2020年5月に大阪市の保育所入所待機児童数について(令和2年4月1日現在)が公表されました。
報道発表資料 保育所等の待機児童数(令和2年4月1日現在・速報値)を公表します
大阪市における令和2年4月1日現在の待機児童数は、前年度4月1日から8人減少し、20人となりました。
大阪市では、待機児童を含む利用保留児童の解消を最重要施策として、認可保育所、認定こども園や小規模保育事業の整備等の取り組みを行うとともに、保育の担い手を確保するための保育人材確保対策等により、利用枠の確保に努めてまいりました。
その結果、令和元年度においては、1,658人分の入所枠を確保し、保育所等在籍児童数は前年度より1,498人増加し、54,302人となりました。
なお、今回の数値は、「各施設・事業別新規利用状況」及び「各区別・年齢別新規利用状況」について、現在集計中のため、速報値となっていますが、確定次第公表させていただきます。
今後も、引き続き利用枠の拡大に努めるとともに、様々な保育資源を有効に活用しながら、子育て世代の視点に立ったサービスを展開し、待機児童の解消をめざします。
https://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/kodomo/0000503257.html
例年と同じ様に、この内容を少しずつ見ていきます。
2020保育所等一斉入所結果分析、第1回は昨年と比較しつつ大阪市全体としての傾向を考察していきます。なお、昨年の分析記事はこちらからご覧下さい。
申込数は急増、入所決定率は急落、在籍率は過去最高
まずは年度毎の入所申込数・決定数等を見てみます。
1.待機児童数
区分 2020 H31 H30 H29 H28 新規入所申込数 15,690 15,093 14,940 15,101 14,361 新規入所児童数 12,390 12,318 12,437 12,112 11,491 入所決定率 79.0% 81.7% 83.2% 80.2% 80.0% 入所保留児童数 3,300 2,721 2,503 2,989 2,870 保留率 21.0% 18.3% 16.8% 19.8% 20.0% 転所希望 418 426 348 378 368 育休中 680 374 244 393 363 求職活動休止中等 347 422 460 438 411 幼稚園預かり保育 20 7 11 22 20 企業主導型保育 159 90 68 3 – 無償化対象認可外 0 5 5 一時保育利用 11 – – 特定保育所希望等 1,656 1,369 1,300 1,430 1,435 待機児童数 20 28 67 325 273 就学前児童数 121,516 123,030 124,504 125,693 126,131 保育所等在籍児童数 54,302 52,804 51,271 50,062 48,821 在籍率 44.7% 42.9% 41.2% 39.8% 38.7% 大阪市の保育所入所待機児童数について(令和2年4月1日現在)より作成(以下同じ)
大阪市における、過去5年間の保育所等入所申込数や待機児童をまとめました。
新規入所申込数は過去最高の15,690人に達しました。昨年より約600人も増加しました。共働き志向の増加に加え、昨秋から開始された幼児教育・保育無償化も大きな影響を及ぼしているでしょう。
しかし、新規入所児童数は12,390人に留まりました。昨年とほぼ同水準です。
結果、入所決定率は79.0%へ低下しました。H27とほぼ同水準です。6年前に逆戻りしました。
入所決定率(1-保留率)を引き下げた要因は、「育休中」と「特定保育所希望等」の多さです。いずれの事由も昨年より約300人ずつ増加しています。
育休中が増加したのは、育休延長に必要となる入所不承諾通知を得る為の申込が増加した為でしょう。
在籍率は引き続いて上昇し、過去最高の44.7%に達しました。数年中には50%へ到達するでしょう。大阪市の就学前児童の内、半数が保育所等に在籍する時代です。
この様に入所決定率が低下(=保留率が上昇)した事により、入所保留児童数は3,300人に増加しました(大阪市の資料は転所申込を除外していますが、当サイトでは含んでいます)。
就学前児童が増加している地域を中心に、多くの保留児童が発生していると考えられます。
保留児童の半数は「特定保育所希望等」
昨年までと、入所保留児童の約半数は「特定保育所希望等」です。
これは「他に利用可能な保育所等(概ね20~30分程度で登園できるとされる)があるにもかかわらず、特定の保育所等を希望し、保護者の私的な理由により待機しているものや、利用可能な保育所等のあっせんに応じなかったもの」とされています。
ただ、これは実情に反しているとも指摘されます。通勤経路から外れる、他のきょうだいと別施設となる、子供の特性にあった施設が良い等、登園が困難な場合が少なくありません。
仮に無理して入所しても、通い続けるのが難しいという話をよく聞きます。中には入所早々に退所し、認可外保育施設や企業主導型保育等へ移るケースもあると聞きます。
特定保育所希望等が多いのは、大阪市の保育所等入所選考基準も影響しています。
保育所から保育所へ転所する場合には、原則として基本点数が半分となってしまいます。反面、認可外保育施設等に在籍していると5-7点の加点が得られます。
希望にそぐわない保育所に入所すると、当初から第1希望としていた保育所へ移りにくくなってしまいます。
結果として「特定保育所等希望」を理由とする、待機児童から除かれる児童が多くなります。
大阪市に限らず、各自治体が発表する「待機児童数」は実態に即していません。保育所等への入所のしやすさは、「入所保留率(決定率)」や「在籍率」を見て下さい。
0歳児・1歳児申込数が急増
次に年齢毎の申込数等を見てみます。
保育所等新規入所申込者数の推移(毎年4月)
0歳児 1歳児 2歳児 3~5歳児 合計 H22 2,812 4,421 2,806 3,145 13,184 H23 2,777 4,355 2,646 3,282 13,060 H24 3,026 4,630 2,650 3,265 13,571 H25 3,050 4,944 2,724 2,924 13,642 H26 3,227 5,167 2,724 3,077 14,195 H27 3,288 5,314 2,596 2,716 13,914 H28 3,514 5,596 2,659 2,592 14,361 H29 3,832 6,069 2,688 2,512 15,101 H30 3,838 6,116 2,630 2,356 14,940 H31 3,916 6,329 2,462 2,332 15,039 2020 4,196 6,584 2,486 2,424 15,690
申込者数を大きく引き上げたのは、0歳児と1歳児です。0歳児は280人、1歳児は255人も増加しました。また、3歳児も92人増加しています。
こちらも主な要因は「幼児教育・保育無償化」でしょう。
影響が分かりやすいのは3歳児です。3歳児以降が無償化されるので、保育料が掛からずに保育所等を利用出来ます。
このタイミングで保育所等を利用して就労しようとする動きが起きたのでしょう。
ただ、3歳児の募集枠は決して多くなく、募集しない保育所等も少なくありません。保留率は決して低くありません。
0-1歳児は「無償化の先取り」ではないでしょうか。3歳児以降の無償化を見据え、それ以前の段階から就労する動きです。
なお、ここ10年で0-1歳児の申込数は約1.5倍へ増加しています。少子化に反するこの動きは、低年齢からの保育を要する家庭が増加している事を表しています。
保育所等在籍数は全年齢で増加
保育所在籍児童数の推移(毎年4月)
保育所数 こども園数 地域型数 0歳児 1歳児 2歳児 3~5歳児 合 計 H22 382 – – 2,557 6,608 8,074 25,391 42,630 H23 384 – – 2,584 6,635 8,335 26,071 43,625 H24 388 – – 2,705 6,815 8,309 26,840 44,669 H25 395 – – 2,773 7,025 8,528 27,171 45,497 H26 405 – – 2,933 7,204 8,777 27,236 46,150 H27 408 31 94 3,021 7,710 9,283 27,609 47,623 H28 417 39 120 3,220 7,904 9,406 28,291 48,821 H29 423 51 141 3,470 8,406 9,644 28,542 50,062 H30 443 60 141 3,467 8,806 10,205 28,793 51,271 H31 456 76 202 3,590 9,183 10,543 29,488 52,804 2020 456 89 213 3,692 9,274 10,806 30,530 54,302
次は在籍児童数を見ていきます。全年齢で在籍数が増加しています。就学前児童数は減少し続けているので、在籍率は上昇しています。
注目すべきは保育所数です。H31から2020年に掛けて、保育所数は横ばいとなっています。
記憶している範囲では、数カ所の保育所が新規開設されています。それと同数程度がこども園へ移行したのでしょう。こども園は13施設も増加しています。
次回は区毎の入所申込数・入所数・保留数等を基に、各区や前年度の内容と比較していきます。