3歳の女の子が雲梯(うんてい)で首を挟んでしまい、心肺停止に陥りました。
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(20/1/28追記)
保育園の運営法人が3100万円を賠償する旨の判決がありました。
うんていに首挟まれ3歳児死亡 地裁、保育所に賠償命令
香川県善通寺市の保育所で2017年、3歳だった女児がうんていに首を挟まれ死亡した事故をめぐり、両親が運営法人と園長、保育士に計約5500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が28日、高松地裁であった。森実将人裁判長は「遊具の危険性を放置し、組織として過失がある」と述べ、運営法人に約3100万円の支払いを命じた。
判決によると、認可保育所「カナン子育てプラザ21」で17年4月、女児が木製のうんていを上っていたところ、水平のはしご部分(高さ約1メートル)と筋交いの間に首を挟まれた。保育士が約10分後に気づいたが、女児は低酸素脳症で9カ月後に死亡した。
うんていは別の保育所の特注品で、同型のものを製造会社から購入していた。はしごと筋交いの間の角度は約44度。遊具メーカーなどの業界団体が定めた安全基準は、頭が挟まって抜けなくなるとして、55度未満の隙間を認めていない。園側は購入した遊具について、この基準や危険性を認識していなかった。
訴訟で保育所側は「園として適切な賠償額を払う」とする一方、園長と保育士に責任はないと主張。判決も、2人が「事故を予想するのは困難だった」として過失を認めなかった。法人に対しては「角度の問題を放置していた」と述べた。
原告は園長および保育士の賠償責任も主張しましたが、地裁は認めなかった様ですね。賠償を命じたとはいえ、園側の主張が認められた構図です。
(2/28追記)
業務上過失致死の疑いで、園長が書類送検されました。
香川県警丸亀署は28日、昨年4月に同県善通寺市の保育施設で女児=当時(3)=が雲梯に首を挟み死亡した事故で、危険防止の措置を怠ったとして、業務上過失致死の疑いで保育施設「カナン子育てプラザ21」の女性園長(47)を書類送検した。
送検容疑は雲梯側面にある2本の木製板の隙間の危険性を認識せず、使用時に児童に対する危険防止の措置を怠った疑い。
同署などによると、事故は昨年4月12日朝に発生。女児は雲梯側面にある木製の板同士の隙間に首が挟まった状態で約10分間宙づりになった。一時心肺停止になり、意識不明の状態が続いていたが、今年1月に低酸素脳症で死亡した。
施設を運営する「カナン福祉センター」(高松市)や担任の保育士らに対し、両親が計約2億5千万円の損害賠償を求めて高松地裁に提訴していた。
http://www.sankei.com/west/news/180228/wst1802280056-n1.html
(2019/1/26追記)
高松地検は嫌疑不十分によって園長を不起訴にしました。
保育所の遊具で女児死亡 園長不起訴 高松地検
おととし4月、香川県善通寺市にある保育所で、当時3歳の女の子が遊具の隙間に首を挟んで死亡した事故をめぐって、安全対策を怠ったとして、書類送検された保育所の園長について、高松地方検察庁は嫌疑不十分で不起訴にしました。
香川県善通寺市にある保育所、「カナン子育てプラザ21」では、おととし4月、当時3歳だった女の子が屋外にあった「うんてい」で遊んでいたところ、隙間に首を挟んで宙づりになり、9か月後に死亡しました。
保育所の遊具について、国は子どもの頭や首が挟まれて抜けなくなるような隙間を設けてはならないという指針を守るよう求めていて、警察は去年2月、隙間の危険性を認識せず、安全対策を怠ったとして、業務上過失致死の疑いで47歳の園長の書類を検察に送っていました。
高松地方検察庁は24日、「事故があった『うんてい』は指針が求める基準を満たしていなかったが、70ページ以上に及ぶ指針を読んで理解するのは困難で、子どもが隙間に首を挟んで死亡することを予見するのは難しかった」などとして、嫌疑不十分でこの園長を不起訴にしました。
この事故をめぐっては、この保育所の指導監督を所管する善通寺市も、医師や弁護士などによる第三者委員会を設けて検証を続けています。
市によりますと、委員会は今年度中に事故の原因や再発防止策について報告書にまとめて公表する予定だということです。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190124/k10011790151000.html
上記記事で指摘している「指針」とは「保育所保育指針」でしょうか。
※遊具に特化した指針だそうです。詳しく調べた上で追記します。
保育士という専門職、特に園長という重責を担うのであれば、「70ページもある指針を理解するのは困難」という弁解は通じません。理解できないのは単なる能力不足です。
懸念されるのは、今後の同種事故で「指針が理解できなかった」という言い訳が模倣される事態です。大半の保護者は何ら納得できず、憤りすら感じるでしょう。
また、多くの保育所には子供がケガをする恐れがあった出来事が集約された「ヒヤリハット事例」が備えられているでしょう。雲梯に引っかかったりした事例は過去に皆無だったとは考えにくいです。
被害者家族は保育園を相手取った民事訴訟を提起しています。刑事処分に納得できず、検察審査会へ申し立てるのではないでしょうか。
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(1/25追記)
女の子は亡くなりました。ご冥福をお祈りします。
遊具事故で意識不明の女児が死亡
去年4月善通寺市にある保育所で、遊具で遊んでいた当時3歳の女の子が遊具に頭を挟まれて意識不明の状態になり、病院で手当てを受けていましたが、24日夕方入院していた病院で亡くなりました。
去年4月善通寺市の保育所「カナン子育てプラザ21」の屋外に設置している「うんてい」に、当時3歳の女の子の頭がはさまって宙づりになっているのを職員が見つけ、消防に通報しました。
女の子は、意識不明の重体で病院に運ばれ手当てを受けていましたが、24日午後6時前に低酸素脳症で亡くなりました。
保育所によりますと、事故当時は遊びの時間で、女の子は一緒に保育所に通っている妹の姿を見ようと、うんていによじ登ろうとして、あやまってうんていに頭が挟まり宙づりになったのではないかと説明しています。
警察は、保育所の管理態勢に問題がなかったかどうか、引き続き当時の状況を調べています。
http://www3.nhk.or.jp/lnews/takamatsu/20180124/8030000272.html
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(1/10追記)
事故に遭った女児は一命を取り留めたものの、未だ意識が戻っていないそうです。女児・両親が運営法人・担任保育士等を相手取り、損害賠償等を請求する訴訟を提訴しました。
保育施設の雲梯事故で提訴、女児が一時心肺停止 香川
香川県善通寺市の保育施設「カナン子育てプラザ21」で昨年4月、女児(4)が園庭の雲梯で首を挟まれ、一時心肺停止状態になった事故で、施設を運営する「カナン福祉センター」(高松市)や担任の保育士らに対し、女児と両親が計約2億5千万円の損害賠償を求めて高松地裁に提訴していたことが9日、分かった。昨年12月20日付。
訴状などによると、事故は昨年4月12日に発生。雲梯は木製で、女児は握るための棒を取り付けた水平方向の横板と、支柱との間に斜めに設置された補強用の板との隙間に首が挟まった状態で約10分間宙づりになった。一時心肺停止となった後、一命を取り留めたが、意識は戻っていないという。
原告側は施設側に対し、園児が首を挟んで窒息する可能性があり、隙間をふさぐなどの安全対策を取る義務があったと主張している。
カナン福祉センターの代理人弁護士は取材に「見解は法廷で明らかにしたい」と述べた。
http://www.sankei.com/west/news/180109/wst1801090082-n1.html
請求額に驚きましたが、未だ意識が戻っていない点を踏まえると当然の請求内容と言えそうです。
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3歳女児、保育施設で遊具に挟まり心肺停止 雲梯に首が掛かっているのを職員が発見 香川・善通寺
12日午前9時半ごろ、香川県善通寺市の保育施設「カナン子育てプラザ21」から「3歳の女児が遊具に挟まれた」と119番があった。県警丸亀署によると、女児=同県丸亀市=は心肺停止状態で、病院に搬送された。
■10年前に民営化
保育施設によると、当時は屋外で遊ぶ時間帯で、女児は子供用の雲梯(うんてい)で遊んでいた。丸亀署によると、雲梯に首が掛かっているのを職員が見つけ、通報した。
善通寺市によると、この施設は市が業務委託していたが、平成19(2007)年から民営化された。今年4月1日現在、園児約120人が通園している。
http://www.sankei.com/west/news/170412/wst1704120040-n1.html
取材に応じた片山理事長によると、女児は午前8時45分ごろに登園し、9時20分ごろから園庭の端にある遊具の雲梯(うんてい)で遊んでいた。
隣接する部屋の窓から様子を見ていた保育士が声をかけても動かないことに異変を感じ、同室にいた看護師が駆けつけたところ、女児は雲梯の枠と補強用の筋交いの間に首が挟まった状態だったという。看護師はAEDなどで応急処置を行い、他の保育士が119番した。
女児の身長は約1メートルで、雲梯の捕まる部分と同じ位の高さ。事故当時は外遊びの時間で園庭には3歳から5歳までの園児57人と保育士4人がいた。女児の0歳の妹が隣接する部屋にいたという。
施設では県警が実況見分や関係者からの事情聴取を行い、その後、雲梯にはブルーシートがかけられた。
http://www.sankei.com/west/news/170413/wst1704130011-n1.html
事故が起きた「カナン子育てプラザ21」は、社会福祉法人カナン福祉センターが運営する保育所です。約120名の園児が登園しています。
園内に設置している「うんてい」で事故が起きてしまいました。
報道によると、中段にある2本の木の棒の間に雲梯があり、下から頭部を挟んで遊んでいる内に宙づりになってしまったそうです。
女児が雲梯上部に水平方向に渡した柱などの間で首を挟んだ状態で宙づりになったとみられることが香川県警丸亀署への取材で12日分かった。女児は搬送時に心肺停止の状態だったが、自発呼吸を回復した。
保育施設などによると、雲梯は全体の高さが約140センチあり、首を挟んだ水平方向の柱までの高さは約100センチだった。女児は午前9時20分ごろに遊び始め、約10分後に職員が異変に気づいて119番した。
同署によると、女児は雲梯の下部にある支柱を足場にしてよじ登り、水平方向の柱などの間で頭部を挟んだ状態で遊んでいるうちに足を踏み外した可能性が高いという。
http://www.sankei.com/west/news/170413/wst1704130012-n1.html
3歳女児の平均身長は92センチ~99センチです(身長データバンク)。頭部を挟んでしまったら、足が地面に届きません。泣き叫んで声を上げるのも困難だったのでしょう。
最悪の事態を免れたのは、発見した直後に看護師がAED等で応急処置を行い、保育士が119番して緊急搬送したからでしょう。発見するのは後数分遅れていたら、取り返しが付かない事態になっていたかもしれません。
事故原因は「雲梯の高さ」「棒と棒の間の距離」か
事故に到った原因は明白です。「雲梯の高さ」と「棒と棒の間の距離」です。
棒が横に渡されている部分の高さは約100センチでした。2歳児以上の園児が手を上に伸ばせば届く高さです。園児が雲梯を超手で掴んで遊んでいる最中に滑らせて落ちても、大きなケガにはならない高さです。
その反面、4歳児以上になると、雲梯を掴んでも足が地面に着いてしまいます。低すぎる高さです。
こうした高さが事故に繋がってしまいました。ちょっとした踏み台を利用すれば、頭部を挟むのは容易な高さになってしまっています。
幼児は大人が予期しない遊び方をします。以前から頭部をぶつけたり、挟んだりする遊びが行われていたかもしれません。
ここから考えられるのは、「雲梯には十分な高さを設ける」という対応策です。仮に高さが160センチ(成人女性の平均身長程度)あれば、ちょっとした踏み台を利用しても頭部は雲梯に届きすらしません。
平均的な3歳女児が手を上に伸ばせば、概ね120センチメートル程度の高さとなるでしょう。地面と足の間は40センチ前後になると見込まれます。大きなケガにはならないでしょう(マット等を敷けばより万全)。
皆さんがお世話になっている保育所や幼稚園にも雲梯はありますか? あるのでしたら、その高さを確認して下さい。体格が良い5歳児の身長を加味すると、160センチ程度の高さは必要だと感じます。
また、十分な高さが無かったとしても、棒と棒との間の距離が十分であれば、事故は発生しませんでした。頭部が挟み込まれない程度の距離があれば、悪ふざけして頭部を突っ込んでも落ちてしまいます。
事故検証次第では、製造メーカーの責任が問われる恐れもあるでしょう。
なお、雲梯による事故は決して少なくありません。今年2月には大阪市住之江区でも同様の事故が起きています。
子供は大人が想像できない遊び方をします。遊びには一定のリスクはつきものですが、できる限り避けたい物です。