一足先に私立高校授業料無償化の導入を決定した、大阪府で起きている事態をご紹介します。

私立高校専願受験者の増加、定員割れする公立高校が大幅増

私立高校受験者の内、35%が私立高校への進学を希望しています。

私立高校専願率35.0%(過去最高)、専願者1,729人増、4校が100人以上増加 公立高校は7割が定員割れ恐れ

これはあくまで出願時に「私立専願」を申し出た生徒です。試験後に私立高校への進学を決意した生徒もいます。公立高校の受験率は更に落ちます。

お世話になっている中学校でも、公立高校の受験者は減少しているそうです。出願校を決定する進路懇談への参加者が少ないと聞きます。

公立高校の受験者減により、約7割の学校で定員割れが発生する見通しです。GLHSや普通科上位校といった進学校は高倍率ですが、普通科中位校以下の高校や実業高校は多くが定員割れしています。

深刻な学力・学習量差

中学生間での学力・学習量差を深刻化させる効果があります。

多くの他都道府県とは異なり、大阪府での私立高校入試は中学校での実力テストが極めて大きなウェイトを占めています(当日点次第という学校は極一部)。内申点+筆記試験の一発勝負である公立高校入試とは、全く異なる入試制度です。

その為、公立高校を本命とする中学生は受験勉強から逃げられません。特に国内屈指の難易度たる発展的問題(C問題)を出題する進学校等を受験する中学生の大半は、馬渕教室や駿台浜学園といった学習塾へ通塾しています。センター試験を彷彿とさせるC問題対策を行える学習塾は限られ、家庭での対策も容易ではありません。

反対に私立高校の入学希望者は、学校での実力テスト対策で十分です。受験勉強と実力テスト対策では必要な学習量に雲泥の差があります。

更に私立高校での合否判定に利用される実力テストは主に秋に実施されます。年明け以降の学習意欲が落ちます。3月中旬まで受験勉強を継続する公立高校受験生とは、大きな学力差が生じます。

既に私立高校への入学が決定した中学3年生は、学校で騒いで遊んでいるそうです。授業は成立していません。公立高校受験予定者も騒ぎに巻き込まれ、学校で全然学習できていません。最後の追い込みどころか、致命傷になりそうです。

大阪での私立高校授業料無償化は、中学生の学習意欲を減退させる効果があります。

中学受験の増加

中学受験率はじわじわと上昇しています。多額の通塾費や中学校授業料が必要となりますが、高校3年間の授業料は無償となります。私立中学校・高校へ通う経済的負担が、大きく軽減されます。

日能研関西の森永直樹さんによると、関西地区(京都、大阪、滋賀、兵庫、奈良、和歌山)の私立中の受験者数(初日の午前入試)は1万7583人と、前年度よりも271人増えました。受験率は約0.35ポイント高くなり、10.52%になりました。2府4県による統一入試日がはじまって以来、過去最高となりました。

めだった動きがみられたのが大阪府にある学校。家庭の収入にかかわらず、私立高校の授業料を2026年度までに無料にする「完全無償化」の影響から、今春は前年度よりも529人増え、8550人になりました。森永さんは「予想以上に完全無償化は大きな影響で、受験層がより広がっている」とみています。

https://www.asahi.com/asagakuplus/article/asasho/15634098

ただ、2025年度入試における受験率の上昇は、所得制限が無い私立高校授業料無償化による影響を含んでいません。無償化が公表される前から通塾していた小学生が受験した為です。無償化による影響が本格化するのは、2027年度入試以降からでしょう。

公立学校の老朽化

私立高校授業料無償化に多額の予算を割り当てているからというわけではありませんが、大阪では公立学校の老朽化が深刻です。

老朽化等による要改修箇所が約24000件も 大阪府立学校

高校のみならず、小中学校も深刻です。我が家がお世話になっている中学校も老朽化によって危険を伴う校舎や設備等があります。何度も修繕等をお願いしていますが、「予算がない。」の一点張りです。学校から市教委へ窮状を伝えているそうですが、話が進まないそうです。

授業料の値上げ

大阪では無償化による上限額63万へ授業料を改定する私立高校が相次ぎました。

無償化上限の63万円へ授業料改定する私立高校が相次ぐ 大阪府(入学金等・授業料等一覧あり)

授業料を支援上限額まで引き上げても、生徒が負担する金額に変化はありません。学校の収入が増え、公費支出が増えるだけです。「便乗値上げではない」という体裁を保ちつつ、徐々に上限額まで引き上げる動きが広がります。

授業料以外のオプション講座の増加?

大阪の授業料無償化制度は、上限額63万円を上回る授業料については、その超過分を学校が負担するものとされています(キャップ制)。その為、各校は上限額を上回る授業料設定を避け様とします。

代わりに授業料以外の諸費用を設定し、生徒・保護者から徴収しようとする考えも生じています。まだ大きな動きとはなっていませんが、キャップ制の趣旨を潜脱しかねません。

慎重な議論が必要

確かに子供が私立高校へ通う中高所得世帯の経済的負担が軽減されるのは大きなメリットです。しかしながら、副次的な動きやデメリット等は小さくありません。

国レベルでの授業料支援拡大を行うのであれば、先行している大阪や東京で何が起きているかを調査・検証するのが不可欠です。

今朝(2月21日)の日経新聞に様々な経済学者に高校無償化への賛否を尋ねた記事が掲載されました。非会員でも読めます。

高校無償化、私立向け拡大「反対」70% 経済学者調査 学費上げや公立衰退を懸念
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD192JG0Z10C25A2000000/

経済学者の多くは支援上限額の引き上げや政策優先順位の高さに否定的、所得制限撤廃の是非は反対派がやや多いという結果でした。

無償化の是非や効果等が気になる方は、是非ご覧下さい。「調査結果の詳細はこちら」をクリックすると、各専門家の詳細な意見も読めます。