大阪市で保育所等の整備が進まず、多額の予算を使い残す結果となりました。
大阪市は24日、2016年度補正予算案をまとめた。一般会計は1兆6462億円と前年同期比5.5%減った。民間保育所の整備が進まず、保育所関連で46億円の使い残しが出るなど245億円減額した。待機児童の解消は市の重要施策だが、目標と実績が乖離(かいり)した形だ。
民間保育所については増改築や小規模保育所を含めて16年度中に完成する58カ所の整備に補助する予定だったが、実施はこの約半数にとどまる見通し。地価上昇で保育所用地を確保できず、16年度中に整備できないケースが相次いだためだ。
民間保育所整備費は27億8千万円使い残した。新規整備の減少で保育所へ通う児童数も予定より約1900人減り、保育所への給付費も18億8千円が未消化となった。
17年度は定員を6千人増やして保育所への補助を拡充するが、地価上昇への対応が課題となる。
決定率4割以下
当サイトでは保育所等の新設情報をまとめてきました。実は大阪市が計画・公募した保育施設の内、半数以上で事業者が決まっていませんでした。
昨年5月~今年1月に発表された数字を集計したところ、総募集数75箇所に対して決まったのは28箇所に過ぎませんでした(平成29年度以降の開所予定を含む、自主財源整備施設は含まない)。
決定率は4割を下回っています。
施設区分 | 発表日 | 募集数 | 決定数 |
保育所 | 2016/5 | 18箇所 | 8箇所 |
小規模保育 | 2016/7 | 26箇所 | 9箇所 |
保育所 | 2017/1 | 17箇所 | 6箇所 |
小規模保育 | 2017/1 | 14箇所 | 5箇所 |
合計 | 75箇所 | 28箇所 |
大阪市が待機児童問題を重点施策として掲げ、本腰を入れているのは感じています。しかし、この数字を見る限り、気合いが空回りしてしまっている様に見えてしまいます。
新年度、大阪市は過去最大規模となる140箇所・5900人分の保育所等の新設・増設を計画しています。
しかし、平成28年度募集での決定率を当てはめると、実際に整備されるのは60箇所程度に留まる恐れがあります。期待倒れとの批判を受けかねません。
上記記事では「地価高騰が響いた」と指摘しています。平成28年9月に発表された大阪府地価調査によると、北区・福島区・浪速区の住宅地地価は前年比2%以上、都島区・中央区・西区・天王寺区・阿倍野区は同1%以上と上昇しています。
地価上昇も保育所等の整備が進まなかった一つの原因でしょう。街中を歩いていると、同時に「保育所に適した用地の不足」を痛感します。
用地不足・ニーズを無視した計画
待機児童問題が深刻なのは市中心部やその周辺地域です。こうした地域は子育て世帯から好まれています。
その為、日当たりが良いまとまった土地が流通すると、すぐにマンションが建設されてしまいます。結果、保育所等が建てられるのはマンションを建てにくい土地となりがちです。
事実、この2年間ほどの間に大阪市内で新たに設置された保育所は、工場が建ち並ぶ地域・日当たりが悪くて住居が密集している土地・風営法に関係する施設が近い土地・鉄道や高速道路沿いというケースが少なくありません。
また、大阪市の整備計画が現実からやや乖離している場合もあります。特に小規模保育の公募で顕著です。
小規模保育施設の公募は原則として各区毎に割り当てる形で行われています。その為、待機児童問題があまり生じておらず、少子化が進展する地域での公募が行われています。
こうした地域では新しい小規模保育施設が園児を集めるのは容易ではありません。定員割れとなる可能性も高いでしょう。事業者も二の足を踏みます。
結果、公募はしたものの応募事業者がなかったという地域が多く発生してしまいました。
今後、大阪市内における保育ニーズはますます二極化していくでしょう。実態に即した整備計画が求められます。