H29保育所等一斉入所結果分析、第1回は昨年と比較しつつ大阪市全体としての傾向を考察していきます。なお、昨年の分析記事はこちらからご覧下さい。

※平成26年度までの数字は保育所・認定こども園のみが対象となっていました。平成27年度からは地域型保育事情(保育ママ・小規模保育・事業所内保育)も対象となっています。その為、数字の連続性がやや不十分な点があることをご留意下さい。

申込数・入所数は共に増加、保留児童数は横ばいか

まずは年度毎の入所申込数・決定数等を見てみます。

1.待機児童数

区分H29H28H27H26H25H24
新規入所申込数15,10114,36113,91414,19513,64213,571
新規入所児童数12,11211,49110,98811,24410,57210,597
入所決定率80.2%80.0%79.0%79.2%77.5%78.1%
入所保留児童数2,9892,8702,9262,9513,0702,974
保留率19.8%20.0%21.0%20.8%22.5%21.9%
転所希望378368441333382335
育休中393363179181115
求職活動休止中438411323
主に自宅で求職中564659
一時預かり等対応幼稚園222013
企業主導型保育3
保育ママ・一時保育利用251176131
特定保育所希望等1,4301,4351,7531,4121,4511,844
待機児童数325273217210287664
就学前児童数125,693126,131126,686127,317128,099128,184
保育所等在籍児童数50,06248,82147,62346,15045,49744,669
在籍率39.8%38.7%37.6%36.2%35.5%34.9%

大阪市の保育所入所待機児童数について(平成29年4月1日現在)より作成(以下同じ)

大阪市における、過去6年間の保育所等入所申込数や待機児童をまとめました。

入所申込数は昨年より740人と大幅な伸びを示しています。H28までの5年間で増加した約800人に匹敵する数字です。

入所児童数も約600人増加しました。施設の新設を行ってきましたが、保育需要の高まりに追いついていない様子が窺えます。

入所保留児童は2,989人となりました。偶然の一致でしょうが、過去6年間の保留児童数はいずれも3,000人前後となっています。不思議な均衡です。

入所保留児童の約半分を占めるのが「特定保育所希望等」です。これは「他に利用可能な保育所等があるにもかかわらず、特定の保育所等を希望し、保護者の私的な理由により待機しているものや、利用可能な保育所等のあっせんに応じなかったもの」とされています。

問題となるのは「他に利用可能な保育所等」の定義です。区役所は「自宅から一定の範囲(概ね20-30分以内に登園可能)な範囲にある保育所等」を利用可能とみなしている様子です。

こうした保育所等に空きがあるにも関わらず、「もっと自宅に近い施設が良い」「きょうだい一緒の施設が良い」などの理由によって断った場合、「特定保育所希望等」に分類されている様子です。

しかし、多くの保護者は「自宅に近い、通勤先へ通いやすい保育所等」を希望するでしょう。当然です。たとえ登園可能な保育所等があったそていも、幾つもの保育所等を素通りした先にある保育所等、通勤先の反対にある保育所等には通わせにくいです。

強く希望していない保育所等に入所した後であっても、当初から希望していた保育所等へ転所できるのであれば、まだ救われます。

しかし、大阪市の入所選考基準では、こうした転所に優遇措置はありません。逆に合理的な理由がない転所希望の場合には、点数が1/2とされてしまいます(「地域型保育事業からの転所を除く」と言われています)。

一時的に認可外保育施設へ入園する方も少なくありません。認可外施設からの転所には、加点(5点ないし7点)措置が講じられています。加点を得た状態で希望順位が高い保育所等の空きを待つ、という方法も考えられます。

「待機児童数」は実態に即していません。保育所等への入所のしやすさは、「入所保留率(決定率)」「在籍率」を見て下さい。

0-1歳児の申込数が年々上昇

次に年齢毎の申込数等を見てみます。

保育所等新規入所申込者数の推移(毎年4月)

0歳児1歳児2歳児3~5歳児合計
H222,8124,4212,8063,14513,184
H232,7774,3552,6463,28213,060
H243,0264,6302,6503,26513,571
H253,0504,9442,7242,92413,642
H263,2275,1672,7243,07714,195
H273,2885,3142,5962,71613,914
H283,5145,5962,6592,59214,361
H293,8326,0692,6882,51215,101

3-5歳児の新規入所申込数は数年前から減少に転じています。一方、0-1歳児は大きく増加しています。

背景には保育所等へのニーズの高まりに加え、地域型保育事業(小規模保育等)の新設によって入所枠が広がった事があるでしょう。平成28年度では、0-2歳児の利用枠が985人(3-5歳児は1,005人)分も増加しています。

3-5歳児の申込数が減少しているのは、0-2歳児から入所する児童が多い為でしょう。地域型保育事業等の卒園児による3歳児入所ニーズはあるものの、全体から見ると小さな割合です。

しかし、市内中心部等で卒園児の入所先が見つからないケースが生じています。3歳児入所枠がない保育所も少なくなく、希望する施設に入りにくくなっています。

0歳児は16%・1歳児は39%・2-5歳児は46%が保育園児

次は在籍児童数を見ていきます。

保育所在籍児童数の推移(毎年4月)

保育所数こども園数地域型数0歳児1歳児2歳児3~5歳児合 計
H223822,5576,6088,07425,39142,630
H23384 – –2,5846,6358,33526,07143,625
H24388 – –2,7056,8158,30926,84044,669
H25395 – –2,7737,0258,52827,17145,497
H26405 – –2,9337,2048,77727,23646,150
H2740831943,0217,7109,28327,60947,623
H28417391203,2207,9049,40628,29148,821
H29420511403,4708,4069,64428,54250,062
住民数21,65321,55820,65561,531125,693
在籍率16.0%39.0%46.0%46.4%39.8%

在籍児童数や年齢別人口(平成29年3月末の住基台帳より)から、年齢別の保育所在籍率を算出しました。

これによると、0歳児は16.0%、1歳児は39.0%、2歳児は46.0%、3-5歳児は46.4%が保育所等に在籍している結果になりました。全年齢を通算すると、10人に4人が保育園児となります。大阪市における保育ニーズの強さが反映されています。

着目されるのは、2歳児と3-5歳児の在籍率に殆ど差が無いという点です。保育施設を利用する方は、殆どが2歳児までに入所しているのでしょう。

なお、区別の数字を見ていると、在籍率が50%前後となると待機児童数・入所保留数等が頭打ちになる傾向が感じられます。保育所等の整備率は第1目標が40%、最終的な目標は50%となるのではないでしょうか。

次回は区毎の入所申込数・入所数・保留数等を基に、各区や前年度の内容と比較していきます。