死亡事故から1年、事故報告書が公表されました。

保育所の男児死亡事故で報告書

去年、大阪市にある保育所で当時、1歳2か月の男の子が食事をのどに詰まらせ死亡した事故で大阪市の検証部会は保育士がりんごとハンバーグを一緒に食べさせたことなどが原因だとする報告書をまとめました。

去年2月、大阪・城東区にある民間の認可保育所で当時、1歳2か月の男の子が昼食で出されたりんごなどをのどに詰まらせ死亡しました。
大阪市は再発防止を図るため、医師や弁護士などで作る検証部会を設置して調査を進め、14日、報告書をまとめました。
それによりますと担当する保育士は男の子がりんごを口から出すなどしたためハンバーグと一緒に口に入れたということです。
保育所では時間内にすべて食べきることが目標とされ、保育士は男の子の食が進まない状況に焦りを感じ、りんごを食べきらない前に次の食材を口に詰め込んだと推測されるとしています。
このため報告書では、ひとりひとりの発育状況に応じて食事の援助を行うよう提言しています。
検証部会で部会長を務める神戸松蔭女子学院大学の寺見陽子教授は、「当たり前だと思って日々、行っている保育の中に、事故の可能性が潜んでいる。その気づきを考えていただきたい」と話しています。

https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20210115/2000039882.html

報告書は大阪市ウェブサイトに掲載されています。

第6回 こども・子育て支援会議 教育・保育施設等事故検証部会(令和2年事例)会議要旨

大阪市教育・保育施設等における重大事故検証報告書(案)
大阪市教育・保育施設等における重大事故検証報告書【概要】

https://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/page/0000525156.html

1枚にまとめられた概要版はこちらです。

【事故の直接的な要因】
・口に食べ物が入っている状態で泣き出したこと
・泣きながら体を斜めにのけぞらせたこと

【背景的な要因】
・給食を「食べきる」「時間内に食べる」暗黙のルールが園全体にあった
・離乳食を進めてきた経過や保護者とのやりとりなどの記録がなかった
・事故当時、低年齢のクラスにお茶の提供がなかった
・マニュアルの内容が不十分で職員間で活用されていなかった
・施設長として、管理責任上の把握が十分でなかった

https://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/cmsfiles/contents/0000504/504064/zikohoukokusyogaiyou.pdf

以下、報告書本文を読んでいきます。

事故の概要
令和2年2月12日(水)11時30分ごろ、認可保育所において、1歳2か月の男児が給食中に食べ物を喉に詰まらせたため、園における救命処置と並行して119番通報し、病院に搬送されるも、搬送先の病院で死亡が確認された。司法解剖結果では死亡原因は食物誤嚥による窒息とされている。

事故の概要は昨年の事故発生直後に報じられた内容と同一です。

0歳児クラスの保育体制は一般的なものですね。ベテラン保育士を中心として、経験年数が浅い保育士と共に保育に当たるケースが多いそうです。

事故当日の昼食の様子です。

苦手なりんごを食べるのに苦戦している園児に対し、何とか時間内に食べさせたいとの思いからか、ハンバーグとりんごを一緒に食べさせようとしました。

その直後に身体を仰け反らせるように嫌がり、くずって泣き始め、その弾みで咳き込んで気管へ詰まってしまいました。

これが事故の直接的な要因であり、その背後には「給食を時間内に食べきる」という暗黙のルールがありました。

気管に詰まったのはりんごでした。

担当する保育士でスプーンで適当な大きさに切り分けていたそうですが、元々の大きさが非常に大きいと感じました。調理室でより小さく、より薄くカットして欲しかったです。

亡くなった園児の成長は一般的です。少し気になったのは入所月齢の早さです。0歳5か月で入所するのは極めて早いですね。

登園は朝早く、降園は夜遅かったそうです。

登園ないし降園時に担任保育士等と殆ど会えなかったそうです。口頭でのコミュニケーションも十分に行えていなかったでしょう。

入所時の月齢の早さ、保育時間の長さ、担任保育士とのコミュニケーション不足等が、「離乳食を進めてきた経過や保護者とのやりとりなどの記録がなかった」という指摘の背景に浮かび上がります。

離乳食の献立にも問題があると指摘されています。離乳の各段階(初期・中期・後期等)別ではなく、離乳食(後期)という一本建ての献立だったそうです。

また、事故直前の令和2年1月からは、全ての0歳児に普通食を提供していました。4月生まれの園児は既に1歳9か月です。献立を考慮すれば普通食も食べられる年齢ですね。

ただ、亡くなった園児は月齢が若く、まだ1歳2か月でした。離乳食等の配慮が必要な段階です。

離乳食にも問題がありました。驚く事に、保護者に配布した離乳食献立表と実際に提供した献立が相違している日が非常に多かったそうです。

当該保育所が離乳食を軽視していたのではないか、と感じました。偶に相違するならまだしも、これが常態化していた事がうかがえます。

事故の根幹に繋がる記述です。

子供のペースに合わせた食事ではなく、時間内に食べさせる事に気を取られてしまっていました。担任保育士が経験が浅く、暗黙のルールに抗うのは困難だったでしょう。

園運営に保育士の意見が十分に反映されていなかったとの声もあります。

法人理事長と姉妹園の園長を同一人物が、事故が発生した当該園の園長を親族が務めていたそうです。典型的な「同族運営」ですね。

ここ数年の間に保育所等で発生した事故や不祥事の多くは、同族運営の園で発生していました。

【ニュース・10/14更新】園児・保育士に暴行 清原こづえ容疑者(日の里西保育園の副園長)を逮捕(3回目)
【2019/8/30追記】水野誠容疑者(くれない保育所元副園長)を業務上横領で逮捕→地裁で懲役4年半の実刑判決
【ニュース・12/9更新】大阪府八尾市の認定こども園「さくら保育園」で働く男性保育士(園長・副園長の息子)、園児に強制猥褻で逮捕
【1/9逮捕】くれない保育所(大阪市城東区)が旧経営陣と和解、私的流用した元副園長を刑事告訴→逮捕
【ニュース・追記あり】みるく保育園の元園長・元副園長を詐欺容疑で逮捕
【8/29追記】【春日野園】加害者及びその親族たる理事長一族の去就、並びに新体制(京都市会より)

違う声を上げにくい等、同族で理事長や園長ポストを占有するのは弊害が極めて大きいです。同族以外の人間の交え、声を上げやすい環境が必須です。

提言1:一人一人の子どもの発達に応じた保育の重要性
提言2:給食管理体制の確保と子どもの発達に応じた食事の提供
提言3:職員一人一人の危機管理意識の向上
提言4:保育の質の向上に向けた組織的な取組の強化
提言5:保育の質の向上につなげるための大阪市の支援強化等

今回の事故を受けた提言もまとめられています。

ここで繰り返されている言葉は「子どもの発達に応じた」と「保育の質の向上」です。