先日発表された2019年度全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果、大阪市は3年連続でほぼ最下位でした。

これについて、2019年8月1日に実施された大阪市長の記者会見で突っ込んだやりとりがありました。

気になった点につき、記者会見の内容を引用してご紹介します。

全国平均より概ね-5%

今年の結果も振るいませんでした。全国平均より5%前後(実数だと3点)ほどのマイナスでした。

○市長

はい、私の方から3点です。今年度の全国学力調査の結果が公表されたので報告します。昨年度の厳しい結果を受け、教育委員会では政令市15位相当を目標に様々な取組を進めてきましたが、小学校の算数ではその目標を達成したものの、そのほかでは達成はかないませんでした。しかし、数字に下線があるところは政令市で最下位だったところですが、小学校の国語を除く全ての教科において、最下位は脱出いたしました。

しかしながら、全国との差が大きい教科もあり、大阪市の学力状況はまだまだ厳しい状況にあると思っています。私といたしましては、教育委員会にはその要因をしっかり分析した上で取組を進め、今年度の結果を改善への第一歩としてつなげてほしいと考えています。

昨年度から全小中学校で取り組んだことは大きく二つあり、一つは、指導主事などが訪問をし、各種学力調査の分析や授業改善へのアドバイスを行ったこと。

もう一つは、子どもたちの苦手分野だった「書く力」や「数学的に考える力」に重きをおいて、振り返りプリントを実施したことです。

一方で、大阪市には400校以上の小中学校があり、私も視察に行きましたが、日本語指導が必要な子どもたちや放課後の補充学習が必要な子どもたちが多い学校・エリアがあるなど、課題や実情が多岐にわたっており、全市一律の対応では大きな改善につながらないと考えています。

とは言え、大阪市の結果は全国平均より大きく劣っています。詳しい内容は大阪市教委のウェブサイトに掲載されています。

「平成31年度(令和元年度)全国学力・学習状況調査」 大阪市の結果について

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https://www.city.osaka.lg.jp/kyoiku/page/0000476483.html

指導主事による教員へのアドバイス、「振り返りプリント」が効果を発揮?

一方、僅かながら光明も見えてきました。指導主事によるアドバイスと振り返りプリント(下記参照)が効果を上げたと指摘しています。

平成30年度 全国学力・学習状況調査の結果を踏まえた「学力向上授業研修会」に係る資料

http://www.ocec.jp/center/index.cfm/29,18843,html

これらは当然の対策であると同時に、これまで十分に実施していなかったのかと思うと愕然とします。学力向上案を各学校に委ね、児童生徒が十分な復習を行わなければ、学力向上は画餅に終わります。

ただ、それでもほぼ最下位という順位に変わりはありません。

教育委員会の担当部署をブロック分割?

また、今後は教育委員会の当該部署で担当地域毎への組織改編を行い、地域毎に対策を講じるそうです。

○市長
私といたしましては、現場との一体となった実効性のある取組に加えて、抜本的な組織改革を行い、教育委員会事務局を四つのブロックに分け、エリアごとの実情や各学校の状況をしっかり分析をし、きめ細やかな支援策を展開することが必要であると考えています。大阪市の厳しい学力状況を克服するためにも、4ブロック化に向けてスピード感をもって進めてもらいたいと、こう思っています。

○市長
ええ。だから、やっぱり小中学校の教育に関する部分、こういうものを4ブロック化をして、責任者を明確にしていきたいと思います。

○市長
特別区に、今、我々が考えている四つの特別区のそのエリアを設定するのが、一番分かりやすいのかなと思いますね。

該当するのは指導部初等教育担当小学校教育グループ・中学校教育担当でしょうか。Aブロック初等教育担当・Bブロック・・・・というイメージですね。

大阪市は学校毎の学力差が非常に激しくなっています。全国平均を大きく上回る学校がある一方、大阪市平均を大きく下回る学校もあります。

ただ、特定のブロックにある学校の学力が高く、それ以外のブロックの学校は低いとも限りません。ブロック内でも学力差があるのが実情です。

スピード感を持って対策するのであれば、地域分割ではなく学校毎の特徴に応じたグルーピングの方が適当だと感じました。

人事評価は延期

学力テストの結果を人事評価と結びつける制度につき、今年度からの試行実施及び来年度からの本格実施を先送りする意向だそうです。

○教育委員会事務局 教職員制度担当課長

昨年度の総合教育会議の議論においては、新たな人事評価制度について、今年度の試行実施を経て、来年度から本格実施することとなっておりました。

今年度の全国学力学習状況調査の結果も見ながら、より学校現場の実態に即したモチベーションを向上させる制度とするよう検討を重ねているところでございまして、まだ整理ができていない状況でございまして、試行実施は行ってございません。

昨日市長も仰っておられましたように、今回の結果を細かく分析をいたしまして、子どもたちの学力向上に資するより良い制度となるように、今後のスケジュールも含めて十分に検討してまいりたいと考えております。

見直す理由は「学力向上の兆しが見えてきた」からだそうです。

○朝日新聞 玉置記者
活用するということですね。見直しの理由としては、手放しでは喜べないけど学力向上傾向が見られるからということでよろしいんでしょうか。

○市長
そうです。

校長は簡易評価、市教委担当者は重く評価?

とは言え、学力テスト等の結果を評価に反映させる方針そのものに大きな変化はありません。

たとえば各校長に対しては点数や結果による評価を行い、良い結果を出した校長には様々なインセンティブ(追加予算?)を与える制度を検討しています。

各学校や地域には様々な特性等があります。各校長を単年度で評価するのは難しいと考えているそうです。

○市長
やっぱり各学校においても、今回学力調査ではっきりしてるのは、もう何もしなくても平均点以上取れる、そもそもが教育環境も良くて、保護者も教育指導が熱心で、そういう環境にある学校と、日本語がおぼつかない学校もありますから。だから、それは各学校の校長がその責任を全て担う中でね、やっぱり単年度の点数だけで評価できるっていうのは、ちょっと厳しいんじゃないのかなとこう思ってます。

○市長
単年度、単年度で全部評価するとなると、試験問題のヤマかけみたいになるんじゃないのと。我々世代の時は、僕らも中学校や高校の時に期末試験とかなんとかやってる時に、やっぱりその時なんとかいい点数取ろうと思って、いろんなヤマかけてやってきたということもあるんでね。で、それは基礎学力向上につながってんのかどうかっていうのはちょっと分からない、違うんじゃないのっていう思いもあるんで、やはり複数年かけて評価していくのがいいのかなと、僕はそう思ってるということです。

○市長
方向性としていい結果を出してきた校長に、やっぱりある程度のインセンティブを与えて、さらに向上できるようなそういう学校現場をつくってもらえる、そういうやる気の出るような、そういう制度をつくっていきたいと思ってます。

○市長
いや、評価はするよ、ええ。ただ、それが校長単位で、校長の報酬に直結させるかどうか、そこはもう一度考えましょうということです。評価はやります。

学力テストの結果が人事評価と結びつけられるのは、各ブロックの責任者や担当者になりそうです。

○市長
僕はそのブロックの責任者、やっぱり教育委員会本体にいるブロックの責任者、で、この責任者が、一番結果をつくっていく要だと、こう思ってますからね。いや、校長の責任を回避するんじゃなくてね。

やっぱり学校、これ小中学校視察しましたけど学校単体ではね、なかなかね、学力も体力もそうなんですけども、単体でそういうものを伸ばしていくにはね、限界があって、どうしてもそれに伴って教育委員会組織の協力とか、もっと言うならば予算措置が必要だとか、そういうものが全部セットになってきますから。

だから、もちろん教育委員会、校長の評価の中に学力っていうのはこれは入れ込んでいきますけども、校長だけでできるもんじゃないと、こういうふうには思ってますので、これはやっぱり大阪市特有の事情といえば特有な事情だと思います。。

○市長
そのブロック責任者ももちろん評価される対象になります。

外国にルーツを有する児童の日本語教育

大阪市内では外国にルーツを有する児童が少なくありません。様々な事情から日本語力が劣り、学力に暗い影を落としているのは否めません。

○市長
そこにも力を入れていくと。だからこないだ、市長就任間もなくね、そういう学校を視察させてもらいましたけども、そこで校長と話する中でね、やはり日本語教育を拡充するための予算措置、要は人の手配を求められたので、それはもう特別扱いしていきますよということは校長にも伝えてるから。

だから、そういう子どもたちが、要は基本となる語学力がないと、日本、その基礎教育も学べませんから、基本となる語学力がないと。だからそれはもうやはり、その子どもたちが生き抜く力をつけてくれて、要は将来支えられる側じゃなくて支える側になってくれることが大阪にとって非常にプラスですから。

そのための、本当に最初のスタートとして語学力が必要な訳ですから、その部分についてはそういう学校、そういう特色がある学校については、その部分で力を入れていきたいと思っています。

外国にルーツを有する児童が在籍している割合は、学校によって非常に大きな差があります。特に在籍率が高いと有名なのは、大阪市立南小学校ですね。

ミナミの繁華街のど真ん中にある市立南小学校では約4割の児童が外国にルーツを持っています。

https://www.mbs.jp/voice/special/archive/20171121/

こうした地域や児童へ人と金を集中的に投入しなければ、児童本人や大阪市にとって大きな問題となってしまいます。

当たり前の対策が出来ていなかった大阪市

市教委担当部署のブロック分割やテスト結果の人事評価への反映には若干の疑問を感じます。

特にブロック化は大阪都構想による区割りと一致しており、地域毎の教育事情を軽視したと感じます。

一方、学力テストの点数が僅かでも上向いた要因として指摘している理由は、極めて常識的な内容でした。

この「やって当たり前」の対策を学校や市教委が十分に行わず、各家庭に委ねていたのが学力低迷の一因ではないでしょうか。

ただ、学校で学習させるならまだしも、復習プリントを宿題化するのは難しい側面があります。

お世話になっている小学校の先生方が口を揃えて話しているのは、「多くの宿題を出しても、やってこない・できない子供がとても多い」という事実です。

学校がやる気を出しても空回りしてしまうのが実情です。

習熟度別授業、授業時間外での質問タイム、授業終了後の勉強会等、いかに「学校で勉強させるか」かが重要だと感じています。

特に重要なのは、低学力層の引き上げでしょう。学校で学習習慣を身につけ、自学自習できる力を身につけるのが大切です。