千葉県印西市にある小規模保育「にこにこルーム原山」が2週間後に閉園すると保護者へ通知し、動揺や混乱が広がりました。
千葉県印西市の小規模認可保育園「にこにこルーム原山」が、保護者らに事前の連絡なく一方的に閉園を決めた問題で、園の運営会社が市の承認を得ずに今月から閉園を強行し、市が児童福祉法違反に当たるとして、26日付で認可を取り消したことが分かった。子の転園を余儀なくされた保護者の1人は「認可だから安心していたのに無責任だ」と憤る。
運営会社「NCMA」(東京都新宿区)は10月半ばに突然、保護者に対し同月末での閉園を手紙で通知。経営悪化や人員不足を理由とした。市は運営会社から事業廃止の申請を受けたが、転園の準備時間がなく、保護者の意向も受けて同月末に不承認にした。
長男(2つ)を通わせていた市内の派遣社員の女性(40)にも10月18日に通知が届いた。夫は単身赴任中で、自身も仕事が決まり、7月に長男が通園を始めたばかりだった。通知を受けた翌日に園に相談すると、保育士らにも閉園は知らされていなかった。
10月時点で在籍していた園児3人のうち、元々転園予定だった1人を除く女性の長男と別の1歳児の2人が、11月以降も在籍を予定していた。
保育士らは自主的に2人の保育を続けようとしたが、10月31日に園を訪れると、玄関の錠が取り換えられ、扉に「閉園手続きに向け保育業務をお休みします」と紙が張られていた。
運営会社から直接の説明がないまま、女性は転園を決意。なんとか私立の園を見つけたが、短時間の「慣らし保育」の間、仕事を休めない日は、にこにこルーム原山にいた保育士に公民館で、長男の面倒を無償で見てもらった。在籍希望だった1歳児も、自宅から遠い別の保育園に移らざるを得なくなったという。市はNCMAが閉園を強行したため、小規模保育の廃業には市町村長の承認が必要とする児童福祉法に違反すると判断し、認可取り消しを決めた。今後、市が廃園の手続きを進める。市の担当者は「前例がない事態。適正に保育事業ができると判断して認可したので、最後まで続けてほしかった」と話す。 (以下省略)
閉園される「にこにこルーム原山」は、印西市原山三丁目8番地13棟101号(UR賃貸住宅千葉ニュータウン原山)に設置されています。
団地1階の空き部屋を利用したのでしょう。大阪市でも阿倍野区等で行われていますね。
https://www.city.inzai.lg.jp/cmsfiles/contents/0000007/7597/syoukibo.pdf
最寄駅は千葉ニュータウン中央駅ですね。東京のベッドタウンとして宅地開発されました。が、都心から少し距離があり、更には電車の交通費が非常に高く、利便性は決して高くないと聞きました。
同園を運営しているのは株式会社エヌシーエムエージャパンです。保育事業関するコンサルティングやチャイルドマインダー及びインストラクターの人材養成等を営んでいるそうです。
閉園する理由は「園児不足」と「人手不足」とされています。定員9名のところ、在籍園児は3名(内1名は10月末で転所)のみでした。在籍園児数に応じて支払われる補助金も多く、園児数の減少は経営問題に直結してしまいます。
しかし、唐突に閉園されてしまうと、在籍している園児や保護者にとっては堪ったものではありません。しかし年度途中に閉園されてしまうと、転所先を探すのも大変です。
本件では閉園する約2週間前に手紙で知らされたそうです。2週間後の閉園、無茶にも程があります。
仮に閉園するとしても年度末まで保育を継続し、かつその旨を半年前までに伝えられれば話は違ったでしょう。転所先を探し、翌年4月の一斉入所申込へ手続できる筈です。
閉園される保育施設から転所する児童に加点し、保育が途切れない様に図る自治体も少なくありません。大阪市は既に制度化しています。
(優先的な利用調整)
第7条 次の各号に掲げる児童について、利用調整申請があった場合、保健福祉センター所長は、第4条第1項の規定にかかわらず、優先的に利用調整を行う。
(中略)
(2)保育施設等が廃止若しくは休止し、又は利用定員が減少することに伴い、当該保育施設等において保育利用を継続することができない児童(当該保育施設等が用意した受入先に限る。)
(以下省略)
印西市が児童福祉法に違反すると判断して認可を取り消したのは、こうした短期間かつ一方的な閉園に対する強い憤りがあるからでしょう。
閉園を強行した株式会社エヌシーエムエージャパンに対しては、他の自治体からも厳しい目が注がれるでしょう。新たな保育施設を開所するのは極めて困難となるのではないでしょうか。
一方、印西市の対応にも不明な点があります。園児数が認可定員を大幅に下回っている状況は把握できていた筈です。経営状況を注視し、適切なモニタリングを行い得ました。
市の担当者は「前例がない事態。適正に保育事業ができると判断して認可したので、最後まで続けてほしかった」とコメントしていますが、適正な保育事業が継続できる様な対応を行っていたのでしょうか。
全国各地で規模が小さい保育事業(認可外保育・企業主導型保育・地域型保育事業・東京の認証保育園)が閉鎖される事案が相次いでいます。
・【毎日新聞より】JPホールディングスが東京都の認証保育園4園を閉園 無償化・認可園増・育休充実・コロナ禍・少子化が逆風か
・【コロナウイルス】閉園する認可外保育施設、驚きふためく保護者、転所も難航か
・【コロナウイルス】川崎市で認可外保育施設が相次ぎ閉園 園児や保育士の減少が原因か
待機児童いるのに定員割れ いま都会の保育園で何が
https://digital.asahi.com/articles/ASN9Z5S6WN9SUTFL007.html
その背景には保育需要の見誤り、コロナ禍による家庭保育の増加、少子化の進展、人件費の高騰等、様々な事情があります。残念ながら今後も保育施設の閉園は続くでしょう。
その一方で、待機児童問題の解消を図る財源確保を目的とた児童手当の縮小が検討されています。
多額の補助金が投入された保育施設の閉鎖と新規開設が、同じ地域で同時に進行しています。非常に勿体ない話です。
子育て世帯に負担を求める前に、こうした歪な現状を解消するのが先決では無いでしょうか。