大阪でも令和7年(2025)年度私立高校入試が終わり、続々と結果が発表されています。子供がお世話になっている中学校では、多くの生徒が貸与されている端末を用いて教室から合否を確認しているそうです。コロナ禍前とは隔世の感があります。
昨年に引き続き、大阪では私立高校の人気が高まっています。大阪私立中学校高等学校連合会の調べによると、令和7年度私立高校入試にて第1希望として申し込んだ「専願」者の割合が過去最高の35.0%(前年は31.6%)に達しました。人数ベースでは19,994人から21,723人へと1,729人も増加しました。少子化の時代に驚くべき伸びです。
学校・コース毎の応募者数等は、受験情報Vスタジオ(大阪府最新受験ニュース)に詳しく掲載されています。
専願者が特に増加したのは、興国高校(100人、みんこう偏差値42-56)、太成学院大学高校(136人、同39-46)、浪速高校(174人、同50-65)、箕面自由学園高校(159人、同45-62)です。いずれの学校にも進学・国際・スポーツ等に代表される多種多彩なコースがあり、幅広い学生層にアプローチできています。
学力(偏差値)の幅が広いのも特徴的です。文理学科/GLHSとの併願を意識できる偏差値もあれば、学力面をほぼ考慮していないと思われる偏差値もあります。まさしく「多種多様」です。
私立高校の大きな特徴の一つに挙げられるのは「複数コース制」です。個性的な様々なコース毎に少人数(多くは1~2クラス程度)の募集を行い、それを積み重ねる事によって学校規模を維持しています。
反対に多くの公立高校は1学校1学科編成です。近所に公立高校があっても学力や志向がマッチしないという事態は当然の様に生じています。
公立高校の魅力を向上させる手段の一つとして、しばしば「個性」が指摘されています。たとえば「知識基盤社会をリードする人材を育成する」を目的としたGLHSは個性の一つでしょう。
しかし、たとえば「国際」「スポーツ」「環境」「地域社会」「教育」「保育」といった個性を強調してしまうと、学校としての間口が極端に狭くなってしまいます。また、そうした個性を維持できる教職員を常に抱えられるかは、人事権を有する府教委次第となります。
公立高校と私立高校は制度面で全く異なります。同一の基準で切磋琢磨するのは困難であり、それによって教育の質が向上するというロジックは成り立ちません。
先日、大阪府公立中学校校長会より令和7年度入学者選抜 進路希望調査(2月)が公表されました。一般選抜を行う全日制高校128校のうち、72校が倍率1倍未満となっています。
大阪府立高校入試2025 私立無償化の影響…72校に定員割れ可能性 茨木1.84倍、北野1.49倍【高校受験進路希望調査 全日制の全校掲載】
https://www.mbs.jp/news/feature/edu/article/2025/02/105139.shtml
一方、GLHSを初めとする一部の高校は依然として極めて多くの希望者があります。特に茨木高校や春日丘高校がある北摂地域は倍率が高い高校が集中しています。
殆どの大阪の私立高校は、中学校での成績で合否が決まると言われています(特殊事情)。志願倍率が1倍を割った公立高校は、原則として受験者全員が合格します。
となると、今後の大阪府の高校入試にて実質的な選抜を行いうるのは、一部の限られた公立高校だけとなってしまいかねません。
大半の中学生が選抜なくして高校へ進学するとなれば、受験勉強を通じた学力向上とは懸け離れた世界となります。私立高校授業料無償化が「大阪の学力低下」を引き起こす可能性は少なくありません。