2019年5月に保育所等の待機児童数(平成31年4月1日現在)が公表されました。
保育所等の待機児童数(平成31年4月1日現在・速報値)を公表します
大阪市における平成31年4月1日現在の待機児童数は、前年度4月1日から36人減少し、29人となりました。
大阪市では、待機児童を含む利用保留児童の解消を最重要施策として、認可保育所、認定こども園や小規模保育事業の整備等の取り組みを行うとともに、保育の担い手を確保するための保育人材確保対策等により、利用枠の確保に努めてまいりました。
その結果、平成30年度においては、1,878人分の入所枠を確保し、保育所等在籍児童数は前年度より1,533人増加し、52,804人となりました。
なお、今回の数値は、「各施設・事業別新規利用状況」及び「各区別・年齢別新規利用状況」について、現在集計中のため、速報値となっていますが、確定次第公表させていただきます。
今後も、引き続き利用枠の拡大に努めるとともに、様々な保育資源を有効に活用しながら、子育て世代の視点に立ったサービスを展開し、待機児童の解消をめざします。
https://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/kodomo/0000470825.html
例年と同じ様に、この内容を少しずつ見ていきます。
H31保育所等一斉入所結果分析、第1回は昨年と比較しつつ大阪市全体としての傾向を考察していきます。なお、昨年の分析記事はこちらからご覧下さい。
申込数は再び増加、入所決定率は低下、在籍率は過去最高
まずは年度毎の入所申込数・決定数等を見てみます。
1.待機児童数
区分 H31 H30 H29 H28 H27 新規入所申込数 15,093 14,940 15,101 14,361 13,914 新規入所児童数 12,318 12,437 12,112 11,491 10,988 入所決定率 81.7% 83.2% 80.2% 80.0% 79.0% 入所保留児童数 2,721 2,503 2,989 2,870 2,926 保留率 18.3% 16.8% 19.8% 20.0% 21.0% 転所希望 426 348 378 368 441 育休中 374 244 393 363 179 求職活動休止中等 422 460 438 411 323 幼稚園預かり保育 7 11 22 20 13 企業主導型保育 90 68 3 – – 無償化対象認可外 5 5 一時保育利用 11 – – – 特定保育所希望等 1,369 1,300 1,430 1,435 1,753 待機児童数 28 67 325 273 217 就学前児童数 123,030 124,504 125,693 126,131 126,686 保育所等在籍児童数 52,804 51,271 50,062 48,821 47,623 在籍率 42.9% 41.2% 39.8% 38.7% 37.6% 大阪市の保育所入所待機児童数について(平成31年4月1日現在)より作成(以下同じ)
大阪市における、過去5年間の保育所等入所申込数や待機児童をまとめました。
増加し続けていた入所申込数がH30一斉入所で減少に転じましたが、H31では再び増加しました。減少し続ける就学前児童数に対し、これを上回る勢いで申込率が上昇しています。
その反面、新たに入所が決定した児童数は昨年より100人余り減少し、12,318人に留まりました。
多くの地域で入所しやすくなった反面、入所できなかった児童が都心等の一部地域で急増したと推測されます(城東区・淀川区・福島区・北区?)。次回以降に各地域毎の細かい数字を見ていきます。
こうした結果、H31一斉入所における入所決定率は81.7%へと低下しました。昨年の83.2%から1.5%減少しました。
昨年の同記事で「大阪市の待機児童問題は峠を越えました(まだ標高は高いままですが)」と記しましたが、実は次の頂がありました・・・・。
在籍率は引き続いて上昇し、42.9%となりました。今後も上昇し続け、数年度には50%に達するでしょう。大阪市の就学前児童の内、半数が保育所等に在籍する時代です。
この様に入所決定率が低下(=保留率が上昇)した事により、入所保留児童数は昨年より218人も多い2,721人となりました。就学前児童が増加している地域を中心に、多くの保留児童が発生しています。
保留児童の半数は「特定保育所希望等」
例年と同じく、入所保留児童の約半数は「特定保育所希望等」です。
これは「他に利用可能な保育所等(概ね20~30分程度で登園できるとされる)があるにもかかわらず、特定の保育所等を希望し、保護者の私的な理由により待機しているものや、利用可能な保育所等のあっせんに応じなかったもの」とされています。
ただ、これは実情に反している面も大きいです。通勤路から外れる、他のきょうだいと別施設となる、子供の特性にあった施設が良い等、登園が困難な場合が少なくありません。
仮に無理して入所しても、通い続けるのが難しいという話をよく聞きます。中には入所早々に退所し、認可外保育施設や企業主導型保育等へ移るケースもあると聞きます。
特定保育所希望等が多いのは、大阪市の保育所等入所選考基準も影響しています。
保育所から保育所へ転所する場合には、原則として基本点数が半分となってしまいます。反面、認可外保育施設等に在籍していると5-7点の加点が得られます。
希望にそぐわない保育所に入所すると、当初から第1希望としていた保育所へ移りにくくなってしまいます。
結果として「特定保育所等希望」を理由とする、待機児童から除かれる児童が多くなります。
大阪市に限らず、各自治体が発表する「待機児童数」は実態に即していません。
保育所等への入所のしやすさは、「入所保留率(決定率)」や「在籍率」を見て下さい。
1歳児申込数が急増・・・昨年の0歳児申込の少なさからの反動?
次に年齢毎の申込数等を見てみます。
保育所等新規入所申込者数の推移(毎年4月)
0歳児 1歳児 2歳児 3~5歳児 合計 H22 2,812 4,421 2,806 3,145 13,184 H23 2,777 4,355 2,646 3,282 13,060 H24 3,026 4,630 2,650 3,265 13,571 H25 3,050 4,944 2,724 2,924 13,642 H26 3,227 5,167 2,724 3,077 14,195 H27 3,288 5,314 2,596 2,716 13,914 H28 3,514 5,596 2,659 2,592 14,361 H29 3,832 6,069 2,688 2,512 15,101 H30 3,838 6,116 2,630 2,356 14,940 H31 3,916 6,329 2,462 2,332 15,039
2歳児申込数は2年連続で減少しました。就学前児童数の減少に加え、保育施設を利用する児童は0-1歳児から入所する為でしょう。
H31一斉入所における申込者数を大きく押し上げたのは、1歳児です。昨年より213人多い6,329人が申し込みました。
これには伏線がありました。H30の0歳児申込数が3,838人でしたが、これはH29より6人の増加に留まっていました。
また、H30の0歳児在籍数は3,467人であり、H29の3,470人より微減していました。
つまり、昨年の一斉入所で申し込んだ0歳児がやや少なく、その反動が今年の1歳児入所申込で現れたと推測されます。
また、0歳児申込数は昨年より78人多い3,916人となりました。昨年は「そろそろ減少に転じる」と思いましたが、まだまだ増加傾向が続きそうです。
保育所等在籍数は全年齢で増加
保育所在籍児童数の推移(毎年4月)
保育所数 こども園数 地域型数 0歳児 1歳児 2歳児 3~5歳児 合 計 H22 382 – – 2,557 6,608 8,074 25,391 42,630 H23 384 – – 2,584 6,635 8,335 26,071 43,625 H24 388 – – 2,705 6,815 8,309 26,840 44,669 H25 395 – – 2,773 7,025 8,528 27,171 45,497 H26 405 – – 2,933 7,204 8,777 27,236 46,150 H27 408 31 94 3,021 7,710 9,283 27,609 47,623 H28 417 39 120 3,220 7,904 9,406 28,291 48,821 H29 423 51 141 3,470 8,406 9,644 28,542 50,062 H30 443 60 141 3,467 8,806 10,205 28,793 51,271 H31 456 76 202 3,590 9,183 10,543 29,488 52,804
次は在籍児童数を見ていきます。全ての年齢で在籍数は増加しています。就学前児童数は減少し続けているので、在籍率は上昇しています。
注目すべきは、保育所等に在籍している3-5歳児です。昨年より695人も増加し、29,488人となりました。急増しています。
ここ数年間に渡って多くの保育施設を新設し、これらに入所した児童が3-5歳児に達した為でしょう。
これと反比例する様に、幼稚園に在籍している3-5歳児は減少しているでしょう。近所にある幼稚園も園児募集に苦戦していると聞きました。
次回は区毎の入所申込数・入所数・保留数等を基に、各区や前年度の内容と比較していきます。