大阪府教委は定員割れが続いていた大正白稜高校(大正区)福泉高校(堺市)の2校を閉校します。具体的には2025年4月の入学者が卒業する2028年3月をもって閉校します。

また、春日丘高校(茨木市)と狭山高校(大阪狭山市)の普通科を改編します。

(8/29追記)
春日丘高校がホームページにて言及しています。

【重要】令和8年度入学生からの改編について(8/28公開)
 8月26日に行われました大阪府教育委員会会議において、春日丘高校が令和8年度入学生からの「普通教育を主とする学科」の改編にむけて着手する方針が示されました。

本校のこれまでの取組みが評価されたものです。本校は、新たな普通科である「学際領域に関する学科」への改編となっており、これまでの取組みをより一層充実、発展させるために、大学や国際機関、企業等と連携し、複合的な学問分野や新たな学問領域に即した特色・魅力ある教育活動を行っていくこととしています。(以下省略)

https://www2.osaka-c.ed.jp/kasugaoka/2024/08/28-042164.html

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再来年度以降の入学者の募集をとりやめるのは、大阪・大正区の大正白稜高校と、堺市の福泉高校の2校で、いずれも3年以上連続で定員割れが続いているということです。

一方、一部の府立高校では、再来年度から普通科を特色のある教育を行う学科に改編するとしています。このうち、▼茨木市の春日丘高校では、環境問題などのグローバルな課題について大学や国際機関などと連携しながら学ぶ学科への改編を行い、▼大阪狭山市の狭山高校では、幅広い地域に共通する社会課題について研究などを行う学科に改編するとしています。

大阪府教育委員会は、府議会の意見なども踏まえ、ことし11月に最終決定する方針です。(以下省略)

https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20240826/2000087079.html

1つが大阪市大正区にある大正白稜高校。大正区内の2つの高校が合併して6年前に開校したばかりでしたが翌年から定員割れが続いていました。府教育庁が発表した確定値では、学校全体の競争率は0.46で、定員割れでした。

もう1つが堺市西区にある福泉高校。4年連続定員割れしていて、志願者数の増加が見込めないということです。府教育庁が発表した確定値では、学校全体の競争率は0.60で、定員割れでした。

https://news.yahoo.co.jp/articles/8d4e1084a8d8228726ddc40195d155a3b9e2dc4b

閉校する2校は4~6年に渡って定員割れが続いており、今後も回復する見込みはないと判断されました。

大正白稜高校は大正高校及び泉尾高校を統合して2018年に新設されたばかりの高校でした。新設からわずか6年での閉校決定とは、当初の見込みが甘すぎました。新しい高校の存在を上手くPRできていませんでした。

同区は大阪市内にありますが、交通利便性は決して良くありません。区最北部にJR・地下鉄駅がありますが、区内の主たる移動手段は大阪シティバスです。

駅から高校までは徒歩15分ほど掛かります。遠すぎて歩けないという距離ではないですが、通いにくいのは否めません。大正区外から大正区内の高校へ通うには時間が掛かります。

また、同区は大阪湾に面しています。地理的要因からも生徒が集まりにくい場所にありました。

大正区では統廃合によって泉尾工業高校も2028年度に募集を停止する予定です。これにより、大正区から公立高校がなくなります。

大阪府立福泉高校は堺市西区にあります。

高校へ徒歩で通学できる最寄駅はありません。泉北高速鉄道の各駅からバス、もしくは周辺地域から自転車で通学しているのでしょう。

広域から生徒を募る高校にとって、近隣に鉄道駅がないのは致命的です。学区制によって通学区域が限られていた時代ならまだしも、学区が撤廃されて広域から進学する高校を選択できる時代では選ばれにくくなってしまいました。特に少子化が進展している府南部では尚更です。

しかしながら定員割れによって高校を続々と廃止してしまうと、そうした地域に住んでいる中学生の選択肢が乏しくなるという側面もあります。特に遠方への通学が難しい、交通利便性に劣る地域は顕著です。阪南市のように、市内から高校が無くなる自治体も現れています。

春日丘高校・狭山高校の普通科改編

同時に春日丘高校と狭山高校の普通科が改編されます。文部科学省が掲げる普通科改革に基づき、大阪府も普通科(学際領域に関する学科)や普通科(地域社会に関する学科)を設置する方針です。

大阪府学校教育審議会が先日提出した答申にも同趣旨の内容が掲載されています。各校の魅力を強調する方向性も打ち出されています。

現時点では春日丘高校に設置する予定とされている(仮)普通科(環境に関する学科)はどういった内容を取り扱うかは不透明です。ただ、募集停止される福泉高校には「環境科学コース」が設置されています。

同校では2年次・3年次に科目「環境科学」(週2コマ)が設置されています。蛍の人工飼育を行っていると記されています。

一方、親世代としては「環境科学とは何?」というのが率直な感想です。一体何をするかがよく分かりません。福泉高校のウェブサイトやパンフレットも細かく読んだのですが、何をするかが読み取れませんでした。

また、春日丘高校は進学熱が高い普通科高校です。ほぼ全ての生徒が大学進学を考えており、就職者も多い福泉高校とは全く異なります。環境科学に関する学科へ改編したことにより、大学入学へ向けた学習等に何らかの影響が生じないかと心配する保護者や中学生は少なくないでしょう。

ただ、春日丘高校はカリキュラムに余裕があります。週に33コマしかありません。同じ茨木市内にある茨木高校は週34-35コマが設定されています。

週当たりのコマ数を増やす形で環境に関する科目を設定すると考えられますが、もう少し詳しい情報が公表されないと定かなことは書けません。地域社会に関する学科が設置される狭山高校も同様です。

変わる高校、伝わらない情報

一保護者としては、「多くの学生が大学へ進学する高校に於いて、細かな学科を設置して先進的・探求的な学習を行う」という風潮には未だ馴染めません。

現に直面しているのは「文系での大学進学を意識する中学生の選択肢の乏しさ」です。

文理学科が設置されているGLHSへ入学できる学力があればまだしも、学力がやや及ばない層は途端に選択肢が窮屈となります。増加傾向にある外国語を中心に学習するグローバル科、理数系を専門的に学習する科学科等は選択肢から外れます。

そもそも大阪市内には学力上位層(最上位層を除く)の学力に見合った公立高校がありません。

大阪市内に偏差値61-66の府立高校が無い

親世代の頃と比べ、大学進学へ向けた判断・決断をする時期が相当に前倒しされていると感じています。高校に入学してからでは遅いぐらいです。

高校や学科の選択によって特定の大学へ進学できないという事態までに至らなくても、自学自習を要する分野が広がってしまいます。文転ならまだしも、理転は難しいです。

こうした実情は中学生や小学生の保護者にはなかなか伝わってきません。小学校の先生は知らない、中学校の先生は目先の学習・生活・進路指導に忙殺されています。

昔と比べて、進路選択が非常に難しくなっています。各保護者が有する情報量の差が結果に直結しかねません。