現役世代への重点投資を重視する大阪市の吉村市長の下、幼児教育の無償化施策を進めています。従来は保育所や幼稚園等に通っている4-5歳児のみを対象としていましたが、一定の基準を満たす児童や認可外保育施設も対象とする制度が始まりました。

制度の具体的な内容は、1年ほど前に取り上げた記事をご覧下さい。

【大阪市政】認可外保育施設(基準あり)も4-5歳児教育費無償化へ

無償化の1つの類型として、「保育所保育指針等に準拠した一定の教育の質が認められた認可外保育施設を利用している」が掲載されています。

大阪市は昨秋から制度を適用する施設を募集しました。しかし、一定の教育の質を認められたとして教育費相当分が無償化されたのは、僅か7施設のみでした。

こうした状況を朝日新聞が取り上げています。

幼児教育・保育の無償化を巡り、認可外の保育施設をどこまで無償化の対象とするか検討する政府の議論が本格化している。認可保育所と違って運営の形態もサービスも多様で、夏までに制度の詳細を決める方針だ。一方、先駆的に幼児教育の無償化を始めている大阪市では2017年度、市内に約300ある認可外施設のうち7施設を一部無償化の対象と決めた。「線引き」された施設を訪ねた。

「I like soy sauce」(私はしょうゆが好きです)

大阪市港区の認可外保育施設「キンダーキッズインターナショナルスクール大阪ベイ」。1月末、5歳児たちが餅を食べながら英語で会話していた。

スクールは国内21校、カナダに1校。大阪市内の2校は2017~18年度、4、5歳児の教育費相当額(年額上限30万8千円)が無償化されることになった。大阪ベイ校には0~6歳約100人が通う。外国人講師と日本人保育士の2人担任制で、同校の料金は5歳児で月7万円から。追加料金を払えば受験対策などの課外授業もある。

「あえて認可外施設で運営しています」。運営する「キンダーキッズ」(大阪市北区)の山本敦子ゼネラルマネジャーは説明する。幼稚園教育要領でなく独自のカリキュラムで運営し、認可保育所としては外国人講師が日本の保育士資格を持っていないことから国の基準を満たさないためだ。(以下省略)

https://www.asahi.com/articles/ASL365HPRL36PTIL037.html

大阪市は無償化対象となった認可外保育施設を公表しています。(※4/10に2施設が追加されました)

キンダーキッズインターナショナルスクール 大阪本校
住所 : 大阪市北区錦町4-33
電話番号 : 06-6136-9980

愛の恵幼稚園
住所 : 大阪市北区天神橋8-4-19
電話番号 : 06-6353-9615

にじのとり保育園 分園
住所 : 大阪市北区同心1-9-13
電話番号 : 06-6356-1135

みるきー幼保園(ふくしま園)
住所 : 大阪市福島区福島5-16-15 福島宮脇ビル1F
電話番号 : 06-6454-0366

ビクトリアキッズ・イングリッシュアカデミー
住所 : 大阪市中央区農人橋2-4-12 ナカイ農人橋ビル301
電話番号 : 06-6360-9313

大阪YMCA英語幼児園 土佐堀園
住所 : 大阪市西区土佐堀1‐5‐6
電話番号 : 06-7711‐0080

キンダーキッズインターナショナルスクール 大阪ベイ
住所 : 大阪市港区弁天1-2-2 ORC200 2番街8F
電話番号 : 06-6599-0050

大阪YMCA英語幼児園 天王寺園
住所 : 大阪市天王寺区南河堀町9-52
電話番号 : 06-6779-8404

こどもの園・ぎんのすず ジニアス園
住所 : 大阪市阿倍野区松崎町2-2-14
電話番号 : 06-6655-0410

認可外保育施設における幼児教育の無償化について
http://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/page/0000398015.html

選定された認可外保育施設7か所の内、半数以上の4か所は英語教育を重視する施設です。英語教育の充実さが「一定の教育の質」として認められやすかったのでしょうか。

残り3施設の内、2か所は母体となる認可保育所・幼稚園があります。母体園の充実した教育を認可外保育施設でも展開しているのでしょう。

認可外保育施設が母体となっているのは、にじのとり保育園のみでしょうか。待機児童問題が深刻な北区紅梅町にあり、多くの方が利用されていると聞いています。

私自身はもっと多くの施設が対象となると予想していました。しかし、蓋を開けてみると、対象となったのは限られた施設のみでした。

大阪市が幼児教育へより多くの公費を投じるのは賛成しています。しかし、一定の質的基準を満たした認可外保育施設の無償化は、利用できる家庭が非常に限られており、公平性の観点からは問題があります。

誰もが指摘するのは「保育料」でしょう。朝日新聞に取り上げられた「キンダーキッズインターナショナルスクール大阪ベイ」の保育料は月額7万円からです。大阪市から上限額が補助されても、保護者負担は月額4.5万円以上となります。

敢えて幼稚園や保育所等へ通わずに教育が充実した認可外保育施設を利用するのは、これだけの費用を自己負担できる高所得世帯でしょう。

こうした世帯への補助は不要だという意見があります。反面、幼稚園や保育所等の運営費には多額の公費が投じられており、認可外保育施設を利用する児童が全くの対象外となるのは不公平だ、という考え方もあります。

地理面の問題もあります。実は7施設の内、半数弱の3施設は「北区」にあります。残りも福島区・西区・天王寺区という都心部にあります。都心6区外にあるのは港区のみです。

認可外保育施設での充実した教育に対するニーズが、教育に熱心な世帯が多く住んでいる中心部に偏るのは仕方ないでしょう。今後、都心部以外の施設へも広がるでしょうか。

幼児教育に限らず、大阪市の教育行政・公教育は大きく変わりつつあります。良い方向へ変わるのか、それとも悪い方向へ変わるのかは分かりません。

これからの長い時代を生きていく子供の為に、政治家や官吏の短絡的な思いつきでは無く、長期的な視野に立った考え方を進めていって欲しいです。

—————
(4/10追記)
新たに2施設が対象に加えられました。ビクトリアキッズ・イングリッシュアカデミーこどもの園・ぎんのすず ジニアス園です。

前者は英語教育、後者はピグマリオンメソッドによる英才教育を打ち出しています。

もしもこの様な早期教育のみが「一定の教育の質」を満たしていると判断するのであれば、「それは違うのでは」と感じます。
—————

余談:朝日新聞デジタルのシンプルコースへの加入を検討中

ここから先は余談です。吉田問題等で批判される事も多い朝日新聞ですが、保育・福祉等に関する記事の充実さは他紙を大きく引き離しています。地域に密着した取材を行い、丁寧に話を聞いているからでしょう。

先に取り上げた記事で省略した部分は「有料会員」のみが読める内容です。様々な機能をウェブ上から利用できるデジタルコースは月額3,800円が必要なので、流石に申し込むのを躊躇します。

しかし、朝日新聞デジタルには「シンプルコース」があります。これは有料記事を毎月300本まで閲覧できるコースです。1日当たり10本、十分な記事数です。

ニュース速報でしたらYahoo!ニュースで十分です。しかし、深く掘り下げた記事や調査報道は新聞社の真骨頂です。

月額料金を払ってでも読みたい記事が増えています。シンプルコースへ申し込むか、非常に悩んでいます。