大阪市のH29一斉入所申込手続が終わりました。申込数や募集数等は10月下旬に発表される予定です。

実は大阪市の申込期間は他自治体と比べて著しく早く設定されています。多くの自治体では申込期間が11月-12月に設定されています。

大阪市は申込数・募集数・保育所数が極めて多く、利用調整が煩雑な為でしょう。申込みさえしておけば、12月上旬まで保育所等の追加等も可能です。

さて、2週間ほど前に吹田市にお住まいの方から下記の様なメールを頂きました。個人が特定されない範囲で、趣旨を引用します。

・吹田市に住んでいる
・同じ職場で長年に渡ってパート勤めをしていて、今後も引き続き働く予定
・週5日、フルタイムとほぼ同じ時間で勤務している
・吹田市の保育所等利用調整基準では常勤(正社員)が9-10点、自営業は5-9点、それ以外(パートも含む)は6-8点となっている。
・正社員と同じ勤務時間であったとしても、パートは減点されてしまう
・保育所等へ入所できそうになく、途方に暮れている

そこで、吹田市と近郊他市の保育所等利用調整基準を比較してみます。

自営業・パートの扱いはバラバラ

メールに記載されている通り、吹田市の調整基準は常勤(またはそれに準ずる者)とそれ以外が区分されています。月20日・1日7時間以上勤務する正社員であれば10点である一方、同じ時間で働いているパート等は8点、自営業は9点とされています。

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吹田市保育所等利用調整基準表

吹田市に問い合わせたところ、「正社員以外の勤務形態は雇用の継続性に違いがあるので、正社員より点数を減じている」との事でした。

では、吹田市以外はどの様な取扱いとしているのでしょうか。各自治体を比較してみます(自治体名から基準表へリンクあり)。

自治体名自営業パート・非常勤
吹田市減点減点
豊中市
箕面市減点減点
茨木市減点
大阪市

最も厳しいのは吹田市と箕面市でした。両市は自営業・パート勤務のいずれも正社員より減点されています。

反対なのは大阪市と豊中市です。自営業・パート勤務であっても点数を減じていません。勤務時間が同じであれば、どの様な勤務形態であっても点数は同じです(家庭内就労を除く)。

中間的なのは茨木市です。自営業を減点しているものの、パート勤務は正社員と同じ基準で点数付けされています。職種に「農業」と記載されているのが奥ゆかしいです。

この様に、一定数の自治体では正社員と自営業・パート勤務等で調整点数に差異を設けています。

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(10/28補足)
「大阪市でも自営業の専従者控除の対象だと減点される」という指摘を頂きました。
自営業に対する減点措置には違いありませんが、むしろ「身内たる自営業者に雇用されている就労者への減点措置」というべき物でしょう。
ご注意下さい。
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自営業・パートより正社員の子供の方が「保育に欠ける」のか?

利用調整は「保育に欠ける事由」に応じて行われています。保育に欠ける事由が大きい児童に高い点数が付与され、点数順に入所先が決まる仕組みです。

正社員以外の勤務形態だと点数が減じられているのには、様々な理由がうかがえます。一つは「子連れ仕事の可否」でしょう。正社員等が勤務先に小さな子供を連れて出勤するのは不可能でしょう。

自営業であれば、子供の様子を見ながら仕事をするのも可能かもしれません。しかし、子供が泣いたりオムツ交換をする度に仕事が止まってしまうと、思う様に集中できません。

また、一括りに「自営業」と称しても幅は広いです。例えば個人名義で医院を経営している開業医が一例です。子供を見ながら診療するわけにはいきません。クライアントとの打ち合わせに子供を連れて行くのも不可能です。

「雇用の継続性」も一つの理由でしょう。無期雇用である正社員と比べ、パート・派遣・契約社員等は原則として雇用期間の定めがあります(有期雇用)。ずっと働き続けられる保証がないのを理由に、保育所入所が後回しにされてしまっています。

正社員で保育所へ入所できない場合、最悪の場合は仕事を失うケースもあるでしょう(認可外保育施設等を探し、回避するのが専らでしょうが)。しかし、それ以外の勤務形態でも同じです。

むしろ、正社員と比べて育児休業・福利厚生等で不利に取り扱われる事が専らです。それに加えて保育所等への入所でも不利に扱われてしまうのは、理不尽として言い様がありません。自営業と合わせ、職業差別と指摘されても仕方ありません。

保育所等への入所選考はあくまで「保育に欠ける事由」に基づいて行われるべきでしょう。保護者の労働形態と「保育に欠ける時間」は無関係です。勤務形態にかかわらず、あくまで労働日数・時間に応じて点数化するのが筋ではないでしょうか。

一方、保育所へ入所できなかった場合の不利益の度合いから考えると、パート勤務よりも正社員の方が遙かに大きいのも事実です。入所できずに退職した場合、同等の待遇で正社員として再就職するのは著しく困難です。パート勤務であれば、再就職は相対的に容易でしょう。

「パート勤務は低収入だから、子供が小さい時は離職して育児に専念すべきではないか」という意見もあります。しかし、たとえパート収入が僅かであったとしても、将来の生活・教育費用は小さい内から貯めておきたいでしょう。

また、行政目線としても、本音は正社員を優遇したいのかもしれません。パート勤務より収入が高いので、相対的に高い住民税・保育料を納付します。自治体財政へより強く寄与してくれます。

この様に、行政を交える形で正社員とそれ以外の利害が対立しています。あっちを立てるとこっちが立ちません。

根本的な原因は「保育所等の不足」

そもそもこうした問題が生じるのは、「保育所等が余りに不足している」のが原因です。

今春に大量の待機児童・入所保留児童を生じた吹田市は、次々に保育施設を設置しています。既に第6次公募まで行い、全体で2,000人前後の保育定員を増加させる計画を進めていきます。

大阪府吹田市は、今年度の同市の保育所待機児童が千人を超える見通しとなったことを受け、3年間で約70億円を投じて、現行の保育枠(約5600人)を平成30年度末までに2150人分増やすことを発表した。待機児童の多くを占める0~2歳児の保育枠を整備し、待機児童ゼロを目指すとしている。

http://www.sankei.com/west/news/160419/wst1604190028-n1.html

保育所等へ入所しやすくなれば、自然と正社員/パート・自営業等による点数の違いを気にする機会は減少していくでしょう。大阪市内等の実例を見る限り、未就学児に対する保育所定員が5割を越えると待機児童・入所保留児童等はほぼ解消されています。

ただ、新設される保育施設の多くが小規模保育施設であるのには注意が必要です。小規模保育は保育年齢が0-2歳児までと限られています。その為、多くの方は0-5歳までの保育を行う保育所を第1希望としているでしょう。

保育施設が十分に整備されても、保護者のこうした意向に変化はないでしょう。正社員の子供は保育所、それ以外は小規模保育へ別れて入所するのはおかしな話です。連携施設の設定によって小規模保育のデメリットを減らしつつ、やはり保護者が求める保育所を新設するのが最良です。

余談となりますが、吹田市で保育所等へ入れない方に検討して頂きたいのは、大阪市東淀川区内の保育所です。大阪市内中心部から遠く、未就学児が減少している事情もあり、空き定員がある保育所が少なくありません。

吹田市から入所する場合は点数が低くなってしまいますが、現に空き定員がある分には影響しません。JR・阪急等で通える範囲にある保育所等もあります。気になる方は吹田市役所・東淀川区役所へお問い合わせ下さい。