大阪市内では保育所等二次選考・小規模保育等の入所内定が続々と明らかになっています。
一方、大阪市内とは比較にならないほどに保育所への入所が困難なのが首都圏です。
一次選考で入所できなかった方の一部が、行政不服審査法に基づく異議申立てを行いました。

品川区の認可保育所 選考漏れで区民異議
2015年3月13日

 品川区の認可保育所に入所を申し込み、一次選考に漏れた区民七人が十二日、行政不服審査法に基づく異議申し立てをした。区では二〇一五年度に向け、認可保育所に二千九百三十七人が申し込んだが、現段階で約43%に当たる千二百五十六人が入所できていない。

 異議申し立てをしたパート従業員の女性(39)は四月から職場復帰を希望しているが、一歳の長女が一次選考に漏れた。長女には障害があり、療育が必要。女性はフルタイム勤務は困難な状況だが「パートはフルタイムより入所の優先順位が低くて入れない」。他にも子どもが二人おり、「三人を育てるため、働き続けられないと将来が不安。認可保育所の受け入れ枠を増やし、選考ではそれぞれの家庭の事情を考慮してほしい」と訴えた。

 パートを退職して出産した無職女性(34)は生後五カ月の長女の預け先がない。「働きたいが認可に入れない。保育料の高い無認可保育所には預けられない。質の確保された認可保育所に希望者全員が入れるのが、あるべき姿ではないですか」と問い掛けた。

 区は認可保育所の定員を一四年度は四百五十一人分増やした。一五年度には七百九人分拡大する予定。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/20150313/CK2015031302000138.html

品川区では入所申込を行った2937人の内、43%にあたる1256人が一次選考段階で入所できていないのは厳しい話です。
二次選考や小規模保育等へ入所が決まったとしても、1000人を超える方が入所できないのではないでしょうか。
大阪市にたとえると、最も厳しい西区・中央区並の水準です。
首都圏で恐ろしいのは、品川区以上に入所が困難な区市が少なくない点です。
世田谷・杉並あたりの数字が気になります。

記事で取り上げられているパート従業員・休職中の方は、恐らくいずれの自治体の選考基準であってもフルタイム労働に劣後してしまうでしょう。
保育所等の定員に余裕があれば良いのですが、増やしても増やしても足りない現状において、既にフルタイムで働いている方を優先するのは合理的かつやむを得ない取り扱いです。

「希望者全員が入れる」のが理想です。
ただ、首都圏や他都市部の様にファミリー層の絶対数が多く、不動産賃料が高く、保育需要が伸びている地域では当面も保育所不足は続くでしょう。

余談ですが、上記記事にはやや誤解を招きかねない部分があるのを指摘します。
記事末尾に「認可保育所の定員を15年度には709人分拡大する予定」とあります。
同区で一次選考で入所できなかった1256人の半分以上に匹敵する数字であり、同区の待機児童問題は大いに解消されそうです。

しかし、一次選考で入所できなかった殆どが0-2歳時だと推測されます。
そして、拡大する予定の定員は恐らくは0−5歳児を合算した定員数を示しているでしょう。
0-2歳時に限ると、入所できなかった申込者に対する保育所新設による定員増は極めて小さいものになっています。

東京23区はそれぞれが独立した自治体です。
他の区(実質的には市)にある保育所へ申し込んでも、居住者が優先されるので入所しにくくなっています。

入園順位(新規・転園)
1位 千代田区家庭的保育事業を修了する児童で、表1・表2により、世帯の指数を計算し、指数の高い順
2位 千代田区民(入園希望日までに転入する方を含む)で、表1・表2により、世帯の指数を計算し、指数の高い順
3位 内定した園への入園を断った方(翌月から3か月間)
4位 千代田区外に居住、保護者が千代田区在勤で、表1・表2により、世帯の指数を計算し、指数の高い順

保育園入園選考基準(千代田区)

区外居住者は4位となり、区民の選考の劣後しています。

勤務先や通勤途中にある保育所が居住区と異なる区にあると、入所するのは極めて困難です。
ビジネス街が集積している都心部(千代田区や港区等)を除く23区の待機児童問題が極めて深刻なのは、「隣接区・勤務先や通勤途中の他区の保育所へ事実上入所できない」のが要因の一つかもしれません(通勤電車で子どもと一緒に保育所登園するのは大変ですが・・・・)。
仮に居住区以外での保育所入所でも区民と同等の基準で選考が行われれば、恐らく23区の地域差は現状より大きく縮小します。
都心部の区民が一方的に割を食う形になるので無理な話ですが。