『大阪市保育施設等の利用調整に関する事務取扱要綱」(保育利用調整基準)の一部改正案』(及び子どものための教育・保育給付認定に関する事務取扱要綱案)が公表されています。
前回の投稿では本文部分の改正内容(案)について触れました。
今回は別表部分(調整基準表)の改正内容(実質的に変更される部分のみ)について考えていきます。
就学中のひとり親の基本点増加
(1)基本点数表:9.ひとり親
(90点)ひとり親世帯等で、職業訓練校、専門学校、大学等に月16日以上かつ週16時間以上就学している。
(70点)ひとり親世帯等で、職業訓練校、専門学校、大学等に月16日以上かつ週16時間未満の範囲で就学している。
ひとり親の世帯の場合、基本点数はひとり親としての点数と保育が必要な個別事由(就労・出産等)の点数のいずれか高い方が用いられています。
従来は求職活動を行うので保育ができないひとり親(60点)、もしくは就学(60-40点)が基本点数とされていました。しかし、こうした点数表では、資格取得等を通じて生計の安定を目指すひとり親が保育施設を利用するのは困難でした。
そこで、就学しているひとり親世帯等の基本点数欄(90-70点)を新たに設置するとされました。
保育所等はあくまで福祉施設です。一定の範囲でひとり親世帯等の利用を優先するのは合理性があるでしょう。
ただ、あくまで「将来の生計の安定に資する学校等」に限るべきです。職業能力の獲得に繋がらない学校(いわゆるカルチャースクール等)は対象外とすべきでしょう。
育休中の卒園児への加点
(2)調整指数表:保育の代替手段・きょうだいの状況
(4点加点)育児休業取得中に保育施設又は保育事業を卒園した後、保育施設又は保育事業を利用していなかった児童について、復職時に利用申込みをする場合。
育児休業中に保育施設を卒園した場合、他の保育施設への入所は原則として認められないとされています。こうした運用が行われていたとは、実は私は全く知りませんでした。
例えば育児休業中に小規模保育施設を利用している2歳児が卒園しても、育休から復職するまでは他の保育施設の3歳児クラスへは入所できないそうです。
しかし、復職と同時に3歳児クラスへ入所するのは困難です。年度途中に3歳児募集を行っている保育所等は少なく、他の入所希望者より高い点数が必要です。こうした児童には新たに4点を加点し、入所しやすくするのが本改正案の内容です。
されど、本改正案の内容は疑問です。そもそも育休中の卒園児を別施設への入所手続から外す必要があるのでしょう。四六時中目が離せない0歳児に加え、やんちゃな3歳児を家庭で育児するのは本当に大変です。
大阪市は事実上、育休退園措置を行っていないと聞きます。お世話になっている保育所では、育休中の人を数多く見かけます(短時間保育扱いとして16時までの保育となっていますが)。
であれば、育休中の卒園児も他の園児と同じ基準で入所調整を行うべきではないでしょうか。育休中だから3歳児入所できないのは余りに理不尽です。
また、加点内容にも問題があります。小規模保育等の卒園児は6点、育休退園後に再入園する児童は7点が加点されます。育休中の卒園児が置かれた状況は、こうした児童と違いはありません。
仮に本加点を導入するのであれば、少なくとも6点を加点すべきでしょう。きょうだいの出生時期によって入所済のきょうだいが不利益を被るべきではありません。
そもそも論として、小規模保育の増加に3歳児募集枠が追いついていません。保育所の新設等を通じて、3歳児募集枠の増加に注力すべきです。
就労による認可外保育利用時の基準日前倒し(慣らし保育扱い)
本点数表において「1.就労」「9.ひとり親(就労に関する項目に限る)」を適用する場合、当該サービスの利用開始日又は就労開始日(復職日を含む。)の1か月前の日の翌日のいずれか遅い日を、申込事由を理由として利用を開始した日とみなす。また、基本点数表で育児休業中の扱いとなる場合、適用対象外とする。
就労を申込事由とする場合において、認可外保育施設加点が生じる日を従来より前倒しにする改正内容です。認可外であっても一定期間は慣らし保育が必要とし、その期間を認可外加点の対象としています。
複雑な条項なので、例を挙げて説明します。
(1)7月1日から認可外保育施設を利用
(2)8月入所調整(7月5日締切)へ申込み
(3)7月20日から就労
従来は利用調整時点(7月5日)において未だ就労しておらず、申込事由(就労)を理由とした認可外加点は得られなかったでしょう。
改正案では認可外保育サービスの利用日(7月1日)、もしくは就労日の1ヶ月前の翌日(6月21日)の遅い日が、申込事由を理由として認可外保育サービスを利用した日と見做されます。8月入所調整から認可外加点が得られそうです。
この改正内容には、「たんぽぽの国(認可外保育)」での保育事故に対する第三者委員会からの指摘が反映されています。
入園初日にいきなり長時間の保育を受けるよりも、徐々に慣れていくことができるのであれば、こどもの立場からは、その方が望ましい。「慣らし保育」は、その意味で、入園初期の事故発生の危険性の軽減策の1つとして有用な可能性がある。
認可外保育での慣らし保育を促す観点から、実際に就労する少し前から認可外保育施設を利用しても加点対象としたのでしょう。
パブコメは今週末(8月25日)まで受付
本改正案に対する意見公募手続(パブリックコメント)が実施されています。
1 案件名
「大阪市保育施設等の利用調整に関する事務取扱要綱」(保育利用調整基準)の一部改正(案)等について2 内容
「大阪市保育施設等の利用調整に関する事務取扱要綱」(保育利用調整基準)の一部改正(案)
「大阪市子どものための教育・保育給付認定に関する事務取扱要綱」の一部改正(案)3 意見公募期間
平成29年7月27日(木曜日)~平成29年8月25日(金曜日)
改正案の是非・更に変えるべき点・待機児童問題・大阪市の保育行政等、意見がある方は積極的に意見を送って下さい。私も提出する予定です。