『大阪市保育施設等の利用調整に関する事務取扱要綱」(保育利用調整基準)の一部改正案』(及び子どものための教育・保育給付認定に関する事務取扱要綱案)が公表されています。
改正案の内容を一つずつ見ていきます。長くなるので、今回は事務取扱要綱の本文部分と取り上げます。改正内容は多岐にわたるので、実質的に改正される部分のみを取り上げます。
卒園児等への優先的な利用調整
第7条 次の各号に掲げる児童について、利用調整申請があった場合、保健福祉センター所長は、第4条第1項の規定にかかわらず、優先的に利用調整を行う。
(1)家庭的保育事業等の卒園児(引き続き当該家庭的保育事業等の連携施設を利用するための利用調整に限る)
(2)保育施設等が廃止若しくは休止し、又は利用定員が減少することに伴い、当該保育施設等において保育利用を継続することができない児童(当該保育施設等が用意した受入先に限る。)
(3)保育施設等の認可を新たに受ける施設に在籍していた児童(保健福祉センター所長が当該児童の保育環境の変化への配慮から継続利用の必要性を認めた場合であって、当該施設を継続利用するための利用調整に限る)
(4)第1号から第3号に掲げる他、保健福祉センター所長が、優先的な利用調整が必要と認める児童
従来は家庭的保育事業等の卒園児、及び保健福祉センター所長が優先的な利用調整を認めた場合(指数表に掲載)が定められていました。
実施的な改正部分は第2項・第3項です。第2項は休廃園等に伴う措置です。通っている保育施設等が休廃園等する場合、当該保育施設等が用意した受入先へ優先的に転所できる措置です。高等森友学園保育園の様に、区役所が優先転所先を準備するケースとは異なります。
想定しているのは、保育施設が統廃合され、新たに設置された施設へ転所するケースでしょうか。利用調整基準を杓子定規に解釈すると、こうした転所でも基準に則って調整が行われてしまいます。実態に即していません。
大きな影響を生じるのは第3項です。認可外保育施設等が小規模保育施設等へ移行する場合を想定しています。
従来は認可外保育施設の在籍者であっても、希望者全員が継続して入所できるものではありませんでした。外部からの入所希望者と同じ基準で利用調整が行われていました(例外的に一部の施設で異なる取扱いが行われた、という噂を聞いた事はあります)。
しかし、認可外施設の利用者から「通っている施設が認可化されてありがたい。しかし、継続して在籍できないのはおかしい。」という不満の声が生じていました。
そこで、本項で追加されれば、保育環境の変化への配慮から継続利用の必要性が認められた場合に限り、継続して利用できる事となりました。実質的には希望者の大半は継続して在籍できるのではないでしょうか。
保育士等への優先的な利用調整
第7条の2 申込児童の保護者のいずれかが保育士(区域限定保育士を含む)であって、大阪市内に所在する保育施設等(見込みを含む)において直接雇用により勤務する(時間下限あり)ために利用調整申請があった場合、第4条第1項の規定にかかわらず、当該児童について、前条の規定による利用調整に次いで優先的に利用調整を行う。
2 前項の規定は、申込児童の保護者のいずれかが保健師、看護師又は准看護師である場合について準用する。
3 第1項の規定は、申込児童の保護者のいずれかが幼稚園教諭、小学校教諭又は養護教諭である場合について準用する。
4 第1項から前項までの規定による利用調整について、対象児童が複数いる場合は、別表「保育利用調整基準」に基づき保育の必要性の高い児童から順に利用調整を行うものとする。(一部略)
平成29年度までは保育士のみが優先利用調整の対象とされていました。平成30年度一斉入所からは、保育施設等で働く保健師・看護師・准看護師・教諭も対象となります。
保育施設等で働く保育士等が優先的に保育施設を利用でき、保育士不足の緩和に繋げたい意向です。
ただし、保育士等の優先利用措置は、家庭的保育事業等の卒園児・休廃園による転所・認可化による継続在籍等の調整に次いで行われます。また、入所募集数以上の優先利用希望があった場合は、調整基準に基づいて調整が行われます。保育士だから100%入所できるわけではありません。
平成29年度の保育士優先利用枠への申込み状況は、下記投稿をご覧下さい。
なお、同年度の一斉入所申込において、同制度の利用者に限って、他の申込者より1カ月ほど早く結果が通知されていたそうです。
平成29年度4月の保育所一斉入所の通知は2月だと聞いていましたが、保育士の子どもとして申し込みした人に昨年末にすでに審査通知が届いたのはなぜでしょうか。
http://www.city.osaka.lg.jp/seisakukikakushitsu/page/0000391489.html
また、同趣旨のメールも頂きました。
友達保育士さんから聞いた話ですが、保育士優先枠は1月初旬頃には内定通知が届き、早く働く保育園を探すように連絡があったそうです。
保育士採用の便宜という制度趣旨から考えると、勤務先を探している保育士にいち早く内定通知を届けて就職活動を速やかに行う様に促すのは理解できます。また、内定を早く伝えても、それ以外の申込者の結果に影響しません。
しかし、こうした取扱いはこっそり行われていました。「裏でこそこそ不透明な選考を行っているのでは無いか」という疑念を招きかねません。何らかの形で「保育士優先枠の申込者に限り、は○月頃に結果を通知します」という旨を明示すべきです。
小規模保育の継続利用
第7条の4 保健福祉センター所長は、当該地域の保育施設等の利用状況及び小規模保育事業における児童の受入れ態勢その他を勘案し、小規模保育事業A型又は小規模保育事業B型の卒園児であって保育施設の利用を希望したものの保留となった児童が、当該卒園予定の小規模保育事業を継続して利用できるよう、利用調整することができる。この場合、保護者はその希望を記載した申請書を提出するものとする。(中略)
3 この条の規定による継続利用期間は、1年以内とする。
小規模保育を卒園しても新たな保育先が見つからなかった場合の措置です。希望者は1年間に限って継続して在籍できる内容です。
卒園しても新たな保育施設が見つからない3歳児はどれだけいるのでしょうか。平成29年度一斉入所で最も厳しかった地域の一つ、西区の推定内容を再掲します。
まずは小規模保育等の卒園児数を推計します。0-1歳児の募集数を合計したところ、74人となりました。2歳児クラスの定員数(=卒園児数)に相当するでしょう。
卒園児の多くは保育所を希望する一方、幼稚園へ進学する児童も少なくないでしょう。ざっと約2/3、つまり50人が保育所への入所を希望していると仮定します。
一方、西区全体の3歳児募集数は23人に過ぎません。ここでも幼稚園へ進学を希望する児童がいるでしょう。とはいえ、当初は入所を希望する卒園児(仮定)の半数弱に相当する募集数しか準備されていません。
つまり、大半の卒園児・新規の入所希望者の殆ど(認可外加点を除く)は入所できない見通しとなってしまっています。小規模保育を集中的に新設した結果です。
約半数の卒園児が入所できない推計結果となっています。記事掲載後に小規模保育施設等が開所し、平成29年4月でも入所できなかった3歳児は実際にはより少ないでしょう。しかし、皆無ではありません。幼稚園へ入園した卒園児もいます。本制度はその様な卒園児の手助けになるでしょう。
反面、0-2歳児の保育室に取り残される3歳児の成長に影響が出かねません。また、0-2歳児の受入れに影響も出てしまうでしょう。あくまで緊急避難的な措置とし、幼稚園も含めて速やかに転所する様に促すべきです。
なお、本条は国家戦略特区小規模保育に関する3-5歳児保育と直接の関係はありません。
調整基準表は別記事で掲載しています
別表部分(調整基準表)の改正内容は、下記の記事をご参照下さい。