果たして上手くいくのでしょうか。幼稚園サイド・保護者サイド、お互いにハードルがありそうです。

幼稚園に2歳児受け入れ 政府が待機児童対策

 文部科学省と内閣府は幼稚園が通常より1歳年少の2歳から受け入れやすい仕組みを整える。保育所入りの順番待ちを余儀なくされる待機児童は1~2歳児が多く、既存の幼稚園を活用しながら減らしていく狙い。出産から一定期間を経て社会復帰をめざす女性を支援し、人口が減少するなかで労働力が落ち込まないよう工夫する。

 文科省などは幼稚園が2歳児を預かれるよう施設を改修する費用を補助する方針。政府の2018年度予算に関連費用を盛り込むよう財務省に求める。要望段階で金額を示さないが、数十億円かかると見込まれる。

 幼稚園は年度初めに3~5歳の子どもを午前10時から午後2時まで預かるのが基本。保育所の8時間より短く、共働き世帯は使いにくい。幼稚園はミニ保育所を併設したり、保育所機能をもつ認定こども園に移行したりできる。ただし保育所と同じように0歳児から受け入れるのが条件だ。

 0歳児を預かるには子どもがはっても心配ない「ほふく室」が必須。体調の急変も起きやすく、保育士数も多く求められる。0歳児から受け入れるには設備と人材の両面で相当な準備が要り、幼稚園が保育所の機能をもつのを難しくしていた。

 文科省などは来年度にも幼稚園が2歳児の保育だけ加える運営形態を「幼稚園接続保育」などと名付けて解禁する。2歳児を預かるための保育室を置く改修費用を補助する考え。改修費の半額程度を補助する可能性がある。2歳児を預かる事業は保育所として従来ある補助金も受けられる。

 2歳児を受け入れる幼稚園は定員管理を柔軟にし、保育士を多数採用しなくて済むようにする。開所日数が短めでも、夏休みなどに開いていればよい特例もつくる。

 通常の幼稚園が午後5時ごろまで子どもを預かる「一時預かり」を拡充。2歳児を8時間預かることができるようにして両親が働くケースに対応しやすくする。保育料は世帯所得によって月3万~4万円の見通し。

 厚生労働省は10月から育児休業を最長2年までに延長することを決めている。子どもが満2歳になるまで育休を取る親が増えそう。2歳児を預ける需要が急増するとみて受け皿づくりを急ぐ。

 幼稚園は全国1万877カ所あり約130万人が通う。都市部に多く、保育所のように子どもを預かれるようになれば、東京都に多い待機児童が劇的に減るといわれる。2万人を超す待機児童の7割以上を占める1~2歳児への対応は少子化対策のカギでもある。

 文科省によると認定こども園への移行を望む幼稚園数は伸びていない。経験のない0歳児などを預かることへの不安が背景。2歳児であれば今も幼稚園に通う3歳児に近く、幼稚園側の負担も比較的小さいとみられる。

https://www.nikkei.com/article/DGXLASDF25H0S_Q7A830C1MM8000/

幼稚園では基本的に3~5歳児教育を、多くの園では満3歳児(年度途中に3歳に達した児童)教育を、そして一部の園では2歳児教育を行っています。

例えば大阪市内では、城南学園幼稚園(同一法人が大阪総合保育大学を運営)が2歳児クラスを設置しています。

プレ幼稚園!
スムーズな幼稚園生活へつなげるための
2歳児「たんぽぽ組」

安心して遊べる場所、清潔な環境を提供するとともに、幼稚園入園前に、集団生活にスムーズに移行できるよう、一人ひとりの発達にあった独自の保育・教育を展開。遊びを通したさまざまな体験から、楽しく自然に集中力や創造力をはぐくみます。ご家族の方とのコミュニケーションも大切にし、個々の生活リズムに配慮しながら、基本的な生活習慣が身につくよう導きます。

ひと足早い集団生活を、先生やお友だちと一緒に楽しみます。 幼稚園の3歳児・4歳児・5歳児と一緒に生活し、色々な事を体験します。 いろいろな遊びを通じて、お子さんの発育・発達を促し、情緒の安定、自立の芽生えを大切に育みます。 家庭と協力して、自立の基礎である基本的な生活習慣を身につけます。

期間 4月~3月(春・夏・冬季休業以外)
曜日 月・火・水・木・金(祝祭日はお休みです)
時間 9:30~13:00
場所 城南学園幼稚園1階 保育室
保育料 18,000円/月

http://jonan.jp/youchien/support/support_01.html

文部科学省と内閣府の案では、2歳児(年度中に満3歳児に達する)から預かれる仕組みを検討しているそうです。満3歳児クラスを年度初めに前倒しするイメージでしょうか。

2歳児と3歳児は大違い

日経新聞の記事では「2歳児であれば今も幼稚園に通う3歳児に近く、幼稚園側の負担も比較的小さいとみられる。」と記載されています。しかし、2歳児と3歳児は非常に大きな違いがあります。

大きな違いの一つは「オムツ」でしょう。3歳児クラス(いわゆる年少)では、日中はオムツを外している子供が少なくないでしょう(実感としては半数程度?、月例によっても違います)。

しかし、2歳児クラスでは、大半の園児が終日に渡ってオムツを使用しているでしょう。排泄等の手伝い・処理が全て職員にのし掛かってきます。

また、園児に対して必要な職員数も大きく違います。幼稚園の職員配置基準は、原則として1学級(35人以下)あたり専任教諭1人が必要とされています。

これに対し、保育所の3歳児では園児20人につき1人、そして2歳児では園児6人につき1人の職員配置が義務づけられています。

幼稚園で2歳児も預かるのであれば、必要な職員数は保育園と大きく変わらないでしょう。3歳児に対する負担とは大違いです。

保護者目線を欠いた対策

本案の更に大きな問題は、保育を必要とする保護者目線が欠けている点です。

保護者が保育所に求めている点の一つは「十分な保育時間」があります。幼稚園は預かり保育等を組み合わせても、最長で朝8時から夜6時頃までとなるでしょう。共働き世帯のニーズに応えられるでしょうか。

長時間の預かり保育を使用している園児は多くないとも聞きます。幼稚園は専業主婦・短時間のパート勤務が多く、保育所と比べると極めて早い時間に子供は帰宅しています。

また、幼稚園は平日や日中に保護者の協力を求める行事が多いと聞きます。先日、近所の幼稚園を利用している方から「子供の遠足で○○公園まで一緒に行った」「○○のお手伝いで今日はずっと幼稚園にいた」という話を聞きました。保育所との世界の違いに驚いてしまいました。

水と油とまでは言いませんが、保育所と幼稚園は文化が違うのかと感じました。

毎年、少しずつ幼稚園が認定こども園へ移行とし、0-2歳児の保育を実施しています。保育所等を探している保護者にとっては、選択肢が広がるので好評でしょう。

しかし、こども園を検討している方には「3歳児からはどうしますか?」と注意喚起をしています。3歳児からは幼稚園へ進級しても、従来と同じ勤務時間で問題ないのでしょうか。

幼稚園に進級しても時間が合わず、3歳児からは別の保育所等に移る方は少なくありません。上手く移れずに、困ってしまう方もいます。

記事では「子どもが満2歳になるまで育休を取る親が増え、需要が急増するとみて・・・・」とされています。満2歳児まで育休を取得できるのは、大手企業が中心となるのではないでしょうか。中小では言い出しにくく、個人事業では育休がありません。

大手企業で満2歳まで育休を取得し、復職後は午後5時頃までに幼稚園へ迎えに行くのは可能なのでしょうか。短時間勤務を組み合わせればまだしも、残業ありの通常勤務では困難です。

本案は「勤務時間が短くて保育所等へ入所できず、保育所ほどの長時間保育を必要とせず、2歳児から施設を利用したい」という世帯に合致するのではないかと感じました。専業主婦・短時間のパート勤務という、幼稚園の主たる利用者と一致します。

育休2年に対する施策であれば、保育所の0歳児クラスを大幅に縮小(育休2年取得できない方のみが入所可)し、他の年齢の定員数を増やす方がスマートです(保育室の広さや人員配置等、難しい話ですが)。