大阪市北区・中央区で保育所等の新設が難航しています。「賃料が高騰し、保育事業が成立しない」との声が出ています。

タワマン増えたが保育所足りず 高賃料が壁、補助策検討

大阪市は中心部で保育所を運営する事業所に対して、賃料や施設改修費の補助を引き上げる検討を始めた。タワーマンションの建設が集中しているが、付近の賃料は高く保育所の新設が停滞。待機児童対策が喫緊の課題となっているためだ。

対象は梅田周辺を含む北区と大阪城公園や心斎橋を含む中央区。現在、市内の保育所に対して開設から5年間は年間1500万円を上限に賃料の補助を行っている。防音や防水の施設改修費も2400万円を上限に補助。こうした補助の期間を延長したり、上限を引き上げたりすることを検討している。

不動産経済研究所大阪事務所によると、2017年以降に市内で完成した25階以上のタワーマンション19件のうち、18件がこの2区に集中。市は2区を対象に昨年度2カ所、今年度7カ所の保育所を一般公募したが、応募はなかった。

市の試算では、2区は隣接区に比べて賃料の坪単価の平均が2倍程度にのぼるという。市の集計では今年4月時点で、希望した認可保育施設に入れなかった「利用保留児童」は24区で計2295人で、そのうち北区は219人で市内最多。中央区も87人にのぼり、計1割超を占める。

26日に市役所で開かれた対策会議では北区と中央区について事業者から「地価・賃料が大幅に高く、事業として成り立たない」とする声があったことが報告された。松井一郎市長は「これからもマンションの建設が続く。都心部のてこ入れが必要だ」と述べ、対策を急ぐ考えを示した。

似たような課題を抱える東京都は独自支援策をすでに実施。17年度から賃料は年額最大4500万円まで補助したり、開設6年目以降でも2200万円まで補助したりしている。導入後、保育所新設はそれまでの約1・5倍に増えたという。

https://digital.asahi.com/articles/ASMCX5TVXMCXPTIL022.html

「26日に市役所で開かれた対策会議」とは、第12回大阪市待機児童解消特別チーム会議です。

事業者からは「保育所用途に適した土地・建物が少ない。」「地価・建物賃料とも大幅に高く、保育事業として成り立たない。」「他都市は大阪医より補助が充実。」「改修費が高額化している」「分園整備補助金を拡充すべき」との声があったそうです。

第12回大阪市待機児童解消特別チーム会議

北区や中央区のテナント賃料、本当に高いですね。坪あたり2万円を越えています。福島区・西区・天王寺区とは倍程度の開きがあり、2区の賃料は突出しています。

保育所運営による収入は、在籍園児数や年齢等によって定められています。その為、賃料が高い地域は保育所経営が難しいのが実情です。

また、この資料で着目すべきなのは「将来を見据えた場合、小規模保育事業所より分園整備が効果的であり」という部分です。

当ウェブサイトで繰り返し指摘している通り、多くの子育て世帯は「6年保育を行う保育所」を第1希望としています。

小学校入学までの保育が保障され、同じ環境で一貫した保育が行われ、第2子以降はきょうだい加点で入所しやすく、2箇所保育も避けやすく、施設や行事も充実している為です。

小規模保育で特に大きなネックになるのは「3歳児からの転所」です。優先入所枠がある施設は僅かです。無事に転所できるかは、1月末まで分かりません。

その点、本園への進級が保証された分園であれば安心できます。行事等も本園と共同で行われる事が多く、6年保育の保育所に準じた施設と言えるでしょう。

少子化が進展すると、入所希望者が真っ先に減少するのは地域型保育事業です。在園中の閉園も現実味を帯びます。

しかし、保育所分園であれば、本園に吸収する形で保育を継続できます。

ただ、分園と本園が物理的に離れていると、遠く本園へ進級するのは容易ではありません。分園と本園の距離要件を設ける等、子育て世帯の実情に即した制度も重要でしょう。

大阪市は賃料補助の更なる引き上げを検討しています。北区や中央区等で保育施設の新設を促すには、避けて通れない手段です。

2020年度保育所等一斉入所の中間発表でも、北区や中央区は非常に入所しにくい状況が読み取れました。

【2020保育所等一斉入所申込分析】(1)大阪市(北区~浪速区)をざっくり/2-3歳児倍率が急上昇、幼保無償化の影響?

仮に賃料補助が増額されても、こうした地域では今後も待機児童問題は継続するでしょう。子育て世帯の方は、地域の保育・教育事情を十分に調べて下さい。