保育を初めとする福祉問題に関する多数の著書を出されている小林美希氏が、WEDGE Infinityにて「待機児童が減らない本当の理由」という連載記事を執筆されています。
この連載記事から、大阪市を中心とする保育所等への入所を考えてみます。今回は「国も自治体も0歳児保育の需要を無視、需要予測のミスマッチ」です。
「0歳でも保育園は激戦。なんとか滑り込めたが、本当なら、1歳くらいまでは自分で育てたかった」
食品関係の営業職の茜さんは非正規でも1日8時間のフルタイムに残業も多かったため、なんとか保育所に滑り込めたが、周囲にいる1日6時間勤務のパート社員は保育所には入ることができなかった。「1歳児になってからでは難しかっただろう」と痛感する。
大半の自治体では、1歳児入所よりも0歳児入所の方が容易でしょう。大阪市の平成29年度一斉入所では、0歳児入所倍率が0.94倍だったのに対して1歳児は1.43倍でした(中間発表に基づく、以下同じ)。西区・中央区・天王寺区等の入所難地域では、差が更に開きます。
大阪市では0歳児募集数・1歳児募集数に大きな違いはありません(ただ、公立保育所は0歳児が少ない、都心部等の新設保育所は0歳児が多いといった傾向はあります)。
倍率が大きく異なる理由は「申込数の違い」です。平成29年度一斉入所での0歳児申込数は3710人だったのに対し、1歳児は6139人に達しました。
その背景にあるのは「0歳児一斉入所申込は、原則として4-9月生まれのみ」となっている制度です。
大阪市では、殆どの0歳児保育施設で「入所時に生後半年以降」という要件を課しています。つまり、原則として前年9月までに生まれていないと、一斉入所へ申し込めない仕組みとなっています。
つまり、一斉入所へ申し込める0歳児は年度前半生まれのみ、総0歳児の半数のみです。申込数が少ないのは自然です。0歳児・1歳児の募集数が同じであれば、0歳児入所の方が入りやすくなります。殆どの自治体も同じでしょう。
厚労省が2008年8月に行った「新待機児童ゼロ作戦に基づくニーズ調査」では、2017年度の潜在サービスニーズ量が推計されている。ひとり親家庭、フルタイム夫婦、フルタイムとパートの夫婦、パート夫婦の認可保育所の0~2歳の利用意向は42.2%とされていた。
(中略)
実際にはニーズ調査通り、5~6割の0歳児保育の利用希望があるのではないか。
0歳児保育の希望率は大きな地域差があると推測されます。都心部の様なフルタイム共働き世帯が多い地域では、育児休業からの復帰に合わせた0歳児保育を希望する方が多いでしょう。
平成28年度一斉入所結果分析によると、0歳児申込数は3514人・在籍数(=決定数)は3220人・住民数は21931人となりました。0歳児人口に対する申込率は約16%でした。
しかし、年度後半生まれの0歳児は申し込めません。仮に年度前半と同数と仮定すると、大阪市における0歳児保育の希望率は約32%となるでしょう。0歳児保育の希望率は3割強、1歳児が5割弱程度と推測されます。ニーズ調査と同程度となりました。
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