保育所運営の最大手である「日本保育サービス(JPホールディングスの子会社)」が東京都内で運営する認証保育所4園を年度末で閉園すると決定し、波紋が広がっているそうです。
都内の保育園4園を一斉閉園 業界大手、認可園増設の余波で
保育業界大手が来春、東京都内で運営する認可外の4保育園を閉園する。公表したのは9月。思わぬ通告に、幼児を預ける保護者からは不安の声が上がり、専門家も「4園も一斉に閉じるのは前例がない」と驚く。なぜ閉園するのか。探ってみると、政府が導入した政策の影響も浮かんできた。
保育園は、認可園と認可外に大別される。多くの親が希望するのは、国が定めた設置基準を達成し、知事が認可した認可園だ。認可以外は認可外となるが、その中から各自治体の基準で認定するものがあり、東京都は認証園と呼んでいる。認可園に入れなかった親にとって受け皿役を果たしてきた。
今回、認証園の閉園を決定したのは、全国で200カ所を超える認可や認証保育園を運営する業界大手の「JPホールディングス」グループ(名古屋市東区)。対象は新宿区2園、豊島区1園、大田区1園の4園で、定員は計147人。
同社は取材に「認可園が増えて、児童数が減り赤字が続いていた。育休制度の普及で0歳児の入園需要が減少し、今後も入園児が見込めない。こうした環境や人口動態の変化に伴う総合的な判断」と説明した。
11月12日、大田区の認証園を利用する家族の求めに応じて説明会が開催された。出席したのは12世帯と同区の担当者。グループ側は「別途、会社主催の説明会を設ける」と欠席した。
子どもの転園先が決まっていない40代女性は「認可園に入れなくて入園した保育園だったのに突然の閉園で困っている。紹介された先も通勤先と反対方面で片道約20分。認可に申し込むしかないが、(入園の可否が決まる)来年2月まで行き先が決まらず不安だ」と訴える。同じ立場の男性(41)は「会社から提示された転園先は自宅から遠く、子どもも友達と離れるのを不安がっている。閉園に納得できなくても私の子だけ園に残ることはできず、自分たちで受け入れ先を探すしかない」と語った。 (以下省略)
調査によると、年度末に閉園する予定なのは下記の認証保育園です。
【大田区】(毎日新聞に記載)
・アスク雪谷大塚保育園
【豊島区】(区内にはこの1園しかありません)
・アスク池袋保育園
【新宿区】(いずれか2園)
・アスク高田馬場保育園
・アスク飯田橋保育園
・アスク西新宿保育園
この旨は株式会社JPホールディングスの四半期報告書にも掲載されています。
https://www.jp-holdings.co.jp/ir/library_data/20201112_2.pdf
「当地域の待機児童の状況」とは、待機児童の減少によって認証保育園へのニーズが低下した事を示唆しているのでしょう。
東京都は認可保育所が不足しています。特に23区は著しく不足しています。保育を必要とする共働き世帯が非常に多い反面、地価や人件費等が高くて保育所を新設するのが容易ではありません。
増加する一方の保育需要に対し、保育の一端を担っているのは「東京都認証保育所」でした。
民間企業を含む多様な事業者がサービスを競います。
●全施設で0歳児からお預かりします。
●全施設において13時間の開所を基本とします。
●都が設置を認証し、保育の実施主体である区市町村とともに指導します。
●保育所についての重要事項を随時情報提供します。
●情報公開によりニーズにあった保育所が選べます。
●利用者と保育所が直接利用契約できます。
●料金は上限を決めます。
●都独自の基準を設定し、適切な保育水準を確保します。認証保育所の料金及び契約について
東京都認証保育所事業実施要綱4に定めるところにより、原則として、月220時間以下の利用をした場合の月額は、3歳未満児の場合80,000円、3歳以上児77,000円を超えない料金設定とすることとしています。
なお、保育料の月額には、基本の保育料のほか、1食目の給食代及びおやつ代、保育に直接必要な保育材料費、光熱水費、年会費(12分の1の額)及びこれらにかかる消費税相当分が含まれます。
この条件を満たす範囲で、保育料は事業者による自由設定となります。サービス内容に応じて、料金の仕組みも金額もさまざまですので、施設に直接問い合わせてください。(以下省略)https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/hoiku/ninsyo/index.html
また、利用料金の一部は自治体が助成しています。
たとえば大田区では、子供の年齢や人数・世帯所得等に応じて13000円~67000円が助成されます。
大田区在住者東京都認証保育所保護者負担軽減補助金制度
https://www.city.ota.tokyo.jp/seikatsu/kodomo/hoiku/hoikushisetsu_nyukibo/ninshou/ninnsyo_hogosya_hojo.files/hojogaku_ichiran.pdf
無償化・認可園増加・育休充実・コロナ禍・少子化が逆風に
多くの利用者が入所している認証保育園ですが、最近は園児が不足する施設が増えているそうです。
認可保育所が次々に新設されるのに加え、昨年から開始された幼児教育・保育の無償化による認可保育所への入所希望が更に高まっています。
また、毎日新聞の記事では「育休制度の充実によって0歳児の入所希望者が減少している」と記されています。
これに加えて、今年はコロナ禍での入所を躊躇う家庭が多いのでしょう。大阪市の保育所等一斉入所でも、0歳児の入所希望者は1割も減少しています。
東京都では認証保育園の閉園という形で現れてきましたが、これは東京に限った話ではありません。
共働き家庭は増える一方ですが、コロナ禍による保育ニーズの低下や少子化によって保育ニーズが減少に転じる地域が増え始めています。
大阪市内も例外ではありません。閉園する認可外保育施設や地域型保育事業がじわじわと発生しています。
一定期間前の告知、優先転所?
園児が集まらず、閉園せざるを得ない保育施設が発生するのは致し方ないでしょう。大手企業ならまだしも、小さな事業主では経営問題に繋がりかねません。
一方、唐突に閉園されてしまうと、子育て世帯の日々の生活は行き詰まってしまいます。少なくとも閉園予定の半年以上前までに告知されなければ、別の保育施設へ転所するのは非常に難しいと感じます。
年度末に閉園予定であれば、遅くとも9月末までに教えて欲しいです。何とか新年度の一斉入所申込に間に合います(園を見学する時間は全く足りませんが)。
以前には閉園3カ月前に告知し、多くの保護者から怨嗟の声が上がった認可外保育施設もありました。
多くの保護者は切実に望んでいるのは、転所先の決定でしょう。多くの自治体では転所先の紹介を行いますが、通いやすい園とは言い難いケースも多いです。
たとえば駅の反対側だったり、踏切を越える場所にある保育所を紹介された事案がありました。朝の時間は貴重です。自転車で20分掛けて登園するのは容易ではありません。
紹介されても、優先的に入所できるかは別の問題です。以前に大阪市で高等森友学園保育園が休園する際には、別の保育所等へ最優先で転所できる取り扱いが行われました。
その反面、認可外保育事業が閉園する際にはこうした措置は行われていません。入所決定に行政が関与したか否かで線引きが行われていました。
保育施設を選ぶにあたり、閉園してしまう可能性がある園は避けたいのは多くの保護者の本音でしょう。しかし、これを見抜くのは極めて困難です。分かりようがありません。
こうした様々な不安を覚えると、認可保育所への入所希望が集中するのは無理もありません。より安心できる保育と運営体制を重視すると、自然な選択です。