(10/17追記)
元施設長が書類送検されました。
保育中の生後6カ月の男児を目を離した隙に死なせたとして、警視庁は12日、東京都練馬区東大泉の認可外保育施設「若草ベビールーム」=閉園=の元施設長の女性(75)を業務上過失致死容疑で書類送検した。同庁への取材でわかった。
捜査関係者によると、元施設長は2018年10月3日午後1時半~同2時ごろ、施設内で昼寝をしていた男児の呼吸状態を細かく観察するといった注意義務を怠り、死亡させた疑いがある。男児は、昼寝中に吐いたミルクがのどに詰まり窒息死した可能性があるという。
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東京都練馬区の認可外保育施設で2年前に6カ月の乳児が急死した事件につき、両親が施設長を告訴しました。
東京・練馬の保育施設乳児急死 遺族が業過致死容疑で告訴 名前明かし「無念晴らす」
東京都練馬区の認可外保育施設「若草ベビールーム」(現在は閉鎖)で2018年に生後6カ月の男児が急死したことを巡り、男児の両親が2日、記者会見し、70代の女性施設長(当時)を業務上過失致死容疑で警視庁石神井署に告訴したことを明らかにした。同署は受理した。
両親は男児の名前を勇磨ちゃんと明かした。告訴状などによると、勇磨ちゃんは18年10月3日午後1時半ごろ、施設職員にミルクを飲ませてもらってから寝たが、約30分後にうつぶせ状態で心肺停止になっているのが発見された。搬送先で死亡が確認された。司法解剖で、吐いたミルクの誤飲による窒息死の可能性が高いことが分かったという。両親は、施設側が呼吸状態を細かく確認したり、あおむけに寝かせたりする注意義務を怠ったと主張している。施設は事故翌日に閉鎖された。
施設長は当時、同署に対し「気付いたらベッドでうつぶせになっていた。15分に1度は様子を見る態勢だったが、30分ほど目を離した」と説明していた。
この日の会見はオンライン会議システムが使われ、父親は「息子を失ってから心から笑うこともなく、無念を晴らすことだけを考えてきた。このような事故を起こさず、息子の死が無駄にならないためにも、施設長には相応の処分を受けてほしい」と話した。
両親は勇磨ちゃんを認可保育所に預けられず、事故の約1カ月前に若草ベビールームに入所させたという。施設長は事故後、通夜の会場や両親の自宅を訪れ「申し訳ない」と謝罪したというが、母親は「誠意は感じられなかった」と憤る。
都は19年5月から、検証委員会を開いた。今年3月にまとめた報告書によると、施設は40年にわたり、主に認可保育所に入れなかった子どもの受け皿になってきた。事故当時は19人の児童を3人の職員でみていたが、保育士資格を持っていたのは施設長だけだった。勇磨ちゃんら乳児が寝ていた部屋に職員はおらず、昼食を取るなどしていたという。報告書は「睡眠時の見守りの重要性を理解していない」と指摘した。
施設は数年前から職員数の不足などについて都から繰り返し指導を受けており、報告書は「経営が厳しいことから多くの園児を預かり、保育に無理が生じた」と批判した。
父親は「何度も指導していたのに運営できていたのは問題だ。行政側は、認可外の施設への監査を厳重にしてほしい」とも訴えた。
施設長の代理人弁護士は2日、取材に「告訴内容を確認できておらず、現段階ではコメントは控える」としている。
3日午後3時半ごろ、東京都練馬区東大泉7丁目の認可外保育施設「若草ベビールーム」に預けられていた生後6カ月の男児が死亡したと、都内の病院から警視庁石神井署に連絡があった。署によると、男児に目立った外傷はなく窒息死の疑いがあるという。署は詳しい死因や持病の有無を調べるとともに、施設職員らに詳しい経緯を聴く。
署によると、3日昼ごろ、施設で職員が男児にミルクを飲ませて昼寝をさせたが、寝ていた男児の様子がおかしいことに職員が気づき、近くの診療所に運んだ。当時、施設には複数の職員がいたという。男児は別の病院に救急搬送され、午後3時すぎに死亡が確認された。
東京都福祉保健局が公表している資料によると、若草ベビールームは1978年に事業を開始している。
若草ベビールームは練馬区東大泉7-37-6にありました。西武池袋線大泉学園駅に近い住宅街ですね。
地域では「しっかり見てもらっているのかとても不安だった」「認可に入る為に預けていた」との声が上がっています。
今、ご説明いただいた若草ベビールームですが、区には前から情報は上がっていたかどうかの確認をお願いしたいと思っていました。私の同僚で、3年前の若草ベビールームに入れていたお母さんがいまして、彼女に話を聞くと、しっかり見てもらっているのかとても不安だったと。なぜあの園に入れていたのか聞いたら、認可に入る1点が欲しいために0歳児から預けていたというのです。3年前から、利用者の間では不安要素はあったけれど、東京都が認識していたかどうかまで私たちはわかりません。区にそういう情報が上がっていたのか、教えていただいてもよろしいですか。
恒常的な保育従事者不足
事件後に東京都が作成した東京都教育・保育施設等における重大事故の再発防止のための事後的検証委員会報告書に、これまでの立入調査で指摘された事項や問題点・課題が記されています。を作成しました。
毎年の立入調査では、非常に多くの項目が指摘されています。
特に直近は2年連続で「契約入所児童数に時間預りの数を加えた入所児童数に対する保育従事者数が不足している。」と「入所児童1人当たりの保育室面積(1.65㎡以上)が不足している。」と指摘されているのが目に止まりました。
これはすなわち、狭い保育室で多くの園児を預かり、そして適切な保育を行うのに必要な保育従事者が不足していたのを意味しています。
売上に繋がる預かり園児数を最大化し、保育士不足と同時に人件費を削減していた姿が浮かんできます。
認可外保育で発生する重大事故の多くは「保育従事者不足」が一因となっています。大人の目が足りず、園児の呼吸チェック等が不十分になっていました。
若草ベビールームでも同様の事態が起きていました。
同報告書は本事故の課題も指摘しています。
本検証委員会における検証を通じて、本事例については主に以下のような課題が明らかとなった。
・睡眠時の見守りの重要性や睡眠チェックの重要性が理解されておらず、寝返りを始めた乳児のリスクについても、認識が不足していたこと。
・施設の経営が厳しいことから園児を多く受け入れ、その結果、保育に無理が生じ施設運営が疎かになっていたこと。
・立入調査による指摘に対し、改善状況報告により一旦改善は行われるものの、次年度の立入調査では、ほぼ同様の項目について、再び指摘を受けていたこと。
・当施設に様々な指摘が入っていたことを、当該児の保護者は知らず、都のホームページで指導監査結果が公開されていることが、保護者一般まで浸透していなかったこと。
こうした項目がクリアできていたら、本事故は発生しなかったでしょう。
認可外保育施設の経営は厳冬
今後、認可外保育施設の経営は厳しくなる一方だと考えられます。
幼児教育・保育の無償化により、認可保育施設への入所を希望する傾向は更に強くなっています。施設へ公的補助が行われる結果、保育料が一定額に抑えられる企業主導型保育施設へのニーズも底堅いです。
ここに「少子化」が加わります。既に大阪市内の未就学児は横ばいから減少に転じています。東京23区の未就学児も数年中に減少へ転じるでしょう。
更に現在は「コロナ禍」が重なります。大阪市内でもコロナ禍による閉園を決定した認可外保育施設が相次いでいます。
今後も閉園する認可外保育施設が相次ぐのは避けられません。今後は企業主導型保育や地域型保育事業へ移行する、もしくは特色ある教育や保育に特化する等の対策が求められそうです。
亡くなった勇磨ちゃんのご冥福をお祈りします。