子育て支援策を強化している大阪市、新年度からは妊婦健診の補助額を更に引き上げる方針を固めました。全国最高水準に到達する見通しです。

大阪市 全国一の妊婦健診補助へ

子育て世代への支援を強化しようと、大阪市は、妊婦健診への補助の金額を引き上げる方針を固めました。市は、こうした方針を来年度の予算案に盛り込むことにしていて、妊婦検診の公費負担額は、全国の自治体で最も高い水準になる見込みです。

大阪市は、現在、妊婦が妊娠の段階に応じて適切な健診を受けてもらえるよう母子手帳を交付する際に受診券を発行して、あわせて10万円あまりを補助しています。

健診は、妊娠が分かってから出産までに定期的に14回前後受けることが望ましいとされていますが、診察は、公的医療保険が適用されない自由診療のため、市からの補助を受けても妊婦が一部を自己負担しているのが現状です。

こうした中、大阪市は妊婦に赤ちゃんの成長を実感して安心して出産してもらおうと、来年度から、お腹の中の赤ちゃんの状態を診る超音波検査への補助を4回分増やすなどあわせて12万円あまりに引き上げる方針を固めました。

大阪市は、現在編成している来年度の予算案にこうした方針を盛り込むことにしていて、予算案が可決されれば、妊婦健診の公費負担額は、全国の自治体で最も高い水準になる見込みです。

https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20190116/0011558.html

妊婦健診に対して大阪市が公費で負担している内容・金額は、下記の通りとなっています(平成30年12月時点)。

受診票妊娠月数妊娠週数健康診査の検査内容公費負担額
38~11基本的な妊婦健康診査、貧血検査、血液型検査、不規則抗体検査、梅毒血清反応検査、B型肝炎抗原検査、C型肝炎抗体検査、HIV抗体検査、風しんウイルス抗体検査、血糖検査、子宮頸部細胞診、超音波検査24,840
412~15基本的な妊婦健康診査3,750
516~19基本的な妊婦健康診査3,750
620~23基本的な妊婦健康診査、超音波検査8,530
724~27基本的な妊婦健康診査3,750
基本的な妊婦健康診査、貧血検査、HTLV-1抗体検査、血糖検査、性器クラミジア検査、超音波検査16,470
828~31基本的な妊婦健康診査3,750
基本的な妊婦健康診査3,750
932~35基本的な妊婦健康診査3,750
基本的な妊婦健康診査3,750
1036~39基本的な妊婦健康診査、貧血検査、B群溶血性レンサ球菌検査、超音波検査13,590
基本的な妊婦健康診査3,750
基本的な妊婦健康診査3,750
基本的な妊婦健康診査3,750
合計100,930

http://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/page/0000160790.htmlより作成

これらに加え、更に「お腹の中の赤ちゃんの状態を診る超音波検査への補助など」が公費で負担されます。

一つは「新生児聴覚検査」でしょう。

聴覚障がいは早期に発見され適切な支援が行われた場合は、聴覚障がいによる音声言語発達等への影響が最小限に抑えられる。このため、聴覚障がいの早期発見・早期療育を図るために、全ての新生児を対象として新生児聴覚検査を実施する。

平成30年度当初予算が2258.2万円だったのに対し、平成31年度予算案では7882.1万円へ急増しています(詳細はこちら)。

また、既に実施している妊婦健康診査での公費負担額その物も引き上げられそうです。

妊産婦健康診査事業の平成30年度当初予算が24億1182万円だったのに対し、平成31年度予算案では27億8812万円へ増額されています。

両項目の増額幅を合算すると約4.3億円となります。大阪市での2017年の出生数21,457人で割ると、約2万円となります。増額前の公費負担額10万円と増加後の負担額12万円との差額とほぼ一致します。

妊婦健診助成額は8年間で2倍強に

実は2011年度までの大阪市の妊婦健診への助成額は57,540円でした。全国最低レベルであり、妊婦が多額の自己負担を強いられてきました。

2012年度からようやく全国平均と同水準である100,930円に引き上げられました。

出産前の妊婦健診への助成が全国最低レベルの大阪市が、2012年度から自己負担を実質無料化するよう助成額を大幅に増やす方針を決めた。約6億円の追加財源が必要だが、経済的な理由で受診しない例や児童虐待との関連性が指摘されており、必要性が高いと判断した。

妊婦健診は母子の健康管理のため、出産までに14回受けるのが望ましいとされ、費用は1回5千~1万円程度。健康保険は適用されない。国や自治体が8~9割超を助成する地域が多いが、大阪市の助成額は19政令指定市で最低の1人あたり5万7540円。全国平均の9万4581円より大幅に低いため、市は約10万円に拡充する方針。

大阪府や産婦人科医らの調査によると、2010年には、妊婦健診の受診回数が3回以下などの実質的な「未受診妊婦」が500人に1人にのぼった。約3割が「お金がない」など経済的な理由を挙げていた。

大阪市はまた、6歳までの子どもの通院医療費助成の対象を所得制限付きで15歳まで拡大。事業費約51億円を新年度予算に計上し、11月から実施する。

https://www.asahi.com/national/update/0106/OSK201201060194.html(リンク切れ)

数年前まで全国的に子育て支援策は手薄でしたが、それに輪を掛けて大阪市の子育て支援策は非常に弱いものでした。大阪市に限らず、子育て世帯や若年世代を支援する社会的リソースが余りに貧弱でした(現在も若年世代の支援は非常に弱いですが)。

こうした状況では大阪市内から子供が減り、次々と学校が統廃合されるのも仕方ありません。

数年前に流行した「野良妊婦」という言葉を覚えているでしょうか。妊娠後も受診せず、出産直前に病院へ運び込まれる妊婦を意味しています。自己負担無く受診できれば、野良妊婦は死語となるかもしれません(無くなって欲しい言葉です)。

また、様々な問題を抱えている妊婦に対し、医療機関を通じて早めにアプローチできる効果もあります。出産前から存在を把握できれば、出産後の子育て相談にも繋げられるでしょう。

正直なところ、既に子供がいる世帯としては「これから子育てする世帯は支援策が充実していて羨ましい」と感じます。僻んでも仕方ありません。