大阪府教育委員会より、令和10年度高校入試より導入される「学校特色枠の選抜方法」が公表されました。

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各高校がアドミッション・ポリシーを踏まえて「特に求める具体的な生徒像」を提示し、求める生徒像に合致する生徒を優先的に合格させる制度です。

学校特色枠から各高校が求めている生徒像が明確化する一方、筆記試験等による一般選抜でも全く同じ生徒が合格するのではと考えられる学校も少なくありません。

保護者目線として「学校特色枠での選抜を考慮すべきでない」と真っ先に考えたのは、「募集割合が10%以下の学校・学科」です。

学校の定員によりますが、特色枠で選抜されるには上位20人~36人程度の成績でなければなりません。筆記試験・通知書・作文等でこうした成績を得られるのであれば、筆記試験でもほぼ通るでしょう。特色枠を導入した意味を疑わざるを得ません。

一方でどういった生徒を求めているかという判断材料にはなります。たとえば文理学科は全10校が「国語・数学・英語(英語資格を活用しない)の合計点の上位」を選抜するとしています。特に主要3教科で高い学力を有している生徒を求めています。

ただ、この3教科で上位10%に入る得点を得られる生徒は、従来通りの筆記試験でもほぼ通ります。特色枠によって従来とは異なる生徒像として選抜されるのは、何らかの事情で内申点が低い生徒(不登校等)等に限られるのではないでしょうか。

文理学科に準ずる学力を有する生徒が集まる専門学科(総合科学科・国際文化科・グローバル科等)設置校の中には、思い切った選抜を行う学校もあります。募集割合や選抜方法より、従来とは異なる生徒が合格すると見込まれる学校・学科をピックアップします。

学校名学科名募集割合選抜方法
住吉高校総合科学科50%5教科の筆記試験(数学・理科の点数を2倍、英語資格除外)
国際文化科50%5教科の筆記試験(数学・英語の点数を2倍、英語資格除外)
泉北高校国際文化科50%5教科の筆記試験(英語の点数を1.5倍・国語1.3倍、英語資格除外)
総合科学科50%5教科の筆記試験(数学の点数を1.5倍・理科1.3倍、英語資格除外)
箕面高校グローバル科50%5教科の筆記試験(国語・数学・英語の点数を2倍)
和泉高校普通科45%5教科の筆記試験(国語・数学・英語の点数を2倍、英語資格除外)
グローバル科35%5教科の筆記試験(国語・数学・英語の点数を2倍、英語資格除外)
春日丘高校文理探求科30%5教科の筆記試験(英語資格除外)

募集割合の3割~5割程度につき、特定の科目に傾斜配点かつ内申点を考慮せずに選抜を行うとしています。各学科が重視する科目の学力を重視した選抜方法です。

とはいえ、特色枠による募集割合は半分以下です。半分以上は従来型の試験(筆記+内申点)で選抜を行います。従来型の試験では合格する可能性が乏しい生徒に、特色枠での合格を狙って出願させるのはハイリスクです。

こうしたリスクを取り得るのは、たとえば満足できる私立高校に合格済の学生でしょう。特色枠で合格したら公立高校へ進学するが、そうでなければ私立高校へ進学するという考え方です。

各校が求める教科の学力は非常に高いながら、苦手教科が足を引っ張ってしまうタイプの生徒も有効かもしれません。理数系の能力は抜群ながら、国語や社会は全然出来ないタイプです。模試の結果を見ながらですが、出願できる余地が生まれてくるでしょう。

いずれの選抜方法(明記していない箕面高校を除く)も「英語資格除外」としています。英検による学力保証を信用していないのでしょう。英検導入の旗振り役となった民間人校長が務めていた和泉高校すら除外しています。

この他にもたとえば芸術やスポーツに力を入れている学科は、多くの人数を特色性のある選抜方法で合否判断を行うとしています。

しかしながら、学校特色枠のみを見ての出願は難しいでしょう。特色枠と筆記試験等による一般選抜は同じ学校へ出願する必要があります。特攻でない限り、「特色枠ならば合格する可能性はあるが、一般選抜枠では難しい。」という学校への出願は難しいです。親も先生も塾も止めるでしょう。

ここに推薦入試との違いがあります。推薦入試と一般入試が分離されている制度であれば、推薦制度を利用して思い切った出願も検討できました。が、大阪府の新制度は両者が混同されており、一般選抜に軸足を置かざるを得ません。

特色枠を設定した学校の多くでは定員割れが生じています。特色枠対策を行わなくとも、出願するだけで合格できてしまいます。特色枠による選抜が意味をなしえません。

募集割合や選抜方法を見る限り、あくまで「一般選抜でも合格できそうだが、より合格可能性を高める為に特色枠を利用する」という考えが無難だと感じました。一般選抜で上位合格する生徒は、その前に特色枠で合格するでしょう。

こうした入試方式により、果たして私立高校から公立高校へシフトする学生は増えるのでしょうか。