大阪市の保育所等利用待機児童数について(令和3年4月1日現在・速報値)が公表されました。
大阪市の保育所等利用待機児童数について(令和3年4月1日現在・速報値)
大阪市では、待機児童を含む利用保留児童の解消を最重要施策として位置づけ、待機児童解消特別チームを立ち上げ、この間、従来の手法にとらわれず、あらゆる手法を駆使してその解消に取り組んできました。
これらの結果、保育所等在籍児童数は前年度より698人増加し、55,000人となり、また、令和3年4月1日現在における保育所等利用待機児童数は、ゼロとはならなかったものの、令和2年4月1日時点の20人からさらに減少し、14人となりました。(以下省略)
2021保育所等一斉入所結果分析、第1回は昨年と比較しつつ大阪市全体としての傾向を考察していきます。なお、昨年の分析記事はこちらからご覧下さい。
申込数は急増、入所決定率は急落、在籍率は過去最高
まずは年度毎の入所申込数・決定数等を見てみます。
1.待機児童数
区分 2021 2020 H31 H30 新規入所申込数 14,582 15,690 15,093 14,940 新規入所児童数 11,907 12,390 12,318 12,437 入所決定率 81.7% 79.0% 81.7% 83.2% 入所保留児童数 2,675 3,300 2,721 2,503 保留率 18.3% 21.0% 18.3% 16.8% 転所希望 314 418 426 348 育休中 824 680 374 244 求職活動休止中等 199 347 422 460 幼稚園預かり保育 17 20 7 11 企業主導型保育 251 159 90 68 無償化対象認可外 – 0 5 5 一時保育利用 – 11 特定保育所希望等 1,056 1,656 1,369 1,300 待機児童数 14 20 28 67 就学前児童数 128,099 121,516 123,030 124,504 保育所等在籍児童数 55,000 54,302 52,804 51,271 在籍率 46.4% 44.7% 42.9% 41.2% 大阪市の保育所入所待機児童数について(令和3年4月1日現在)より作成(以下同じ)
大阪市における、過去4年間の保育所等入所申込数や待機児童をまとめました。
新規入所申込数は14,582人でした。昨年より1,000人以上も減少しています。
唯一にして最大の原因は「コロナ禍」です。保育所等を利用する事への不安感、そして失業や再就職の不調等によって保育を必要とする家庭が減少した事が要因です。
これにより、入所決定率は81.3%へ上昇しました。供給サイドではなく需要サイドが要因なので、手放しで喜べる状況ではありません。
一方で入所保留児童数は依然として高水準の2,675人です(大阪市の資料は転所申込を除外していますが、当サイトでは含んでいます)。
約4割は特定保育所等の希望者です。大きく減少したとは言え、1,056人という多さです。
特徴的なのは「育休中」の急増です。昨年の680人から今年は824人に増加しました。コロナ禍真っ只中の入所を避け、育休を延長した方が非常に多かったと考えられます。育休を延長しやすい0歳児申込数が473人も減少したのが裏付けています。
1歳児申込数は昨年とほぼ同値でした。これには、育休延長に必要となる「入所不承諾通知」を目的とした申し込みも一定数含まれているでしょう。
保育所等在籍率は引き続いて上昇し、過去最高の46.4%に達しました。2025年頃には50%へ到達するでしょう。大阪市の就学前児童の内、半数が保育所等に在籍する時代です。
保留児童の半数は「特定保育所希望等」
毎年、入所保留児童の約半数は「特定保育所希望等」です。
これは「他に利用可能な保育所等(概ね20~30分程度で登園できるとされる)があるにもかかわらず、特定の保育所等を希望し、保護者の私的な理由により待機しているものや、利用可能な保育所等のあっせんに応じなかったもの」とされています。
ただ、これは実情に反しているとも指摘されます。通勤経路から外れる、他のきょうだいと別施設となる、子供の特性にあった施設が良い等、登園が困難な場合が少なくありません。
仮に無理して入所しても、通い続けるのが難しいという話をよく聞きます。中には入所早々に退所し、認可外保育施設や企業主導型保育等へ移るケースもあると聞きます。
特定保育所希望等が多いのは、大阪市の保育所等入所選考基準も影響しています。
保育所から保育所へ転所する場合には、原則として基本点数が半分となってしまいます。反面、認可外保育施設等に在籍していると5-7点の加点が得られます。
希望にそぐわない保育所に入所すると、当初から第1希望としていた保育所へ移りにくくなってしまいます。
結果として「特定保育所等希望」を理由とする、待機児童から除かれる児童が多くなります。
大阪市に限らず、各自治体が発表する「待機児童数」は実態に即していません。保育所等への入所のしやすさは、「入所保留率(決定率)」や「在籍率」を見て下さい。
0歳児・2歳児申込数が急減、1歳児は横ばい
次に年齢毎の申込数等を見てみます。
保育所等新規入所申込者数の推移(毎年4月)
0歳児 1歳児 2歳児 3~5歳児 合計 H22 2,812 4,421 2,806 3,145 13,184 H23 2,777 4,355 2,646 3,282 13,060 H24 3,026 4,630 2,650 3,265 13,571 H25 3,050 4,944 2,724 2,924 13,642 H26 3,227 5,167 2,724 3,077 14,195 H27 3,288 5,314 2,596 2,716 13,914 H28 3,514 5,596 2,659 2,592 14,361 H29 3,832 6,069 2,688 2,512 15,101 H30 3,838 6,116 2,630 2,356 14,940 H31 3,916 6,329 2,462 2,332 15,039 2020 4,196 6,584 2,486 2,424 15,690 2021 3,723 6,496 2,118 2,245 14,582
年齢毎に非常に特色がある動きが現れています。
0歳児と2歳児の申込数が急減しています。0歳児はコロナ禍での入所を避け、育休を延長した方が相当数に上るのでしょう。気持ちは痛いほど分かります。
2歳児は育休とは関係しない年齢です。コロナ禍で就労先が見つからず、家庭保育を継続した方が多いと推測できます。
一方、この間に挟まれた1歳児申込数は横ばいです。育休を延長できなくて復職した方もいれば、入所不承諾通知を得る為に申し込んだ方も少なくないでしょう。
次回は区毎の入所申込数・入所数・保留数等を基に、各区や前年度の内容と比較していきます。