父親の育児休業取得が推し進められています。これに関連し、新たな問題が浮上しています。「父母が同時に育児休業を取得した事による退園処分」です。

夫婦で育休1カ月取ったら保育園退園?…福岡・春日市からの通知に困惑

 福岡県春日市では、親1人が育児休業を取得した場合、生まれた子が1歳になる年度末まで在園児は保育園を継続利用できるものの、両親が同時取得した場合は退園させる運用だ。3月の市議会。実際に短期間のみ同時取得した世帯に、市側が退園を求めたケースが取り上げられた。どのような経緯だったのか―。

 3月13日にあった一般質問での答弁などによると、昨年11月から約1カ月間、市内の夫婦が第2子誕生を受け、育休を同時取得。夫が復職した後、別の書類を提出した際、市側が同時取得を把握したという。この時点では保育の必要性が生じていたが、2月に「退園通知を出す」と夫婦に連絡があった。

 夫婦は驚いて市役所を訪ね、説明や部内での再協議を求めたが、結論は変わらず。夫婦が市議や弁護士に相談したり市長に手紙を書いたりした末に、市は退園を取り消した。市担当部長は市議会で「顧問弁護士に相談し、『保育が必要になった現状を考えると法的に難しいのでは』という見解だった」と説明。「個別検討事案として対応を改めた」と、あくまで“特別扱い”との考えだ。(以下省略)

https://www.nishinippon.co.jp/item/n/1079090/

福岡県春日市は福岡市の南にある街です。福岡都市圏、そして福岡市のベッドタウンに位置しています。

特に強調すべきなのは、新幹線博多南駅の存在でしょう。山陽新幹線の車両基地が春日市内にあるのを活かし、基地に併設する新幹線駅を設置したのです。博多南駅から博多駅までは新幹線で1駅、わずか○分しか掛かりません。

その他にもJR在来線や西鉄も利用出来る自治体です。極めて利便性が高い街と言えます。

春日市での保育所等の利用申込は、かすが保育ガイドに詳しく掲載されています。

同ガイドでは「育児休業」という文言が計34回も用いられています。育児休業取得中の継続利用期間、職場復帰時の留意点、復帰加点、調整指数などです。「父母が同時に育児休業を取得した場合の取扱い」については、全く記載されていません。

父母同時取得に関する記載があるのは保育所の入所等に関する要領です。

ここに「保護者のうち1人が育児休業等を取得する場合に限り(中略)引き続き教育・保育給付認定を行うものとする。(※父母が重複して育児休業等を取得する場合は該当しない。)」とあります。

2 教育・保育給付認定の取扱いについて
(1) 育児休業等をする場合の継続利用に該当する場合(支援法施行規則第1条の5第9号)原則として、保育所入所中の児童(以下、「入所児童」という。)の保護者のうち1人が育児休業等を取得する場合に限り、入所児童について、育児休業等に係る子どもが満1歳に達する日の属する年度の末日までを限度として、引き続き教育・保育給付認定を行うものとする。(※父母が重複して育児休業等を取得する場合は該当しない。)

https://www.city.kasuga.fukuoka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/001/522/youryou.pdf

「要領に記載されている通りに運用する」というのが市役所の主張でしょう。しかし、一般的な保育所等の申込者は要領をまず読みません。分かりやすくまとめたガイドや、市役所の保育担当者との話を参考にします。

更に驚いたのは、春日市が退園通知を夫婦に告げたのは、父母が同時取得した育児休業から父親が先行して復職した後でした。

 3月13日にあった一般質問での答弁などによると、昨年11月から約1カ月間、市内の夫婦が第2子誕生を受け、育休を同時取得。夫が復職した後、別の書類を提出した際、市側が同時取得を把握したという。この時点では保育の必要性が生じていたが、2月に「退園通知を出す」と夫婦に連絡があった。

 夫婦は驚いて市役所を訪ね、説明や部内での再協議を求めたが、結論は変わらず。夫婦が市議や弁護士に相談したり市長に手紙を書いたりした末に、市は退園を取り消した。市担当部長は市議会で「顧問弁護士に相談し、『保育が必要になった現状を考えると法的に難しいのでは』という見解だった」と説明。「個別検討事案として対応を改めた」と、あくまで“特別扱い”との考えだ。

事後的に育休退園を求められても納得できないのは当然です。要領のみにしか記載されていない点で周知徹底に欠け、更には過去の出来事に遡って退園処分を行おうとするとは、子育て世帯に寄り添う保育行政として失格です。

父母が同時に育児休業を取得する事は、保育所は把握していた筈です。保育所が育休同時取得による退園制度を認識していたら、事前に夫婦へ「同時取得したら登園できないかもしれませんが、大丈夫ですか?」と相談等を行ったでしょう。つまり、同時取得による退園は保育所すら認識していなかったと考えられます。

そもそも育児休業を取得する事は、退園処分を行う正当な事由となるのでしょうか。約半数程度の自治体は子供の福祉の観点から、一定期間(新生児が満1歳を迎える年度の年度末が多い)は上の子が保育所等を継続利用する事を認めています。

これは父母が同時に育児休業を取得しても変わりありません。上の子供にとっては、慣れた保育所生活を奪われる事は耐えがたく、子供の成長にも影響が出てしまいかねません。

また、一般的に父親が育児休業を取得する期間が短期間です。上記事例では1カ月でした。この1カ月の為に保育所等を退園させられるのは全く均衡が取れていません。

春日市は保育所等を利用する子育て世帯に対し、「父母が育休を同時取得した場合、退園になる可能性がある旨の注意事項を同封する」という考えを示しています。こうした注意書きを同封されたら、父母が同時に育児休業を取得する家庭は皆無となるでしょう。

大きな矛盾が生じる可能性が高いのは、春日市に在住する父親が春日市役所で勤務するケースです。地方自治体は父親の育児休業取得を熱心に推進しています。が、市役所で勤務する父親であっても「子供が保育所等を退園させられるので、育児休業を取得しません」と抗弁せざるをえません。

春日市役所は自縄自縛に陥ろうとしています。未だに問題の根幹を理解していません。恐らくは数日中に子ども家庭庁から事実関係の説明を求める電話が掛かってくるでしょう。