整では居宅内労働と居宅外労働に点数差を付けていましたが、令和3年度からは「就労」に一本化されました。

また、令和2年度までは単身赴任加点の対象となる地域から23区内等が除外されていましたが、令和3年度からが撤廃されています。

この他にも変更された箇所は散見されます。部分改正ではなく「大幅な改正」が行われました。

これに合わせてシステムの改修も迫られます。加点項目や点数を修正し、意図した通りの点数が算出されるかを検証する必要があります。しかし検証が甘く、設定ミスを見逃してしまいました。

問題が発覚したのは保護者からの問い合わせでした。

ここからはあくまで推測となりますが、発送直後に問い合わせを行うのは希望した保育所等へ入所できなかった方でしょう。

入所できる筈と見込んでいたのに入所できなければ、おかしいと思うのは不思議ではありません。電話で理由を訊ねるのは自然です。

浦安市の担当者へ「私は××点だった筈ですが、入所するには何点必要だったのでしょうか?」と質問したところ、「自主申告された点数とシステム上の点数が食い違っている」という事実が発覚したのでしょうか。

ここで「自主申告された点数がおかしい」と門前払いするのではなく、「少しお待ち下さい」として点数を手計算したのでしょう。その結果、システム上の点数が間違っていると判明し、全ての調整を行い直したと推測しています。

システム改修に際して十分なテストを行わなかったのは大問題です。

一方、結果に疑問を感じて問い合わせた保護者、そして真摯に対応した担当者や担当課は誤った入所調整を見抜きました。

保育所等の入所調整をシステム化するのは膨大な作業が必要です。児童毎の状況を点数化し、点数順に入所枠へ当てはめていかなければなりません。特定の保育所等でのみ点数が加算される児童等、例外処理も発生します。

また、社会からの様々な要請を受け、毎年の様に調整基準は変更されます。令和3年度入所については、テレワークの普及によって居宅内外の点数差を撤廃した自治体が多いと聞きます。浦安市もその一つです。

こうした作業を続けている最中に修正ミスが発生し、見逃してしまうケースが発生する事もあるでしょう。

不具合は他の自治体でも発生しているかもしれません。結果に疑問を感じたら、担当課へ問い合わせるのが大切ですね。誰も可能性を指摘しなかったら、そのまま見過ごされてしまいます。