大失態です。来年度の大阪市中学校教員(特別支援)が20名不足する見通しです。採用予定数を誤っていました。

大阪市教委、21年度中学校教員の採用数誤る 特別支援学級担当が20人不足

大阪市教委は18日、21年度の教員採用試験で、中学校の特別支援学級を担当する教員の採用人数が約20人不足していたと発表した。採用人数を決める参考になる21年度の学級見込み数を更新していなかったのが原因で、補充に向けた対応を検討している。

市教委によると、4日に受験者の関係者から合格基準点の算定方法について問い合わせがあり、最新の学級見込み数を反映していなかったことが判明。8月の1次合格発表時に参考にした見込み数のまま更新せず、10月に2次合格者862人を発表したという。

市教委は24日の教育委員会会議で不足する採用者の対応を協議し、影響が出る受験者に連絡するという。

https://news.yahoo.co.jp/articles/524b1eded21eba0d6260f994035384fa73730055

信じられない、情けない話です。問題となって知る採用試験の結果は、既に大阪市教員ウェブサイトに掲載されています。

令和3年度大阪市公立学校・幼稚園教員採用選考テスト[選考結果(第2次選考)]

https://www.city.osaka.lg.jp/kyoiku/page/0000517609.html

https://www.city.osaka.lg.jp/kyoiku/cmsfiles/contents/0000517/517609/kekkagaiyou.pdf

これによると、中学校(特別支援学級)の第2次選考合格者は78名でした。

しかし、これは来年度の学級見込み数を更新する前の数字に基づいた合格者であり、採用予定数が20人不足してしまいました。

本来は少なくとも20人、採用辞退等を見込むとそれ以上の受験者を合格者とする必要がありました。第2次選考受験者の大半が合格者となります。

大阪市の教員採用倍率は著しく低い

実は大阪市立中学校の教員採用試験には根本的な課題があると感じました。「合格倍率の著しい低さ」です。

中学校の合格倍率(全体)は3.3倍でした。大昔の就職活動期に数十倍という倍率を目にしていた感覚からは、全く信じられない数字です。

科目別の数字はより深刻です。

最も採用倍率が低いのは中学校(家庭)の1.7倍、次いで高校(公民・福祉共通)の2.0倍、中学校(国語)の2.1倍、中学校(理科)の2.2倍、中学校(数学)の2.3倍、中学校(特別支援学級)の2.3倍です。

https://www.city.osaka.lg.jp/kyoiku/page/0000517609.html

一般的に教員採用試験の倍率が3倍を切ってしまうと、十分な選考を行うのが難しくなると聞きます。教員に向いていない志願者が合格してしまい、採用後に指導力不足等が露見してしまうそうです。

大阪市立中学校の教員の仕事はさぞ大変でしょう。北野高校や天王寺高校等への進学を目指す生徒から、日々の生活や学習すら覚束ない生徒まで、様々な子供が混在しています。

限られた教員数でそれぞれに適切な指導等を行い、保護者・地域・市教委対応、そして今後数年はコロナウイルスへの対応も行わなければなりません。

昨年の中学校教員の採用倍率は3.9倍でした。しかし、今年は3.3倍へと急落しています。最終合格者が昨年の223人から今年は324人へと急増したのが主な理由です。

こうした大量採用を行った背景には、深刻な教員不足があります。正規教員が足りず、講師を臨時採用して遣り繰りしているのが実態です。

大阪市立小学校の講師が64人不足 学校は20-30代教員が多く、40代が非常に少ない

ここ10年ほどの間、大阪市の中学校教員採用試験への志願者は1200人前後で推移しています。急激に採用数を増やすのでは無く、数年前から徐々に増やすべきでした。

長期的な採用計画が立案できず、そして短期的な採用計画ですら大失態を生じさせてしまったのは情けない限りです。

大阪都構想で足下が疎かに?

これはあくまで推測となりますが、11月1日に住民投票が行われた大阪都構想(大阪市廃止・特別区設置)とは無関係では無いでしょう。

仮に大阪都構想が可決されたら、2025年1月に大阪市が4分割されました。教育委員会も4分割され、教員の人事権も各特別区が有します。

奇しくも来年度の採用プロセスと大阪都構想の詰めや選挙等はほぼ同時期に行われていました。

来年度の学級編成の見込み数等を更新するのを忘れていたのは、大阪都構想に関する応対に追われていたのが一つの理由では無いでしょうか。

通常業務に加えて分割後の学級編成に関する業務も発生していたでしょう。重い業務負荷が掛かっていたのは容易に推測できます。

大阪都構想に前のめりになってしまい(せざるをえなくなり)、通常業務が疎かになっていたのではないかと疑っています。

恐らくは既に第2次試験で不合格となった受験者に電話を掛け、追加合格&採用を打診している筈です。

果たして十分な能力を有する教員を必要数まで採用できるのでしょうか。採用できなければ、学級編成に穴が空きかねません。講師で補充するのも限界があります。

(追記)
報道発表に一連の経緯が掲載されています。

1 概要と事実経過

 令和2年11月4日(水曜日)に、中学校(特別支援学級)の教員採用選考テストを受験した者の関係者から、合格基準点の考え方について問合せがあり、担当者が確認したところ、第2次選考筆答テストの中学校(特別支援学級)の合格基準点に誤りがあることが判明し、他の校種・教科も含め選考事務全体にかかる確認作業を行いました。

 その結果、来年度の中学校における特別支援学級見込み数について、2次合格決定時点における直近の学級見込み数を反映するべきところ、1次合格決定時に把握していた学級見込み数のまま合格者数を算定していたため、採用者数に20名程度の不足が生じていることも判明いたしました。

 なお、他の校種・教科については、誤りがないことを確認しました。

https://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/kyoiku/0000519315.html

そもそも1次合格決定時における学級見込み数も甘かったと感じています。1次合格者が少なすぎて、2次で十分な選考を行えません。