(追記)
事件が起きる約12時間前に母親は児童相談所へ電話で育児について相談していました。児相は当日中の家庭訪問も提案しましたが、話し合いの末、翌朝の訪問となりました。
県によると、容疑者は27日午後2時ごろ、児相虐待対応ダイヤル「189」を通じて同児相に電話相談。同児相は会議を開き、介入できるように「ネグレクト」として受理し、家庭訪問を決定した。
27日午後6時ごろには、同児相の担当者が容疑者と電話で話し、同日中の家庭訪問も含め提案したが、容疑者側の事情などで日時は翌28日午前10時になった。この際、容疑者の受け答えに問題はなかったという。
https://news.yahoo.co.jp/articles/3464f1f417216ff2bf1607538331b1ab0ca8edb0
もしも電話が掛かってきた当日中に訪問して乳児を保護していたら、事件の発生は回避できたかもしれません。だからと言って、家庭訪問を当日ではなく翌日に設定した判断が間違っているとは思えません。
母親は児相への電話でも事件後の110番通報でも落ち着いて連絡できていました。子供を浴槽に沈めて殺害したという行為との間に落差を感じました。
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非常に痛ましい事件です。私自身、一歩間違えれば同じ事をしたかもしれません。
28日未明、千葉県松戸市の住宅で「子どもを浴槽に沈めて殺した」と母親を名乗る女性から通報があり、生後およそ4か月の男の子が搬送されましたが病院で死亡が確認されました。
警察によりますと、28日午前1時すぎ。松戸市の住宅で「子どもを浴槽に沈めて殺した」と母親を名乗る女性から110番通報がありました。
警察官が駆けつけたところ、玄関先にぐったりとした男の子を抱きかかえた女性が出てきたということです。
男の子は病院に搬送されましたが、その後、死亡が確認されました。死亡したのは生後およそ4か月福井暁人ちゃんで、死因は溺死だということです。
警察が事情を聞いたところ、母親とみられる女性は「育児で疲れていた」と話しているということで、警察は、当時の状況を詳しく調べています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/f0b2e3e606837a5eb0669a3c8c0eeebbf71dfced
新生児の育児は本当に過酷です。過去には全国各地で同様の事件が繰り返し発生しました。
個人差はありますが、生後4か月だと24時間目が離せません。睡眠も細切れです。夜中でも昼間でも泣き叫び、オムツの交換やミルクが欲しいとアピールします。
親自身の体調等が万全ならば対応出来ます。でも新生児の育児は日に日に疲労が溜まります。いつ起こされるか分からず、睡眠は浅くなります。
特に辛かったのは泣き声でした。疲れていると頭の中で鳴り響く様になり、少しずつ耐えられなくなりました。泣き声が聞こえる度に耳を塞いで下を向き、子供を隣室に放置して布団を被った事もありました。
いつしかストレス障害らしきものを発症し、医者からは「治らないと思う」と告げられました。今も泣き声や大きな声は苦手です。耳栓やノイズキャンセリングイヤホンを使って凌ぐ日も多いです。
子供を風呂に沈めて溺死させた行為は決して容認できません。
そうなる前に家族や実家に頼ったり、行政機関や医師に相談するという方法もあります。しかし、育児で疲れ果ててしまうと、こうした「当たり前」の手段すら頭に思い浮かばなくなってしまうのです。自分の中で「もう耐えられない」と抱え込み、最悪の選択肢を選んでしまいます。
結婚や出産を契機に転居した土地だと、気軽に話や相談できる相手もなかなか見つかりません。新しい人間関係を作りたくても、体力が追いつきません。
今後の捜査等で着目されるのは、乳児健診の受診状況でしょう。
松戸市は3・4か月児健康診査、6・7か月児健康診査、9・10か月児健康診査を実施しています。満1歳までに3回もの乳児健診を行うとは非常に手厚いです(大阪市は3か月健診のみ)。
亡くなったのは生後およそ4か月の乳児でした。既に3・4か月健診を受診していたのであれば、母親から「育児に悩んでいる」といった話はなかったのでしょうか。乳児の成長具合に問題はなかったのでしょうか。
反対に何らかの理由なく受診していなかったのであれば、既に悩みやストレスは深刻化していたのでしょう。松戸市は家庭訪問等を行って現状把握に努めたのでしょうか。
新生児、特に慣れない土地での第1子の育児はひたすら「孤独」でした。
行政等にはより積極的に手を差し伸べて欲しいと思うと共に、「どうしても耐えられない時の連絡先」を設けて周知して欲しいです。少しでも誰かに話を聞いてもらったり、数十分でも子供を見てもらえれば落ち着く場面は少なくありません。
経験上、育児は「辛い」と感じる時間が長いです。今回の事件は個人の問題のみとしてではなく、社会に「孤独で辛い育児」が組み込まれている現状を問題視してもらいたいです。
亡くなった乳児のご冥福を祈ります。