大阪市は様々な方法を利用して保育施設の拡充を進めています。新たに導入される方法の一つが「保育所用地の貸主に掛かる固定資産税相当額を10年間に渡って助成する」ものです。
保育園用地、賃貸に税優遇 大阪市や西宮市が待機児童対策
保育園に土地を貸してくれたら税金を優遇します――。待機児童の解消を目指し、大阪市や兵庫県西宮市などが2017~18年度から、認可保育園に土地を貸した地主に一定期間、固定資産税を免除したり、同額を助成したりする新制度を始める。都心部はマンション建設の影響などで地価が上がり、保育園の用地が確保しにくくなっている。税優遇で用地提供を促すのが狙い。
若い世代が安心して子育てするには、子供を預ける保育施設の整備が不可欠。大阪市などの取り組みは、待機児童対策に悩む各地の自治体の参考になりそうだ。
17年4月時点で325人の待機児童がいる大阪市は、保育園運営者の用地確保を支援しようと、同年度から認可保育園などに土地を貸した地主に、固定資産税の10年分にあたる金額を助成する制度を導入する。初年度は10億8千万円の予算を確保。8月中にも助成の要件を決め、他の施策による効果と合わせて18年春までの「待機児童ゼロ」を目指す。
市の試算によると、待機児童数が全24区のうち2番目に多い西区で、一般的な保育園の規模(面積600平方メートル)の土地を貸した場合、地主は約3400万円を一括で受け取れるという。
大阪府は既に府営住宅の空室を生かした保育所の整備を進めている。市民からは市に「空いている土地があるのに、どうして保育園を増やせないのか」との声が寄せられていたといい、担当者は「子供を持つ親の切実な悩みを解決したい」と話す。
大阪や東京で保育園を運営する「global bridge」(東京・墨田)によると、都市部ではマンションの建設ラッシュで地価が上昇し、採算に見合う場所は減っている。立地の良い土地を見つけても、より高い賃料を提示するコンビニエンスストアなどと競合し、賃貸契約できないケースも多いという。
同社は21年ごろまでに、大阪市内で保育園10~15カ所を新設する計画。尾野村満・関西エリアマネジャーは「地主の協力が得やすくなる」と新制度を歓迎する。
西宮市は18年度から、認可保育園に土地を貸した地主の固定資産税と都市計画税を5年間免除する方針。市内の待機児童は4月時点で約300人おり、19年度中に保育園の受け入れ枠を1500人分増やす目標を掲げる。市子供支援総括室は「地主の税金負担が軽くなれば賃料も安くでき、保育園を作りやすい環境が整う効果が期待できる。土地活用の有力な選択肢にしたい」と話す。(以下省略)
大阪市内中心部で保育所等が設置される土地は、大きく2パターンに分類されます。
一つは工場や事務所等の跡地です。廃業・郊外へ転出等した企業敷地を保育事業者が購入・賃借し、新しい保育所を建設しています。いつ・どこで・どの様な広さの土地が放出されるか予想するのは困難です。また、適切な価格で折り合うのも難しいかもしれません。
もう一つは時間貸し駐車場です。新しく設置される保育所用地が、数ヶ月前まで駐車場だったというケースは少なくありません。駐車場用地か保育所、どちらの利回りが良いかで判断しやすいのでしょう。
大阪市の固定資産税率は年間1.4%です。貸主にとって助成措置は魅力的です。昨今の不動産利回りを思い浮かべれば、1.4%の補助によって想定利回りが逆転するケースは少なくないでしょう。
本制度は大阪市待機児童解消特別チームで議論されていました。
☆土地所有者へのインセンティブの実施・都心部における土地所有者が保育所のため土地を貸付することを促進するため、固定資産税の減免を検討した。
・市政改革プランのなかで災害や生活困窮など担税能力を喪失していると認められる場合を除いて税の減免を廃止した経過があることや、地域や保育所開設時期により減免の当否に差異を設けることは税の公平性の観点から課題があることを踏まえ、同様の効果が期待できる新たな補助制度の導入を検討した。【案】
対象者:保育所用地として土地を賃貸する土地所有者
対象地域:保育施設等の公募地域のうち都心部等の整備最優先地域を想定
補助内容:固定資産税相当額を支給
①税額全額相当の場合338万円/年間を補助
②宅地並み課税の場合244万円/年間を補助
※金額は市内中心部の保育所を例に試算
補助額:5年以上10年間(最大)分相当額を一括して支払うhttp://www.city.osaka.lg.jp/templates/chonaikaigi/cmsfiles/contents/0000385/385880/28122201.pdf
気になるのは「市内中心部への過剰な集積」です。タワーマンションの建設・保育所等の大規模拡充・固定資産税の助成、いずれも市内中心部の居住者・不動産所有者への優遇措置と言えます。
また、子育て世帯の市内中心部への居住を促せば、既に不足している小中学校が更に不足・過密化するのは明白です。保育所拡充だけで済む話ではありません。
小中学校の新設・増改築は後手後手に回っています。狭い敷地に増築しているので、狭い運動場がより狭くなっています。費用も鰻登りです。
市内中心部への集積をどこまで進めるべきでしょうか。人口流出が止まらない周縁部・南部へはどの様な対策を行うべきでしょうか。「あんこが美味しければ皮はどうでも良い」では済みません。