平成29年度保育所等一斉入所申込状況分析、第11回は「保育所等への入所が最も難しい」と言われる西区を取り上げます。

なお、同区に関する過去の分析記事は「検索:西区 分析」から、その他の昨年の分析記事はH28申込分析H28結果分析からご覧下さい。大阪市子育て支援施設マップ(非公式)も役立つと思います。

※11月4日に発表された数字に基づきます・保育士優先利用数は申込者数に含んでいます

大阪市から発表された平成29年度保育施設利用申込状況に基づき、区別・年齢別・年度別の申込数・募集数一覧表を作成しました。
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昨年より入所倍率が0.1倍以上増加した箇所はオレンジ・0.1倍以上減少した区は水色・入所倍率が2倍を超えた箇所は赤・保育士優先枠が存在する申込欄は薄緑で表示しています。

申込数横ばい・募集数増

西区の入所倍率は昨年の1.93倍から1.63倍へと大きく低下しました。申込数はほぼ横ばいでしたが、募集数が72人増えました。全体で見ると、H28より入所しやすくなっています。

では年齢別の入所状況はどうなっているのでしょうか。0歳児は募集数が17人増えた反面、申込数が39人も増えています。入所倍率は0.97倍から1.08倍へと上昇しました。0歳児でも入所できない児童が発生する見通しであり、5月以降の途中入所は極めて厳しいと考えられます。

1-3歳児はH28よりやや入所しやすくなっています。1歳児は募集数が27人増えて131人、申込数は9人減少して272人となりました。入所倍率は低下しましたが、依然として2.08倍という高さです。半数以上は入所できない見通しです。

2歳児は更に厳しくなります。入所倍率はH28の4.15倍から3.12倍へと大きく低下しました。しかし、入所できるのは3人に1人程度に過ぎません。大半の児童は入所できないでしょう。

著しく厳しいのは3歳児です。波除学園分園なみぴよ・梅本保育所の募集数が増えた事によって区全体の募集数は倍増しました。しかし、入所倍率は3.78倍と極めて高い値のままです。入所できるのは3人に1人もいません。

実際には保育所から幼稚園へ進学する児童が生じるので、募集数は上方修正されるでしょう。一方、西六保育園等の一部の保育所では連携施設からの優先入所枠が設けられており、外部から入所できる枠は限られる場合があるのに注意が必要です。

東部、特になにわ筋沿いは最入所難地域

西区は著しく入所倍率が高い保育所が少なくありません。1歳児入所倍率が4倍超え、2歳児以降の募集枠は殆ど無い保育所が珍しくありません。

特に厳しいのは東部地域(木津川より東)です。入所するのが極めて困難な保育所が、なにわ筋に沿って南北に連なっています。タワーマンション等の建築ラッシュに対し、保育所等の新設が全く追いついていません。こうした状況は今後も続く見通しです。

この地域は中央区東部・北区東南部・天王寺区・阿倍野区北部を越え、保育所へ入所するのが市内で最も難しい地域と言えそうです。加点がなければ保育所への入所は極めて厳しく、小規模保育等も不足しています。保育施設が決定的に足りません。

堀江敬愛保育園は4倍弱・1-3歳児は入所困難

同区で最も入所倍率が高いのは、堀江敬愛保育園の3.96倍です。募集数25人に対して、区内最多の99人が第1希望としています。

同保育所の特色は一定の入所ニーズがある0-3歳児で満遍なく募集を行っている点です。0歳児募集に偏って2-3歳児募集を行わない保育所が少なくない中、各年齢で募集を行う同保育所は保護者ニーズに適うものです。

しかし、こうした保育所には多くの第1希望が殺到するのも事実です。1-3歳児は何らかの加点がなければ入所は困難だと感じました。

0歳児は募集数12人に対して21人が第1希望としています。ここ数年の状況を鑑みると、フルタイム共働きであっても入所できない世帯が生じてしまうでしょう。きょうだい入所は大丈夫だと感じました。

著しく厳しいのは1歳児です。募集数6人に対して第1希望は40人、入所倍率は6.67倍です。昨年もほぼ同水準でした。西区内で最も入所しにくい1歳児クラスと言えそうです。更に厳しいのは2歳児、入所倍率7.5倍です。

数多くの小規模保育の卒園児・認可外保育の在園児が申し込んでいると想定されるのが3歳児です。西区で最大規模の3歳児募集を行っています。募集数5人に対して、何と21人が第1希望としています。卒園児加点があっても厳しいかもしれません。

実は堀江敬愛保育園が新設されるまでは、この地域では西六保育園に第1希望が殺到していました。H25-H27一斉入所では130人前後の児童が、西六保育園を第1希望としていました。

しかし、現在は堀江敬愛保育園が上回っています。地元の方から聞いた話では「西六保育園への入所の難しさが知れ渡っている」「新設園で兄姉が在籍している児童が少ないので、相対的に入所しやすい(かも?)」といった事情があるそうです。

西六保育園は3.3倍・0歳児と3歳児に注意

次に入所倍率が高かったのは、西六保育園の3.27倍でした。募集数26人に対して、85人が第1希望としてます。堀江敬愛保育園との大きな違いは、0歳児倍率の高さ・3歳児の優先入所枠です。

同保育所は西区で最も古い私立保育園の一つです。大半の保育園が平成になってから設立されていますが、西六保育園は何と昭和55年に設立されています。

その為か、同保育園はきょうだい・親子で在園・卒園している世帯が少なくない様子です。在園している方の話では、「弟や妹が産まれている方がとても多く、0-1歳児入所者の多くは兄姉が在園している」との事です。

同保育所へ入所するには、全年齢で何らかの加点が必要という見通しです。0歳児は募集数9人に対して28人が第1希望としています。入所できるのは3人に1人の見通しです。

1歳児も同様です。入所倍率は4倍と高く、きょうだい・認可外等の加点がなければ入所は困難でしょう。フルタイム共働きであっても1歳児入所が極めて困難なのが、ここ西区(東部)の現状です。

他の年齢より若干入所しやすいのが2歳児です。入所倍率は2.17倍に留まっています(それでも高い)。YPC保育園・新町第2保育園等、周囲には2歳児募集を行う保育所があります。希望者が分散したのでしょう。

注意が必要なのは3歳児です。同保育所を運営する社会福祉法人みおつくし福祉会は、近隣でおひさまルーム(小規模保育)を運営しています。同ルームの卒園児(内4人)は、最終戦で西六保育園へ入所できる「優先入所枠」が設けられています(詳細はこちら)。

同保育園の3歳児募集枠は2人とされています。4人分の優先枠がここに含まれているかは定かでありません。仮に含まれている場合、外部からの入所は絶望的でしょう。含まれていない場合であっても、卒園児加点等がなければ入所は困難でしょう。

靱公園の周辺も入所難

西区東部には他にも入所倍率が著しく高い保育所があります。それらは北東部の靱公園の周辺に散在しています。

YMCAとさぼり保育園は入所倍率が3.06倍となりました。1歳児は募集数5人に対して26人が第1希望としています。きょうだい加点があっても入所できるか定かではない水準です。0歳児の入所倍率1.5倍と比べると、年齢毎の偏りが無視できません。

同保育園は土佐堀川に面した地域にあります。更に東側や中之島地域には保育所等がなく、北区・中央区等の周辺地域からの入所希望者も少なくないでしょう。

また、靱公園南にあるうつぼほんまち保育園は3.0倍です。0歳児は第1希望が募集数を下回った一方、1歳児は募集数2人に対して7人が第1希望としています。

靱公園の周辺には他にポプラ保育園・りんりん保育園があります。いずれの保育園も1歳児を中心に多くの希望者があり、2-3歳児の申込数も少なくありません。同じく加点がなければ厳しい見通しです。

ここは大型マンションが急激に増加した地域です。保育所や幼稚園が著しく不足しており、小学校・中学校も過大規模化が進行しています。

児童数が数年後には約1000人に達しようとしている西船場小学校では、隣接する西船場幼稚園を廃園(靫幼稚園へ統合)し、跡地に校舎を増築する計画があります(詳細はこちら)。仮に計画が実行されても小学校の過大規模化は避けられず、同時に幼児教育の場も限られてしまいます。

現在、地元住民・子育て世帯が中心となって、西船場幼稚園の存続・小学校区の教育環境の整備を求める署名活動を行っています。西区のみならず大阪市全体の教育環境の整備のため、ご協力頂ければ幸いです。

新なにわ筋沿いもやや入所難

西区東部で木津川・新なにわ筋に面した地域は、なにわ筋沿いよりやや入所しやすくなっています。

この地域では新設された新町第2保育園に多くの希望者が集まっています。募集数44人に対して59人が第1希望としています。募集数の約半数(20人)は5歳児なので、実際の入所倍率は2.46倍となります。

0-2歳児で第1希望が多く、いずれも入所倍率が2倍を超えています。とはいえなにわ筋沿いの様な極めて高い倍率と比べると、やや落ち着いています。フルタイム共働きでは厳しいものの、何らかの加点があれば入所できるのではないでしょうか。

新町第2保育園に第1希望が多く集まったのか、母体となった新町保育園の第1希望者は減少しています。H28より16人し、27人となりました。0歳児は1.0倍・1歳児は2.17倍に留まっており、第2保育園より入所しやすい見通しです。

江之子島・阿波座は6年保育が皆無

木津川に面した地域で保育所選びに困るのは、江之子島です。50階以上の超高層マンションが建築された場所ですが、実はこの地域に5歳児までの保育を行う保育所がありません。区内で最も近いのはりんりん保育園・メリーガーデン保育園となってしまいます。

区役所はこの地域への保育所新設を計画した様子が窺えますが、思うように応募が集まらずに計画は(一時的に)流れてしまいました。保育所入所難どころか、保育所空白地帯と呼べる地域です。

その為、上記の2保育所や、土佐堀川を越えた福島区へ登園している児童もいると聞いています。福島区内の保育所は西区内より入所しやすい状況です。通勤地が梅田方面であれば、登園に要する時間は最小限で済むでしょう。

西部地域の1歳児申込数が大きく減少

一方、木津川より西(西部地域)となると状況が一転します。困難を極める東部地域と比べ、保育所にはやや入りやすくなっています。

例えば木津川に面している梅本保育所は、入所倍率が1.74倍に留まっています。0歳児・2歳児が約2倍、1歳児は約1.5倍となっています。容易に入所できるとまでは言えないものの、フルタイム共働きであれば入所できる児童は少なくないでしょう。

また、同保育所は3歳児募集数が6人と多いのが特徴的です。江之子島からも近いことから、申し込んでいる世帯も少なく無さそうです。

また、京セラドームの近くにある西保育所は、1歳児入所倍率が1.11倍と低くなっています。東部地域はほぼ全ての保育所の1歳児申込数が大きく減少しており、H28より入所しやすくなってそうです。

「3歳の壁」は断崖絶壁?

西区で相次いで新設されているのは小規模保育です。他区より先駆けて導入した背景もあり、市内有数の規模で設置されています。0-2歳児の保育の場として重要性を増す反面、卒園してからの保育先に悩む世帯が少なくありません。

また、西区には同じく2歳児までの保育を行う保育所も少なくありません(合わせて「小規模保育等」とします)。実は5歳児までの保育(いわゆる6年保育)を行う施設数は全体の7割程度に留まっており、こうした施設へ第1希望が集中する構図が固定化されています。

問題となるのが「卒園児が入所できるだけの3歳児募集数」です。ざっくりと推計してみます。

まずは小規模保育等の卒園児数を推計します。0-1歳児の募集数を合計したところ、74人となりました。2歳児クラスの定員数(=卒園児数)に相当するでしょう。

卒園児の多くは保育所を希望する一方、幼稚園へ進学する児童も少なくないでしょう。ざっと約2/3、つまり50人が保育所への入所を希望していると仮定します。

一方、西区全体の3歳児募集数は23人に過ぎません。ここでも幼稚園へ進学を希望する児童がいるでしょう。とはいえ、当初は入所を希望する卒園児(仮定)の半数弱に相当する募集数しか準備されていません。

つまり、大半の卒園児・新規の入所希望者の殆ど(認可外加点を除く)は入所できない見通しとなってしまっています。小規模保育を集中的に新設した結果です。

事態に拍車を掛けるのは、西区の幼稚園の少なさです。東部地域にある私立幼稚園は皆無(H31/4から堀江幼稚園が民営化)であり、バス登園している方が多いと聞きます。

西区における3歳児からの保育・教育事情は深刻です。「3歳の壁」は断崖絶壁です。

今後の予定&お願い

今後は東淀川区、此花区(特に高見・伝法東部・島屋)、住吉区、港区(特に波除地域)、城東区(中央区に近い地域)、住之江区、旭区、東住吉区、西淀川区、生野区に関する内容を掲載する予定としています。

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