(事故が起きた南海中学校プール、高知新聞より)

起きてはならない事故が起きました。

高知市立南海中学校のプールで水泳の授業を受けていた同市立長浜小学校の4年男児が溺死しました。小学校のプールが故障していたので、同中学校で授業を受けていました。

両学校は桂浜近くに位置しています。南海トラフ巨大地震の浸水想定域とも重複しています。

一連の経緯等を簡単にまとめました。

日付出来事など
6月頃?長浜小学校でプールのろ過ポンプが故障していると判明した。
6月5日長浜小学校長が南海中学校のプールを視察し、水深を測定した。満水時は120~140センチだが、この日は100~120センチと小学校プールと同程度だったと確認し、市教委へ報告した。
高知市教委と相談した結果、1-3年生は近隣他小学校のプールを、4-6年生は南海中学校のプールを利用して授業を行うと決定した。市教委の許可も得た。
長浜小学校のプールは水深100~119センチ、南海中学校のプールは水深114~132.5センチだった。
6月上旬保護者に対して「南海中のプールは水を浅く張っており、長浜小のプール(100〜120cm)の深さとあまり変わりません」と説明した。しかし、プールの水位は降雨や給水等で上昇し、満水(120〜140cm)の状態になることもあった。
6月11日長浜小学校長が改めて南海中学校を視察をした際、水位が10センチ高くなっていたと認識した。が、市教委へ報告しなかった。
6月21日4年生が始めて南海中学校のプールを使用した。指導する教諭2人がプールが満水状態であり、5日より水位が高いと目視で確認した。水位は亡くなった児童の頭の上だと認識した。
ビート板を使ったバタ足練習では、亡くなった児童を含む3人が「あっぷあっぷ」して、両教諭にすくいあげられた。この情報は校長にも伝えられていた。
児童は先生に「一番浅いところもかなり深い」「溺れないか不安」等と伝えたが。学校は水位を下げる対策を取らずに授業を続けた。
5日午前南海中学校で3回目のプール授業を実施した。本日は2学級36人が参加、教頭・担任2人の計3人が指導した。教員は初回授業時より水深は約10cm低いと認識した。
当該児童がプールへ入る前に教頭へ「怖い」と話していた。
泳ぎが得意なグループ(16人)は縦向きに25メートルを泳ぎ、苦手なグループ(20人)に分かれて授業を行った。当該児童は苦手グループに属した。
10時40分頃苦手グループは10人ずつ2組に分けられた。プールを横向きに泳いだり、プールサイドでバタ足の練習をしたりした。教員2人がプール内から見守った。教頭は得意グループを陸上から見守った。
10時50分頃プールサイド付近の浅い場所でバタ足の練習をしていた児童が溺れた。深い部分に沈んでいる児童を他の児童2人が気付き、引き上げた。教員3人は事故当時の状況等を見ておらず、少なくとも7分間は目を離していた。
児童は意識を失っていた。教諭が人工呼吸や自動体外式除細動器で処置したが、反応は無かった。 即座に救急搬送された。
5日19時頃高知市教委の松下整教育長が記者会見した。「学校と協議して(市教委が)安全だと判断したが、事故原因の一つは小学生を中学校のプールで泳がせたことにある。」「児童の氏名・学校名・容体等は個人情報の為に伝えられない。」等と釈明した。
5日夜児童が死亡した。
6日朝市教委が児童の死亡を発表した。
6日夕保護者説明会を予定していたが、事前相談等がなかった遺族が抗議し、中止となった。
7日高知県警が南海中学校のプールにて実況見分を行った。
高知市立小中学校での水泳授業を中止すると発表した。
8日長浜小学校の中村仁也校長が全校放送で「大切な命がなくなってしまった。申し訳ございせん」と謝罪した。

授業中の監視体制等も去ることながら、最も大きな問題は「小学生の水泳授業を中学校プールにて行った」事に尽きます。

高知市教委や長浜小学校は4-6年生が中学校プールで水泳授業を行なっても問題ないと判断しました。一体何を考えていたのでしょうか。

当然ながら、小学校と中学校ではプールの水深が全く違います。両学校では約13センチの違いがありました。

僅かな差かもしれませんが、小学生にとっては大きな差です。足が底に着くか着かないか、口や鼻が水面上に出るか出ないかは大きな違いとなります。

溺死した男児は身長約130センチ120センチ弱と報じられています。小学校プールならば少なくとも頭部や目が水面上に出ますが、中学校プールでは頭が全く出ません。

溺れてパニックになっても、足がつけば落ち着きを取り戻すことができます。しかし足がつかなければ、そのまま静かに沈んでしまいかねません。

監視体制にも大きな問題がありました。泳ぎが苦手なグループの指導を担当していた教員2名はプール内にいたそうです。現時点での報道では、プールサイドから全体を見渡して監視に専念する教員がいたと報じられていません。

プール内からは離れた場所の様子は確認しにくいです。児童が溺れてきても気づきにくいです。プール内で指導しながら監視するには限界があります。

なお、長浜は「教科書無償運動」の発祥地です。今でも人権教育が重視されています。

「教科書無償運動」発祥の地~長浜~
https://www.kochinet.ed.jp/nankai-j/6-1%20kyoukasyo.html

人権教育に関する特色ある実践事例
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2014/05/21/1348004_047.pdf

記者会見にて教育長が被害者に関する説明を拒んだのは、こうした人権意識も影響している可能性があります。

しかし、子育て世帯にとって何より重要なのは「子供が学校から無事に帰ってくる」ことです。中学校プールの使用、更には監視体制の不備が最悪の事故を招きました。

(7/10追記)
続報です。亡くなった児童の身長は約110センチ、中学校用プールでは頭が全く出ません。

【高知小4プール溺死事件・7/11追記】身長110センチの児童が中学校プールにて授業開始直後に溺れる? 意思決定は校長?